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2011年7月 4日 (月)

■vol.54 キャラクターが一番引き立つ「世界観」を設定しよう!

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◇キャラクターはどんな世界に住んでいるか

  

「世界観」を構成する要素を決めていこう

世界観を構成する要素は大きく分けると「時代」と「場所」の2つです。それ以外の要素はこの2つに付随するものです。

物語の登場人物は現代の日常を舞台にしたものであれ,過去の時代や意世界を舞台にしたものであれ,ある「世界」に住んでいます。そこには文明があり,文化があります。多くの人が暮らし,町や都市が存在し,国家に属しています。その土地固有の植物が生え,昆虫や動物が生息しています。登場人物がどのような環境で,どのように生活しているか,これらの要素は物語を作る上で非常に重要な要素となります。これらの要素をおざなりにすると,作品によっては非常に薄っぺらいもの,説得力のないものにしかならなくなります。メイドマンガの最高峰として名高い『エマ』の舞台は「19世紀のイギリス」です。この作品の一つの大きな魅力は19世紀当時のイギリスを丹念に描写しているところです。生活様式から街並み,文化,人々の価値観,服装,小物に至るまで当時の様子を詳細に描ききっています。この中で展開していくドラマには非常に大きな説得力が宿ります。作者の森薫氏は膨大な資料を集め,こだわりを持って19世紀のイギリスを作中で再現したのだと思います。それはひとえに「貴族の後取り息子と使用人の身分であるメイドとの身分を越えた(許されぬ)恋」を描く目的があったからに他なりません。当時の生活や風俗,価値観を描けば描くほど,二人の「身分違いの恋」という題材が引き立っていくのです。

  

◇世界観の数だけ物語が生れる

  

テーマと世界観の関係

 「テーマ」のところでも述べましたが,一つのテーマでも,世界観(舞台)を変えると別のストーリーが作れます。たった一つのテーマでも様々な世界観で描けばその世界観の数だけ物語を作ることができるのです。また,一つの世界観でも,テーマを変えればそのテーマの数だけ物語を作ることができるのです。これがシナリオライターが何十本何百本と作品を量産できる理由です。

  

◇キャラクターやドラマがいちばん引き立つ「世界観」を選択しよう!

   

世界観もシーンやキャラクター,ドラマのためにある

 世界観を決めるときは,なんといっても「自分がやりたい世界観」を選択するのがいちばんです。日常ものがやりたい,時代劇がやりたい,SFがやりたい,中世ヨーロッパが舞台の作品を作りたい,異世界のファンタジーがやりたい,大正ロマンがいい,などなど……。やりたいシーン,やりたいジャンルがあるかと思います。それをやればいいのです。

 その時に,ドラマやキャラクターが存在する場合は「その舞台がどれだけそのキャラクターやドラマを引き立てるか」を考えてみましょう。そのドラマと世界観・舞台の「組み合わせ」を考えるのです。ファンタジーの世界観でやろうとしていることを,日常ものでやってみたらもっと面白くなるかもせれません。SFでやろうとしていることを江戸時代でやってみたら案外面白い物が生れるかもしれません。戦国時代でラブコメをやったら……。世界観はあくまで設定です。設定はいろいろ変わっていくものです。いろいろな組み合わせを試して,いちばん引き立つ舞台・世界観を考えていきましょう。

   

◇「世界観」の構成要素

   

 世界観を構成する要素は「時代」と「場所」です。これらをさらに細かく考えてみると以下のような要素になります。

   

時代背景・場所(国)・文化

まず時代です。一口に時代といっても様々な時代があります。原始時代なのか中世なのか,近代なのか現代なのか未来なのか。あるいは魔法文明か。いつの時代の物語なのかということです。時代や場所(国)によって文化の面で様々なものが変わってきます。具体的には風景や町並み,服装,生活様式,食生活,町並み,建築様式,生息する動植物,しきたり,言語,礼儀作法などなどが変わってきます。どんな家に住み,何を食べ,どこに寝ているのか。

各時代には時代背景が持つ雰囲気,情勢,流行などがあります。その時代の空気感,人々の気分みたいなものを表現できればリアルに自由にその時代を描けます。それには資料が必要です。いろいろな面から資料をそろえていきましょう。

ただし,完璧に時代考証をする必要はありません。重要なポイントは〝らしく〟です。らしくなっていればOKです。物語はいうなればウソの集まりです。どうせウソなのですから,やろうとしている事を阻害するような時代考証は変えちゃって構いません。ただし,バレないように,上手くウソをつくことが大切です。このウソ,脚色,アレンジが作品の独自性と面白さになるのです。

  

文明・科学技術・産業

◎時代に合わせた科学技術水準を設定していきましょう。

また文明の進歩状況,産業・科学技術レベルという面では,どうでしょうか。過去の時代を舞台にした作品や異世界を舞台にした作品では,まず電気の使用があるのかどうかを考えなければいけません。なければ当然明かりはランプやろうそくとなります。産業機械がある場合は,動力は電気なのか蒸気機関なのか人力なのか水車・風車なのか,はたまた魔法機関,未知のエネルギーなのか。燃料はどうでしょうか。薪? 石炭? 石油? 魔力? 交通手段はどうでしょうか。馬・馬車? その他の動物・生物・怪物? 自動車? 鉄道はあるのか。飛行機は,プロペラ? ジェットエンジン? 気球? ヘリコプターは? 未来が舞台ならどれくらい未来かを考えましょう。宇宙船はあるのか? 銀河系を旅行できるか? ワープ航法等は存在するのか? 他の惑星との交流はあるのかなど,あるとすれば他の惑星の住人はどんな外見か,どんな生物かなどなど,いろいろな要素が関わってきます。

その他では,文明的にどのような素材を使えるかという面です。木? 土器? 陶器? 磁器? 石? 青銅? 鉄は? ガラスは,一般的か? 窓は? プラスチックはあるか? アルミニウムはどうか? この辺を考えて文明・科学技術のレベルを設定していきましょう。

通信という面ではどうでしょうか。狼煙なのか,伝書鳩なのか。郵便は? 飛脚? 有線によるモールス信号なのか,電話はあるのか,電話の形態は? ケータイ電話はあるのか。無線通信,TVはあるのか,モノクロかカラーか。コンピューターはあるのか?  ノートパソコンはあるのか。インターネットはあるのか? どの程度コンピューター制御されているのか?

料理はどうでしょうか。調理器具はかまど? コンロ? ガスコンロ? 電子レンジは? 冷蔵庫はどうでしょうか。

武器・兵器という面ではどうでしょうか。剣なのか,両刃なのか片刃なのか。時代・場所によって剣にも様々な形態があります。また槍・斧・弓・メイスなど様々です。鎧は? 戦闘時の服装はどうだったでしょうか。火薬は発明されているか。銃はあるのか,あれば銃はどの時代の物か。単発式なのか,リボルバー? 何発弾を装填できるのか,連続射撃はできるのか。戦車はあるのか。

国家政体はどうでしょうか。統治形態は君主制なのか民主国家か。国家元首は誰か,王なのか,選挙で選ばれた人物なのか,独裁者なのか。古代の国では宗教指導者が国を治めている例も多くあります。国の歴史は? 建国・独立の時は? 国政を司る組織はどんなものか? 議会は,議員は? 国の規模はどれくらいか。国土は? 人口は? 他国との国家間の状況はどうなのか。貿易はあるのか。平和なのか戦時中なのか。豊かなのか貧しいのか,経済状況など様々な要素があります。

  

生活環境

キャラクターが生活している環境はどうでしょうか。住んでいる土地の地理的状況はどうでしょうか。気候は暑いのか寒いのか,雨は降るか,食料はどうか,飲料水は? 田舎なのか都会なのか,海の近くなのか,山間なのか,平野なのか,荒地なのか草原なのか砂漠なのか,商店街なのか郊外の住宅地なのか,山奥の村なのか,農村なのか漁村なのか,都市部なのか。それとも野営しているのか,宿屋暮らしか。住み込みで働いているのか。

経済状況はどうか。庶民並なのか,お金持ちなのか,貧しいのか。家族構成どんなか。親は? 兄弟は? 夫婦関係・親子関係は? それとも家族がいないのか? 寮で生活しているのか? 修行中なのか? 人間関係はどうか。友人とは? 近所とは? 会社では? 学校では? 成績は? 部活では? 人間関係や成績,嫌々やっているのか,楽しんでいるのかなど,様々な角度から,様々な局面で,キャラクターがどんな状況かを考えていきましょう。

  

宗教

宗教に関してはどうでしょうか。

宗教を描くというのは「ある特定の宗教」を喧伝するという意味ではありません。

西洋を舞台とした作品,過去(大戦以前)の日本,現代の日本と共産圏以外の国を舞台とした作品では,人々の生活や価値観,礼儀作法等に「宗教」が深く関わってきます。また,ファンタジーなどの世界で架空の宗教を設定する際もそうです。

文明を遡るほど人々と宗教の関係は深いものになっていきます。洋の東西を問わず国家と宗教の結びつきは強いものがあります。昔から文化=宗教でした。人のいるところ,必ず宗教が存在します。日本も例外ではありません。年中行事であるお正月の初詣,節分,七五三,お祭り,おみこし,お盆,クリスマス,相撲など,これらはすべて「神事」,すなわち宗教儀式なのです。ですから,様々な舞台での作品を描くときは,これらの宗教的な裏づけを軽んじると,時として非常に味気ない世界観しか描けなくなります。民間伝承を含め,こうした宗教からくる文化・風俗・しきたりは作品を豊かにし,世界観を深め,生活描写をより確かなものにしてくれるのに役立ちます。

日本人には信じられないかもしれませんが,宗教と生活は密着して結びついています。結婚式(結婚披露宴ではない)も神式でも教会式でも神前で行う宗教的な誓約です。お葬式も然りです。仏壇が家にあり,神棚にお供えをします。豊作や繁栄を願い祈祷し,健康や安全を神に祈ります。魂・霊,死後の世界を信じ,亡くなった先祖を大切にし,花を供え、お墓参りをします。法事も行われます。これらはただの儀礼的なものではなく,霊を信じるという人間の持つ神や霊魂を敬う気持ちからきているのです。

人間は死や絶望,絶体絶命など自分の力ではもうどうにもならない状況に陥ったときに,どうしようもなくなったときに何をするかというと、じつは「神に祈る」のです。無神論者でもそういう状況になると祈ります。自分の力を越える状況が襲いかかってきたとき,人間は自分以上の存在を認め,謙虚になり,助けを求め祈り願うのです。これは万国共通の人間の行動です。

人々の「信仰心」はどうでしょうか。過去に行くほど人々は「人間以上の存在」に畏敬と畏怖の念を持ち,道徳や伝統的な正しい価値観を重んじて生活していました。現在は物質文明であり,唯物論的価値観やペシミズムが浸透しています。つまり「目に見えるもの」のみを信じ,経済的繁栄のためならば何をしてもよい(法に触れることでもバレなければよい)というものです。悲しいかな,日本では現在は経済が「神」として崇拝されているに等しい状況になっています。

しかし,エンタメ作品のストーリーでは目に見えないもの,すなわち「正義」とか「善」とか「優しさ」とか「誠実さ」,「思いやる心」「助け合うこと」「がんばること」「くじけないこと」「あきらめないこと」などの人の道,人間として大切な気持ち・価値観などがテーマとして描かれ,観客にしばしば大きな感動を与えています。こんな世の中だからこそ,こういった「目に見えないもの」の大切さを描く価値があるのではないかと思います。

外国では家庭や社会で宗教が今も根付いています。食事の前に祈り,行事や大会,議会などが開かれる際にも祈りで始められることが多くあります。アメリカ大統領の就任式では聖書とフリーメーソン憲章の合本に手を当てて宣誓します。タイなどの仏教国では修行中の僧侶などは人々から敬われ,深い尊敬を受けています。

ファンタジーなどで架空の宗教を描く場合は,国家と宗教形態,崇拝対象はなにか,礼拝形態はどんなか。宗教儀式は,その様式は? 宗教施設(教会・社殿・寺院・神殿など)はどんなものかを設定していきましょう。

  

◇設定はあんまり作りすぎないようにしよう!

   

 さて,異世界が舞台の作品を書く場合,これまで述べてきた要素を必要に応じてある程度細かく設定していく必要があります。

 その際に大事な事は,設定作りにのめり込みすぎて「設定に流されない」ことです。なんでもかんでも詳細に決めて行けばいいかというと,そうともかぎりません。全部の設定を作品の中で描き切ることは不可能ですし,それが面白さにとって必要な要素でもありません。「過ぎたるは及ばざるが如し」,バランスが大事なのではないかと思います。世界観を魅せる作品もありますし,逆にあまり描かない方がいい作品もあります。やりすぎは面白さを阻害したりもしますが,一般のレベル以上の世界観の描写があれば,それは確実に作品の出来を高めてくれます。「神は細部に宿る」なんて言葉もあります。

  

◇キャラクターに合った世界観,世界観に合ったキャラクター

  

名作ゲーム『クロノ・トリガー』の世界観とキャラクター設定

 『クロノ・トリガー』は時間旅行を扱った冒険ものの作品です。偶然,未来にタイムスリップした主人公たちは世界が滅亡した未来を目にします。そして,主人公は滅亡の原因を突き止め,世界を破滅から救うため歴史を変えようと過去へ旅立つというストーリーです。

タイムスリップを扱ったこの作品では,様々な時代に時間移動します。未来,現代,中世,古代,原始時代,様々な時代で主人公と出会い,仲間となるキャラクターが一人ずつ登場します。

未来(文明が滅亡し,荒廃した世界)……他のロボットに排除される壊れかけたロボット

現代(平和で科学技術も発展した世界)……主人公,ヒロインの王女,幼なじみの発明少女

中世……(剣と魔法の世界,魔王に支配されている)魔法でカエルの姿にされてしまった騎士,モンスターを統括している魔王

古代……(地上は氷河期,暑い雲の上には魔法文明が栄華を極める浮遊大陸)魔法文明に翻弄される一人の少年

原始時代(未開状態)……原始人の勝気な女戦士

これがクロノ・トリガーに登場する時代(舞台)とそのキャラクターです。それぞれの舞台の時代背景・状態で最も引き立つキャラクターが設定されているのがわかるかと思います。また,キャラクターが最も引き立つ世界観設定がされていると言い換えることもできます。また,各世界観とキャラクターの特長を最も引き立てて魅力的にみせるエピソードやストーリーが用意されていることも重要です。

このように,世界観はそれに合ったキャラクターによって決定・構成されていきます。その根本にあるのは「キャラクターが魅力的に見えるシーン」なのです。これらの要素を踏まえたうえで,そのシーンを,キャラクターを,エピソード,ドラマをいちばん引き立てられる,あるいは引き立てるのに有効な世界観を選択・構成していきましょう。

参考:第5章 設定をつくろう!

■vol.48 「設定」は、「キャラが魅力的に見えるシーン」のためにある!

■vol.49 物語のもう一つの流れ、「謎の解明」

■vol.50 「同人誌」をつくろう!

■vol.51 主人公には「いちばんの才能」を持たせよう!

■vol.52 「特殊能力」の面白さは「制限要素の面白さ」である!

■vol.53 キャラクターの「目的」「目標」「動機」を設定しよう!

■vol.54 キャラクターが一番引き立つ「世界観」を設定しよう!

■vol.55 「組織」「職業」「部活」「家族」――人は何かに所属している

■vol.56 敵には敵の「都合」がある!

■vol.57 キャラクターや物語を引き立てる「道具・アイテム」をつくろう!

■vol.58 「制限」があったほうが物語を作りやすいって、ホント?

■vol.59 物語に「仕掛け」を施して、お客さんをアッといわせよう!

■vol.60 物語を盛り上げる方法と、キャラクターが勝手に動いてくれる設定

■vol.61 長編・短編のつくりかた どんな長さの作品でもお客さんを満足させる方法

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