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2011年7月 1日 (金)

■vol.48 「設定」は、「キャラが魅力的に見えるシーン」のためにある!

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◇必ず「キャラクターが魅力的に見えるシーン」から「設定」をつくろう! 
 

 
設定はキャラクターのためにある!
  
 面白い物語に必要な3つめの要素は,この「設定」です。設定の中には「人や人間関係に関するもの,作品の舞台・時代・場所などの世界観を表すもの,物語上の特別な仕掛け・特殊設定など」があります。

 さて,設定をつくる上で肝に命じなければいけないことは,設定とは「キャラクターのためにある飾り・オマケである」ということです。決して設定がキャラクターを左右してはいけません。

そして,最も大切な事は「キャラクターが魅力的に見えるシーンを実現させるために,それに合った設定を考えていく」ということです。設定を先に考えてはいけません!(ただ同時に思い浮かぶ事はあります)
   
   
面白い設定があっても、それだけでは作品は面白くならない

凝った設定をウリにしている作品は数多くあります。特殊な世界観,特殊な能力,特殊な人間関係・状況,特殊な個人的事情など,作品を読んでいるとそういった特殊な設定に目が行き,あたかも特殊な設定が作品を面白くしているように感じることがよくあります。

しかし,それはちがいます。

特殊な設定がなされている理由は何かというと,それは「そのキャラクターを描く」ために「そういった設定が必要だったから」なのです。キャラクターのために,作者の意図通りのキャラクターを,意図通りの状況で,意図通りに描くために設定を考えるのです。設定がキャラクターを引き立てているから面白いのであって,設定が面白いのではないのです。

面白い設定があっても,面白いキャラクターがいなければ作品は面白くなりません。

設定を活かすも殺すも,やはりすべてキャラクター次第なのです。

  
◇設定は必ず「後付け」となる!
    
    
シーンやキャラクター,ストーリーを作ってから設定を考える

くりかえしますが,「設定」を作る際には,「設定」から先に考えてはいけません。

必ず「魅力的に見えるおいしいシーン」が浮かんでから,キャラクターができてから,その後で「設定」を考えていかなければいけません。そうしないと,設定作りの迷路にハマり,迷ってしまう危険性があるからです。設定だけはどんどん増えていくけど,肝心のキャラクターやストーリーが一向に思い浮かばない,という状況に陥りやすくなります。設定はあくまでもオマケ要素です。設定は必ず「シーンやキャラクター,場合によっては大まかなストーリーやプロットが浮かんだ後に作っていく」ようにしましょう。
   
   
設定とは「やりたいこと(やりたいシーン)をやるための合理的な説明」である

設定はシーンやキャラクターのためにあるものです。

まずシーンやキャラクターが浮かび,そのシーンやキャラクターを実現・具現化するために,そのためのお膳立てである「設定」をを作っていきます。そのシーンやキャラクターを作る過程で「必要」になってはじめて設定を作ります。設定は「やりたいこと,やりたいシーン」を実現するための合理的な説明なのです。ですから「できたらいいな」「あったらいいな」「起こったらいいな」「体験してみたいな」というシーンを作るために,ある程度無理なく実現できるための合理的な説明を考えてお膳立てしていくのです。
   
   
設定の具体的な考え方

例えば「若い男女がいつも一緒にいるシーン」が思い浮かんだとします。しかし,思春期の若い男女(とくに日本人)は,「何かもっともらしい理由」でもないかぎり男女がいつも一緒にいることはありません。ですから,二人が一緒にいる,いなければならない「理由・シチュエーション」を考えて,そのシーン実現していくのです。その「理由・シチュエーション」が「設定」なのです。

≪設定を考える順番≫

●まず実現したいシーン:「若い男女がいつも一緒にいる」

●次にシーンを実現するための理由:「日直で一緒にいなければならない」とか「部活で,部員がその男女二人しかいない」とか「家が隣同士だ」などなど……。

  
少年ジャンプの隠れた名作「ダブル・アーツ」に見る設定のつくりかた

古味直志著「ダブル・アーツ」という隠れた名作マンガがあります。(個人的には大好きな作品です)

この作品はファンタジーの世界を冒険していくというストーリーで,主人公とヒロインはとある事情から「四六時中手をつないでいなければならない」という状況に置かれてしまいます。それこそトイレの時もお風呂の時も,敵と戦うときでさえも二人は手をつないでいなければならないのです。なぜなら,手をつないでいなければヒロインが死んでしまうからなのです……。

さて,ここからは私の想像なのですが,おそらく作者はこの作品の構想段階で一番最初に「手をつないでいる主人公とヒロインのシーン」が思い浮かんだのではないかと推察されます。「手をつないでトイレに入るシーン」とか「手はつないで目隠しをしながらお風呂に入るシーン」とか「いくらケンカをしても手はしっかりつないでいなければいけないというシーン」などの「ドキドキの,爆笑シーン」がまず浮かんできたのではないかと思います。そしてそのシーンを無理なく実現するために「いかなる時も二人が手をつないでいなければいけない」という合理的な理由を考えていったのではないかと思います。

「ダブル・アーツ」で描かれたその理由となる設定は「世界中に蔓延するトロイという不治の伝染病,その治療のために各地を旅するシスターと呼ばれる若い女性たち,自身もシスターであり伝染病の影響で死が迫るヒロイン。しかし,主人公に秘められた特殊な力のため,主人公の体に触れているとその病気の進行が停止する。ヒロインはトロイの治療の手がかりになるかもと思い,主人公を中央の治療施設へ連れて行く旅に出る事になる。ただ,ヒロインはトロイに侵されているため,病状を食い止めるために主人公といつ何時も手をつないでいなければいけない」というものです。

このように,設定を考えるときは「伝染病トロイ」とか「トロイを治療するシスター,その寺院」「主人公の体に触れていると病状の進行が停止する」といった「設定」から考えていくのではなく,前述の「いつも嫌々ながら手をつないでるシーン」や「戦いの最中も手を離せずピンチになってしまうというシーン」など「シーン」をまず思い浮かべてから,そのシーンを実現・具現化するためのお膳立て・理由である「設定」を考えていくようにしましょう。

なぜならば,お客さんが見たいのは「設定」や「くわしい説明」ではなく,「ドキドキのシーン」「爆笑のシーン」だからなのです。

怪獣映画「ゴジラ」もそうです。(詳しくは分かりませんが,想像ですが)放射能の影響でゴジラが出現したという設定がはじめに考えられたのではなく,核の恐ろしさを象徴するシーンである「街を破壊するゴジラの映像」が始めにあり,それを実現するために放射能の影響でゴジラが生れて……という設定を付けていったのだと思います。(まあ,あくまでも想像ですが)

   
◇キャラクターを引き立てる設定を考える
   
   
キャラらを魅力的に見せるために設定がある

 設定を考えていく上でもうひとつ注意する点があります。それは「設定とはキャラクターを引き立てるためにあるもの」という点です。キャラクターを考えた段階で性格や弱点など様々な要素が決まってきます。「設定」はそうしたキャラクターの要素を最大限引き立てるものにしていかなければいけません。

決して,設定を先に考え,それからその設定を実現できるキャラクターを考えてはいけません。これをやるとキャラクターは設定を実現するだけのただの人形,駒に成り下がってしまい,設定に流されてキャラクターの面白さのまったくない,血の通っていない死んだキャラクターになってしまうからです。

 原哲夫の傑作アクションマンガ「北斗の拳」という作品があります。近未来の世紀末,核戦争で荒廃した世界を舞台に伝説の拳法「北斗神拳」を継承する主人公「ケンシロウ」が,その拳法を使って弱者を虐げる悪者をやっつけていく,というストーリーです。

 さて,伝説の拳法を使うカンフーの達人という主人公を一番引き立てる舞台設定とは何でしょうか。もし「北斗の拳」の舞台が現代の中国とか,アメリカとかだったら,これほどまでに「ケンシロウ」というキャラクターの魅力は描けなかったのではないでしょうか。近未来,核戦争で世界は荒れ果て暴力と略奪が日常茶飯事と化している,絶望が支配するバイオレンスな世界だからこそ,東洋の神秘的な拳法を使って無敵のカンフーアクションで悪人を倒すというケンシロウのキャラクターが一番引き立てられていくのです。近未来の荒廃した世界に拳法で戦うからいいのです。これが銃などで敵を倒すというのでは,普通過ぎて面白みやギャップがなく,キャラクターが引き立たないのです。
   
   
◇設定は状況に応じてどんどん変わっていっていい!
  
キャラクターやストーリーの必要に応じて設定はどんどん都合よく変えていこう!

キャラクターに関する設定,キャラクターが住む世界観や生活状況,人間関係などの設定は,種類を問わず「キャララクターを引き立たせる」ためのものを考えましょう。そして,設定はキャラクターやストーリーに応じて,柔軟に,どんどん変えていきましょう。設定を変えていくことでキャラクターがより引き立てば,それは変えるべきです。設定を変えたくないためにキャラクターやストーリーを変えるなんていうのは愚の骨頂です。設定はキャラを引き立てる飾りです。キャラのためにドンドン変えていきましょう。

 

◇お客さんの願望が叶うような,願望を叶えるための設定・状況を考えよう!
   
お客さんの望むものを提供する

 ここで,まず考えるべきことは,以前の内容と繰り返しになりますが「お客さんの願望を叶えるような設定を考える」ということです。

エンターテインメント作品はサービス業です。つまり,お客さんの望む者を提供していかなければなりません。「需要と供給」です。ここがエンターテインメントの特殊なところです。客商売,商売なのですね。(といっても何でもかんでも観客に迎合するという意味ではありません)お客さんがいるのです。そのお客さんを満足させなければいけません。そのためにいちばん有効なのは「お客さんの望むものを提供する」ということになるのです。
   
  
お客さんの望むものを実現させるための設定を考えよう!

 たとえばお客さんが「毎朝幼馴染の女の子が起こしに来てほしい」という望みを持っているとしたら,それを実現できるような設定・状況を考えていくのです。「無敵の力を誇るスーパーヒーローに変身したい」という望みがあったら,それを実現できるような状況・環境・倒すべき敵などの設定を考えていきます。「たくさんの女の子たちと一緒に学生生活を送りたい」「メイド,もしくは執事のいる家で生活したい」「魔法を使って大冒険したい」「学校でいちばんかっこいい男子の誰にも言えない秘密をつかみたい」などなど……,様々なお客さんの願望,欲求があります。キャラクターをつくる時もこれらを考えますが,その延長として

その状況,人間関係,キャラクターを実現できるような,そのために必要な設定を考えていきましょう。

何か面白い設定ないかなぁ,とは考えないのです。

こういうキャラクターがいてこういうシーンをやりたい,それを可能にするにはどんな設定にすればいいのかなぁ,と考えていくのです。

設定は「必要に迫られて生まれる」ものなのです。

『必要は設定の母』というわけですね。

参考:第5章 設定をつくろう!

■vol.48 「設定」は、「キャラが魅力的に見えるシーン」のためにある!

■vol.49 物語のもう一つの流れ、「謎の解明」

■vol.50 「同人誌」をつくろう!

■vol.51 主人公には「いちばんの才能」を持たせよう!

■vol.52 「特殊能力」の面白さは「制限要素の面白さ」である!

■vol.53 キャラクターの「目的」「目標」「動機」を設定しよう!

■vol.54 キャラクターが一番引き立つ「世界観」を設定しよう!

■vol.55 「組織」「職業」「部活」「家族」――人は何かに所属している

■vol.56 敵には敵の「都合」がある!

■vol.57 キャラクターや物語を引き立てる「道具・アイテム」をつくろう!

■vol.58 「制限」があったほうが物語を作りやすいって、ホント?

■vol.59 物語に「仕掛け」を施して、お客さんをアッといわせよう!

■vol.60 物語を盛り上げる方法と、キャラクターが勝手に動いてくれる設定

■vol.61 長編・短編のつくりかた どんな長さの作品でもお客さんを満足させる方法

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