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2011年7月 1日 (金)

■vol.52 「特殊能力」の面白さは「制限要素の面白さ である!

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◇キャラクターに「特殊能力」を持たせるときのコツ
   
   
「特殊能力」でキャラクターを引き立てていこう!
   
 さて,マンガ・小説・アニメなどジャンルは問わず,ファンタジーや伝奇作品,ライトノベル小説やSF,超能力バトルものなどに見られる,主人公の「超能力・特殊能力」を描いた作品がたくさんあります。その特殊能力は,上手く使えばキャラクターを非常に引き立て,キャラクターの魅力を大いに増してくれる有効な手段となってくれます。
   
 ここではこのキャラクターの「特殊能力」について考えてみたいと思います。
   
   
願望・シーンから特殊能力の内容を考えよう
   
 キャラクターに持たせる特殊能力を考えるときも,まず「願望」や「シーン」から考えていきましょう。こんなことできたらいいなぁ,こんなことしてみたいという願望がまず発想の出発点になります。そしてその能力を使っている「シーン」を思い浮かべます。こうしてどんな特殊能力を持たせたらいいかを練っていきます。
   
   
なんでもできてはだめ!
    
「特殊能力」を考えるうえでの原則は「なんでもできてはいけない」です。オールマイティ,何でもできてたらすごいスーパーヒーローが誕生すると思いがちですが,それは誤りなのです。なぜかというと,なんでもできると物語の問題解決の過程が簡単・単純になってしまい,解決が難しい問題を何とかして解決するというハラハラドキドキワクワク・葛藤・感動などの物語の楽しみの要素が失われてしまうのです。主人公が負ける可能性がまったくない勝負を見てもまったく面白くありません。
   
ではどうすればいいのでしょうか。
   
   
◇特殊能力は様々な「制限要素」が面白くする!
   
   
面白い「制限要素(しばり)を考えよう!
   
「優れた特殊能力の設定」とは,その能力の内容の面白さではなく,「能力を制限する要素・しばりの面白さ」なのです。特殊能力を考えるにあたっては,まず能力と一緒に,その能力を「制限」するような要素も考えていきましょう。
   
そのためにはまず「できることと,できないことを明確にする」ことが大切です。限界や範囲を設けて,これはできるけどこれはできない,ここまではできるけど,これ以上はできないという「制限要素(ある種のルール)」を設定していきましょう。
   
   
「能力の弱点」を設定してみよう
   
特殊能力を考えるときには,その能力の「弱点」を必ず設定しましょう。以前は「キャラクターの弱点要素」を決めることを学びましたが,今回は「能力の弱点」を決めていきましょう。
    
例えば,すごい必殺技だが「水中では使えない」とか,時間制限があるとか。無敵の巨大ロボット『エヴァンゲリオン』も絶えず電源ケーブルから電源を供給しないと動かないという「弱点」が設けられています。電源ケーブルはもちろん有線で,そのケーブルの範囲内でしか稼動できず,範囲外で戦うには新しい別のケーブルを接続しなければいけません。ケーブルが抜けると内蔵電源が4分しか持ちません。その間に敵を倒すか,別のケーブルを接続しなければロボットは停止してしまいます。もし戦闘でケーブルが切断してしまったら,電源を消失してしまったら,もしケーブルを交換している最中に攻撃されたら……と考えるとハラハラします。それが面白さにつながるのです。
   
アキレスも不死身になる冥府の川に浸したときに,母親が掴んでいた足首のアキレス腱が浸されず,そこが弱点となっていますし,ジークフリートも葉っぱが張り付いて龍の血を浴びなかった部分が弱点となり,それが原因で不死身の二人は負けてしまうという興味深い展開を導きます。
    
ですから,何らかの「弱点」となる要素を考えていきましょう。天気が晴れてくると能力が使えないとか,落ち込むと能力が消えちゃうとか、お腹が空いてると能力が使えないとか、いろいろな弱点を考えてみましょう。

    
「しばり」を設けよう
   
特殊能力を考える際は,何らかの「しばり」の要素を設けましょう。つまり「なんでもできてはダメ」と同じように「いつでも能力を使えてはダメ」「どこでも使えてはダメ」「無尽蔵に使えてはダメ」ということです。何らかの限界・条件・代償を設定していきましょう。そのためには以下のような要素を考えていきましょう。
  
   
「発動条件」を決めよう!
    
 まず能力に制限を設けるために「能力発動に必要な条件」を設定していきましょう。その能力を発揮するためには「条件が整わなければいけない」ということです。
    
例えば少女漫画『フルーツバスケット』ではキャラクターが「動物に変身する」という特殊能力(特殊体質?)が与えられています。その能力の発動条件は「異性に抱きつかれる「身体が弱る」というものです。『未来講師めぐる』では主人公めぐるの「その人の20年後の未来が見える」という特殊能力もお腹いっぱい、満腹の状態じゃないと発動しません。このように「発動の条件」を設けることで「いつでも」「どこでも」「いくらでも」ということに対して制限を設けることができます。
   
   
整えるのが困難な「発動条件」を整えようとするときに面白さが生み出される
    
「特殊能力」の面白さの重要な要素の一つはこの「発動条件の面白さ」です。「発動条件」のある特殊能力を使うため「条件を整えなければ」いけない,そのために登場人物たちが「奮闘」するところが面白さにつながります。条件がなかなか整わない,条件を整えて能力を使わないと大変な事になってしまう,こういった状況にキャラクターたちを追い込む事で物語は面白くなっていきます。
     
 発動条件を面白くするには例えば,例えば自分の好きな女の子から「キス」してもらわなければ能力が使えない,その能力を使わないと事故に巻き込まれた子供を救うことができない,でもその女の子は自分のことが大嫌い,キスは絶対嫌だけどキスしないと子供を救えない,どうするか。ホラ,なんとなく面白くなってきますよね。広がっていきますよね。シーンが浮かんできますよね。「面白いシーン・皮肉なシーン」が思い浮かぶような「発動条件」を考えて,能力を面白くしていきましょう。

    
「足かせ」を設定しよう!
   
 能力を発揮するうえで「足かせ」となる要素,「能力の行使を妨げる障害となる要素」を設定しましょう。それがジャマして能力が思うように使えない,という要素です。これも面白さにつながります。
    
一つは「限界」です。能力に関する様々な限界を設定してみましょう。発動時間,効果範囲,強弱,場所,状況,条件,精神状態など様々な要素で限界をつくりましょう。たとえばある一定の効力しかないとか、この場所じゃないと使えないとか,この時間じゃないと使えないとか,条件を満たさないと使えないとか,効果が変わるとかです。
    
傑作マンガ『鋼の錬金術師』でこの作品独自の「錬金術」という設定が出てきます。物質の構成を自由に変えて様々なものを作り出すことができるという特殊能力です。しかしこの能力にも一定の条件や制限が加えられています。まず、「無から有を生み出すことはできない」という要素です。何かを錬成するには必ず他の何か別のものを作り変えなければいけません。何もないところから生み出すことはできないという設定です。また、術を発動させるのに陣が必要だったり、術を発動させる動作が必要だったりと、いつでもどこでも無尽蔵に術が使えるのではないところに、この作品の面白さと奥深さがあるのです。
    
『未来講師めぐる』の主人公めぐるの能力は「満腹になるとその人の未来の状態が見える」というものです。しかし、この未来予見の能力も制限が設けられています。その制限とは「見えるのは20年後の未来だけ」というものです。1時間後でも、1ヵ月後でも、1年後でもなく「20年後」。当然何でも未来が見えてしまってはすべてがわかってしまうわけですから、問題も起きないでしょうし、起きてもすぐさま解決策がわかる(見える)ので物語としては面白くもなんともありません。しかし「20年後」しか見えなければ、ほとんど普通の人と変わりません。でも、役に立ちそうもないこの特殊能力を使って未来を見、ある意味歴史を変えることによってめぐるは人を助け、命を救い、不幸な未来を変えていきます。このように「未来予見」というわりとありきたりな能力も、制限要素次第では面白い、キャラクターやストーリーを大きく膨らませるものにすることができるのです。特殊能力には何らかの「足かせ」となるものを設定してみましょう。

    
「代償」を設定しよう!
    
もう一つの足かせは「代償」です。「能力を使える代わりになにかを失う」「~と引き換えにしか能力を使えない」「能力を使うと何らかの弊害が出てしまう」という感じです。例えば,能力を使うと寿命が縮むとか,不幸になるとか,好きな女の子から嫌われるとか,恋が破局するとか,恋人が自分との記憶を失ってしまうとか。そういう代償を設定すると,おいそれと簡単に能力を使うことはできなくなります。また能力を使うかどうか,自分の大切な物を犠牲にしてでも能力を使うべきかどうかという「葛藤」の要素を生み出すことができます。そういう状況で自分を犠牲にして,誰かのために代償を覚悟で能力を行使するときに,お客さんに感動を与えることができます。特殊能力とその行使に対してキャラクターがどう思い,どう考え,感じ,選択するのか,それらを描くことでキャラクターをよりいっそう描いていくことができるのです。
    
『鋼の錬金術師』では「等価交換の原則」という設定があります。より大きい術を使うには大きな力の素となるものが必要、というものです。主人公とその弟は亡くなった母親をよみがえらせようとして失敗し、その代償として弟の〝体〟を失ってしまいます。主人公は自分の片方のうでと引き換えに、弟の魂をとりあえず他のものに定着させます。この作品が他の特殊能力や魔法を扱った作品と一線を画しているのはひとえにこの制限要素である「等価交換」の設定とそれにまつわるドラマの面白さ、葛藤があるからなのです。
   
   
能力をどう使うか
    
 特殊能力とはあくまで道具です。それをどう使うか,どう運用するかはそのキャラクター次第です。
   
例えば何でも持ち上げてしまう「怪力」という能力があった場合,ある者はそれを人助けのために使うかもしれません。またある者はその力を使って犯罪を行うかもしれません。特殊能力を制して,偉大な事を成し遂げる者もいれば,能力に支配されて堕ちていく者もあります。
   
特殊能力を描く際には,能力をどう使うか,何のために使うか,キャラクターがその能力に対して持っている意識,態度,状態を描いていきましょう。
   
また,能力は弱い能力でも使いかたを工夫すると大きな効果を発揮します。能力をどんな風に運用するか,どう利用するか。「バカとはさみは使いよう」という言葉もありますが,特殊能力にもまったく同じことがいえます。結局は人間の知恵なのですね。
   
弱い者が強い者を負かす,これはエンターテインメントの基本です。小さな能力でも使いかたを工夫したり,協力したり連携したりすることで効果が違ってきます。能力の使いかた,これも考えてみましょう。
   
   
問題を解決しない特殊能力,問題の原因となる特殊能力の設定
   
 特殊能力には問題解決に関わってこない能力,役に立たない能力というものがあります。そういう能力は問題を解決するのではなく「問題の原因」となるものが多いです。「心と体が入れ替わる」とか「子供になってしまう」とか「性別が変わってしまう」とか「時間を移動してしまう」とか,かえって「トラブルの原因」となる能力です。その能力によって問題が発生してしまうのです。
  
   
◇「特殊能力」を引き立たせる
   
   
「ピンチ」「葛藤」をつくりだそう
  
 特殊能力を考えるとき大切なことは「ピンチ」になりやすい要素を持っているかどうかということがあります。
   
 設定した特殊能力の「発動条件」や「弱点」,「足かせ」「代償」などの制限要素に「ピンチ」になりやすい要素,「葛藤」を生みやすい要素を必ず入れておきましょう。繰り返しますが,特殊能力が面白いのではなくて「制限要素」が面白いのです。致命的な弱点とか,難しい困難な発動条件,大きな代償など,制限要素を利用して様々な「ピンチ」,危機的状況,「葛藤」を作っていきましょう。
  
   
特殊能力や制限要素が最大限に活きるシチュエーション・場所を用意しよう
  
 特殊能力を使ってキャラクターを引き立てていくには,その特殊能力や制限要素が最大限に活きる状況や場所を設定してみましょう。
   
代表的なものは「絶体絶命の大ピンチ」です。絶体絶命の追い込まれた状況で「特殊能力」を使って大逆転,鮮やかに問題解決させてみましょう。これは「能あるタカは~」パターンでは必須の展開です。
  
 もう一つは「大騒動」です。その能力や制限要素のためにとんでもない大騒動になってしまうというパターンです。ギャグ,コメディ作品に多いパターンです。
  
 特殊能力はそれに付随する「制限要素」や「能力を使うシチュエーションや環境」などで面白さを生み出していきましょう。能力の内容はありきたりでも構いません。どれだけ面白い「制限要素」や「能力を使うシチュエーションや環境」を考え付けるかが鍵なのです。

     
◇その能力を得るに至った理由を考えてみよう
  
   
能力によってキャラクターを立てるために「なぜその能力を持っているか」を考えてみよう

 通常の才能・能力・知識や特殊能力など,キャラクターの持っている高い能力には,その能力を持っている理由が必ずあります。たとえば傑作マンガ『MASTERキートン』の主人公キートンはしがない大学の考古学の落ちこぼれ非常勤講師ですが,じつは高いサバイバル技術を持つ現代戦のプロで,銃で襲ってくる敵をその場にある有り合わせのもので撃退してしまうという「能力」を持っています。何でそんなことができるかというと,以前にイギリスの特殊空挺部隊SASに所属し,その隊の教官だったという過去があるからです。『るろうに剣心』の主人公剣心は普段は情けない優男ですが,実は剣の達人です。なぜならば,伝説の剣術「飛天御剣流」の継承者で,幕末には「人斬り抜刀斎」とあだなされる最強の剣客だったからなのです。傑作料理マンガ『美味しんぼ』の主人公山岡士郎は新聞社のぐうたら社員ですが,じつは凄腕の料理の達人で,深い知識と高度な調理技術を持っています。なぜかというと,父親が美食家の海原雄山であり,中学生ぐらいから高級料理クラブ『美食倶楽部』の厨房に立たされて,料理の技術を徹底的にたたき込まれたという過去があるからなのです。ドラえもんは未来から来た猫型ロボットなので何でもできる未来の道具をもっています。パーマンはバードマンからパーマンになるためのセットを授かったために空を飛べたり怪力を出すことができるのです。

 このようにキャラクターに備わっている能力の由来,理由を考えることによって設定が膨らみ,キャラクターが広がっていき,キャラクターに魅力を加えることができます。また,その「能力」に説得力を持たせることもできるのです。

参考:第5章 設定をつくろう!

■vol.48 「設定」は、「キャラが魅力的に見えるシーン」のためにある!

■vol.49 物語のもう一つの流れ、「謎の解明」

■vol.50 「同人誌」をつくろう!

■vol.51 主人公には「いちばんの才能」を持たせよう!

■vol.52 「特殊能力」の面白さは「制限要素の面白さ」である!

■vol.53 キャラクターの「目的」「目標」「動機」を設定しよう!

■vol.54 キャラクターが一番引き立つ「世界観」を設定しよう!

■vol.55 「組織」「職業」「部活」「家族」――人は何かに所属している

■vol.56 敵には敵の「都合」がある!

■vol.57 キャラクターや物語を引き立てる「道具・アイテム」をつくろう!

■vol.58 「制限」があったほうが物語を作りやすいって、ホント?

■vol.59 物語に「仕掛け」を施して、お客さんをアッといわせよう!

■vol.60 物語を盛り上げる方法と、キャラクターが勝手に動いてくれる設定

■vol.61 長編・短編のつくりかた どんな長さの作品でもお客さんを満足させる方法

 

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