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2011年5月28日 (土)

■vol.38 「ネタ振り」が物語の出だしを盛り上げ、作品の方向性を決定する!

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◇物語を盛り上げようと思ったら「ネタ振り」をしよう!
 

 「ネタ振り」が物語を盛り上げる!

 物語の始まり、物語の初段において何らかの出来事・展開が起こっていくわけなのですが、その際唐突に出来事を引き起こしても、どこかしっくり行かず、盛り上がりに欠けてしまう場合があります。何で盛り上がらないかというと「ネタ振り」がなされていないからなのです。

  
 ネタ振りは「これから起こることと『反対のこと』」を描いていこう!

物語において「ネタ振り」というのは、これから起ころうとすることに対する「前振り」のことです。これから起こる内容を前もって予告・予感させておくことです。予兆のようなものです。たとえば「雨が降る」場合には「雲が立ち込めてくる」「空気が湿ってくる」という描写が「前振り」になります。これは前兆や予兆を事前に描いていくことによって、その後の展開にスムーズに移行していくことができるというものです。ネタ振りを描く場合も予兆・前兆を描いていってもいいのですが、じつはもっと盛り上げる方法があります。それは「これから起こることと『反対』のこと」を描いていくという方法です。たとえば「雨が降る」だったら「こんないい天気でまさか雨なんか降るわけないよね」ということを描いていきます。これが「ネタ振り」になります。で、起こるわけないといっていることが起こっていくわけです。そうするとよりその描こうとしている事象を盛り上げていくことがでます。

 ネタ振りは「誰かのセリフ」を通して言わせよう!

ネタ振りをするときは誰かの口を通して「セリフとしていわせる」ようにしましょう。

物語の最初の部分で、誰かが「ネタ振り」に関するセリフを言います。そのセリフはその作品の核心となるような問題提起をするものとなります。つまり、その後の物語展開を暗示させるような、起こることと逆の内容のセリフです。たとえば「弱小チームのおれたちがどんなにがんばったって甲子園になんか行けるわけねぇよ」とか「夜になると山姥が出るから、暗くなる前には必ず帰ってくるのじゃぞ」といった具合です。前者の場合は、その弱小チームが甲子園に出場するストーリーのネタ振りになり、後者の場合は、必ず夜になってしまい帰れなくなり山姥に捕まる、という展開になります。このネタ振りのセリフが物語を盛り上げる上でとても大事になってきます。このセリフがあるとないとで、物語は何倍も盛り上がりに差が出ます。マンガや一人称の小説などの場合には、モノローグや地の文などでこの「ネタ振りのセリフ」を表現することもできます。
  
◇ネタ振りのセリフで「作品の方向性」を決めていこう!
   
 ネタ振りで「物語の方向性」が確定する
 
この第一幕の中でも非常に重要なポイントである「ネタ振り」、すなわち「その後に起こることと反対のこと」は「何について描かれた作品なのか」「これからどんな展開になっていくのか」ということをはっきりと提示していくものとして機能します。ネタ振りによって作品の方向性や展開がはっきりと明確なものになっていくのです。これは物語を作る上で非常に重要で、なくてはならない要素となっています。
 
ここで、もう一度『涼宮ハルヒの憂鬱』の冒頭のファーストシーンを思い出してみましょう。

作品冒頭で主人公キョンのモノローグがあり、内容を要約すると「子供のころから宇宙人や未来人、超能力者、ヒーロー、悪の組織などに興味や関心があった。でも現実にはそんなものはない」というものになっています。この後、主人公キョンは世界を作り変えてしまう少女や宇宙人、未来人、超能力者と実際に出会っていきます。つまり、このモノローグで、この作品は「超常的な事柄(超能力や宇宙人など)をめぐる作品である」ということをお客さんに「提示」しているのです。このセリフ、モノローグは、それから起こる一連の事件や出来事の予兆となっています。つまり、平穏な日々を過ごしている主人公にこそ、超常的な事件が降りかかるのです。この主人公の最初のモノローグは、その後に起こる事を暗示し、何についての作品なのか、どんな事が語られる作品なのかという作品の方向性を明確にしてものになっているのです。

映画『ルパン3世カリオストロの城』では物語の初段にあるパンク修理のシーンでの「平和だねぇ~……」というルパンのセリフがこれに当たります。

花畑、ゆっくり流れる雲、のんびりとした平和な日常を感じているときに、爆走する一台の車とそれを追う黒づくめの男たちが乗った車がすごい勢いでルパンたちの前を横切る事件が起こります。

これは「対比」、つまり反対の内容を持つシーンを並べることで「ネタ振り」によってより盛り上げていく手法です。

冒険アクション映画『天空の城ラピュタ』では冒頭の襲撃シーンで海賊の首領ドーラが叫ぶ「あれだ、あの石だ、飛行石だよぉ!」というセリフがそれにあたります。つまり、この作品は「飛行石と、それにまつわる天空の城の謎をめぐる冒険が描かれますよ」ということをお客さんに暗示しています。

恋愛映画『耳をすませば』では物語の初段で主人公「雫」の親友「ゆうこ」がいう「雫、好きな人いる? 両想いの人がいたらいいなあって思うよね」というセリフが「ネタ振り」になっています。このセリフによってこれから恋愛というモチーフが描かれていくという「作品の方向性」を決定するものになっています。

料理マンガ『美味しんぼ』の第一話では「ネタ振りのセリフ」のオンパレードです。

「文化部の厄介もの、社内でも変わり者扱いなの」
「あの無駄メシ食いでも、置いておけば何かの役に立つってのかしら」
「拍子抜けもいいとこッ、あんなグータラな人が同じ新聞社にいるなんて……新聞社ってこんなもの?」
「もし私の眼鏡にかなう味覚の持ち主がいない場合……この企画はやめにする、残念だが流れだ」
「ピタリ正解とは……やはり大したものだ」
「山岡と新米の女の子にかい……無謀なんじゃないの?」

 ……と、とにかく第一話ではネタ振りネタ振りで盛り上げていっています。非常に計算されています。

このように、物語の冒頭、はじめの方で「ネタ振り」をすることで、物語に盛り上げを与え、物語の方向性を明確に定め、その後の展開をスムーズに、無理なく、自然に始めることができるのです。

では、今回も本講の最後に演習をやってみましょう。

演習 

自分の好きな物語作品(マンガ、アニメ、小説、映画、ドラマ等)を一つ選び、「ネタ振り」となるセリフを調べて書き出してみましょう。

 参考:第4章「構成」を組み立てよう!

■vol.34 3幕構成(4区分)でプロットをつくろう!

■vol.35 物語は「エピソード」で出来ている!

■vol.36 キャラクターの「気持ち(内面)」を描かずして、何が物語か!

■vol.37 面白い物語は始まりから面白い! 「ファーストシーン」(ツカミのつくり方)

■vol.38 「ネタ振り」が物語の出だしを盛り上げ、作品の方向性を決定する!

■vol.39 状況設定は「エピソード」を使って行おう!

■vol.40 いちばん大切な事、「とにかくキャラクターを立てよう!」

■vol.41 「事件」が“物語の本当の始まり”になる!

■vol.42 物語の本問題の発生と解決の主要な流れ、「メインプロット」

■vol.43 中盤部の面白さは、「サブプロット」にあり!

■vol.44 「ミッドポイント」――物語の真ん中では何が起こっているか!

■vol.45 「3つの流れ」を描こう!

■vol.46 物語の「山場」を盛り上げよう!

■vol.47 12の要素を当てはめてラストをつくろう!

■特別付録「物語あらすじ制作シート」

 

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