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2011年5月27日 (金)

■vol.29 『「テーマ」とは、なんぞや?』

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◇「テーマ」は,ないといけないの?


「テーマ」とは何か?

 物語を作るときによく「テーマ」ということを耳にします。「この作品のテーマは……」とか「テーマがないとねぇ……」なんてことを言われたりします。「この作品がいいたいことは何?」などといわれることも,よくあります。

さて,この「テーマ」とは何なのでしょうか。そもそも物語をつくるうえで「テーマ」は必要なのでしょうか。「テーマ」は,その他の物語に必要な要素とどんな関係性があるのでしょうか。



「テーマ」と「モチーフ」

この物語のテーマは「愛です」とか「少女の成長です」とか「戦いのむなしさです」あるいは「現代の若者を描きました」というような事を聞きます。さて,これは一般的な意味でのいわゆるテーマですが,物語を作る上での「テーマ」とはじつは違いがあります。

これらは,物語の「モチーフ」という事ができるかと思います。いわば「描きたい対象」です。絵を描くときには,石膏像や花,風景などを見ながら写生していきます。これらの被写体がモチーフです。それと同じように前述のような事柄は「描きたい対象」,つまり「モチーフ」なのです。

では「テーマ」とは何なのかというと,最も小さな「ストーリーの構造」だということができます。「描いてみたい事柄」であるモチーフに,具体的な「展開」をつけて,その「流れ」,すなわち「行動(原因)と結果」を示したものが「テーマ」なのです。

ですから,テーマとモチーフと一番大きく違う点は,モチーフは単なる「事柄」であるのに対して,テーマは因果関係の流れを持つ「構造」だということです。


◇テーマとは,ストーリーの最も小さな「雛形(ミニチュア)構造」である


テーマの「行動と結果の因果関係構造」を拡大していったものがストーリーになる

 テーマを一言でいうと「行動(原因)と結果の因果関係を一言で述べたもの」です。具体的には「~をすれば~になる(~なことがある)」となります。テーマはこのように「短い文」になります。この「~をすれば」の部分が,前回やった「心が変わった後の行動」に当たります。そして「~になる」の結果,「問題が解決」するのです。

つまり,テーマとは心が変化した後の「行動とその結果としての状況の変化を表したもの」なのです。そして,その後で問題が解決していきます。その展開の流れを拡大してふくらませていくとストーリーができるのです。


問題の解決は「テーマ」の内容通りに進んでいく

 テーマとは「構造」です。そして,物語の問題解決部分は「テーマ」で述べられている通りに展開していきます。たとえば「力を合わせればうまくいく」というテーマだとしたら,バラバラだったみんなが力を合わせて問題を解決させるという流れのストーリー展開になります。テーマに沿って問題が解決します。その意味では,テーマは「問題解決部分の地図」であり,「設計図」なのです。


テーマとは具体的にどんなものか

テーマとは「流れを持つ原因と結果の因果関係を述べた構造」だと説明しました。いまいち分かりにくいです。そこで,具体例を挙げたいと思います。こんなのがテーマです。

たとえば,

「他人に親切にすれば,自分に親切が返ってくる」

「力を合わせれば,困難が解決する」

「根気強く続けていれば,いつかは成功する」

「正直な行いをすれば,良い報いがある」

「悪事を行えば,いつかは明るみに出る」

「悪事を行えば,必ず天罰がある」

「苦しい事があっても,その後に必ず楽しい事がある」

「裏切れば,必ず裏切り返される」

「誠意を尽くせば,思いが伝わる」

「勇気を出せば,強い力が出る」

……と,こんな感じです。これらの具体例に共通する事は「原因の行動と,それに伴う結果が示されている」という点です。

さて,これらを見ていて,なにかひらめきませんか。そうなんです,じつはこの「テーマ」は「ことわざ」や「故事成語」に非常に近いものなのです。そのままといってもいいです。故事成語やことわざは,昔に起こった出来事から生まれた言葉です。たとえば,「呉越同舟」という言葉があります。これは,次のような出来事から生まれた言葉です。

「……昔の中国に「呉」と「越」という国があり,互いに敵国同士で戦争をしていた。そんなとき,たまたま呉と越の人が一つの船に乗り合わせたことがあり,そのときに嵐に巻き込まれ,船が転覆しそうになったときに,敵同士だった呉と越の人々が一致協力して船を立て直し,転覆の危機を脱した……」

「呉越同舟」の意味は「敵同士であっても,困難なときには協力する」です。これはそのまま,その言葉の元となった出来事を一言で言い表したものです。これが「テーマ」なのです。そして,このテーマを使ったストーリーが「元になった出来事」なのです。ちょうど,故事成語の成立と逆の手順で物語は作られるのです。


◇テーマと舞台の関係



テーマが同じでも舞台が変わればたくさんのお話ができる

「早起き」というモチーフでお話を作るとします。するとテーマは『早起きは三文の徳』,早起きするといい事があるよ,というものにしました。これがお話の基本構造になります。この構造に肉付けして飾り立ててやると一つのストーリーになります。

この『早起きは三文の徳』というテーマをもとにストーリーをつくると「早起きをした主人公が宝くじの一等の当たりくじを拾う」というストーリーになります。あるいは「早起きをしたら,朝ジョギングしていたかわわいい女の子と出会って恋人になる」あるいは「早起きして散歩に出かけたら,住んでたマンションが火事になり(出かけていたので)助かった」というストーリーにもなります。

いずれも「早起きをするといい事がある」という基本構造がストーリーの展開にもたらされています。

「正直」というモチーフを選んだとします。そうするとテーマは「正直をするといい事がある」か「不正直なことをすると悪い事がある」になります。

昔話「金の斧銀の斧」のテーマは『正直なことをすると良い事がある』です。女神の問いに正直に答えた主人公は自分の落とした鉄の斧のほかに,金の斧と銀の斧をもらいます。まさに良い事があったわけです。

これを,同じテーマで世界観をファンタジーにすると「伝説の剣を作れる鍛冶師がいて,でも誰が頼んでも作ってくれなくて,事件があって主人公が正直な態度をとり,それを見た鍛冶師が主人公の心のまっすぐさに感銘を受けて伝説の剣を作る」という話になります。学園モノという世界観だと「クラスのアイドルがイケメンの彼氏を作るけど,性格が悪くて酷い目にあって別れる。でも,そんなとき何か出来事があり,そのときの主人公の心のまっすぐさと正直さに感銘を受けて,主人公と付き合うようになる」というストーリーになります。日常モノであれば「就職の面接に行く途中,なにかトラブルに巻き込まれ,正直に謝ったらその正直さをほめられ,その後会社の面接会場に着いていざ面接の部屋に入ったら,社長として現れたのがその今朝のトラブルで謝った相手だった。そして,正直な人柄を認められ,無事採用された」というストーリーになります。

このように,同じテーマでも世界観や舞台,設定を変えるだけで様々なストーリーを作ることができます。

  

参考:第3章ストーリーをつくろう! の記事

■vol.21 「ストーリー」のつくりかた
■vol.22 物語に必要な「12の要素」
■vol.23 「はじまり」と「おわり」をつくろう!
■vol.24 「事件」が「悪い状況」を引き起こす!
■vol.25 「誰が」「何を」するのか!
■vol.26 「動機」を描こう!
■vol.27 「3つの障害」をつくって、メインの問題の解決をジャマしよう!
■vol.28 登場人物の「心が動く瞬間」を描こう!
■vol.29 「テーマ」とは、なんぞや?
■vol.30 「テーマ」はクライマックスに組み込もう!
■vol.31 クライマックスで主人公を谷底に突き落とそう!
■vol.32 「解決方法」の3つのパターン
■vol.33 12の要素をまとめて、ラストで解決する問題を決めていこう!

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