« ■vol.54 キャラクターが一番引き立つ「世界観」を設定しよう! | トップページ | ■vol.56 『敵には敵の「都合」がある!』 »

2011年7月 4日 (月)

■vol.55 「組織」「職業」「部活」「家族」――人は何かに所属している

0055

◇人々が所属する「組織」と「職業」に関する設定

  

 わたしたち人間はこの社会で生活するうえで,必ず何らかの組織に属しています。そして,社会の中で何らかの役割を負っています。役に立つ立たない関わらず,何らかの組織の中で何らかの立場を有しているのです。そのいちばん基礎となっているのが「家族」です。家族は社会の基本単位です。そして自治会などの地域社会,町,村,市民,県民,国民などが続きます。ここではそれらの「組織」について考えてみましょう。

  

キャラクターの職業を考えよう

人は働く年齢になると何らかの職業に就き,生活の糧を自分で得るようになります。この世には様々な職業があります。そしてその職業に関するさまざまな世界(業界)が存在します。そこで様々な人々が働いています。

職業はキャラクターの特長や人格,価値観や知識,能力,態度に大きく影響を及ぼします。キャラクターに合った職業を設定していきましょう。

また,職業を考えるうえで大切な事は,やはり職業とそれに就いているキャラクターの性格とのギャップです。

  

「特殊な職業」「珍しい職業」を題材にしてみよう

 よくある職業,広く知られた職業を題材にするとポピュラリティーを作品にもたらすことができますが,一方で「珍しい職業」や「特殊な職業」など一般にあまり知られていない職業を題材として取り上げると,それだけで作品に面白さを加えることができます。その職業ならではのこと,その職業にまつわるエピソードや裏側など,一般に知られていない職業、その職業に伴う人間関係をえがくようにするとお客さんの興味を引きやすくなります。

  

「新しい職業」を作ってしまおう

 もうひとつの方法は,「オリジナルの新しい職業」を作ってしまうというものです。この世に有り得ないようなもの,あり得そうなもの,いろいろな新しい職業を発明してみましょう。新しい職業を作るときのコツは「その職業独自のしきたり」や「決まり・ルール」,「専門用語」,「専用の道具」「部署・会社・組織・団体」などをでっちあげると真実味が増していきます。社会の中でどのような役目を帯びているのか,どのように関わっているのかも描いていきましょう。また「その道のプロ」を登場させてみましょう。

 ウソをつくときはいくらかの本当の情報も含めないといけません。本当にある会社の一事業部だけを創作するとか,お役所の中の一つの課をでっち上げるという方法も有効です。いかにもありそうな組織,役職,部署,職業を創作してみましょう。

 いろいろなものを組み合わせても面白いかもしれません。『機動警察パトレイバー』という作品は,現代にもし人型のロボットが自動車のように一般的なものとして広く普及していたら,という世界観の作品です。そうすると「ロボットを使った犯罪」というものも生れてくる,それらを取り締まるのが主人公が所属する警視庁警備部特科(特殊)車両2課という部署です。特殊車両というのはロボットのことです。コレ,いかにもありえそうな部署ですよね。警察というのは実在する組織です。その中の一部所だけを創作したのです,しかもそれっぽいネーミングで。すごい説得力があります。ロボットが特殊車両として扱われているのも秀逸な設定です。このフィクションとノンフィクションの部分が交じり合う世界観が,この作品の大きな魅力になっているのです。

  

「新しい組織」をでっち上げよう

 職業とよく似ていますが,架空のオリジナルの「組織・団体」をでっち上げてしまうのも面白い手です。いかにもありそうな組織から,それはないだろうという驚きの団体まで。自由な発想で作り出してみましょう。

例えば剣術とか格闘技の流派とか,そのオリジナルの拳法とか格闘技とか特殊部隊とかです。学術団体とか,自警団とか,日本を守護する組織とかいろいろ考えられます。現実に存在する組織や人物と絡めていくと,真実味が出てきます。『るろうに剣心』はそれが秀逸です。主人公の剣心は創作された実在しないキャラクターです。主人公の剣の流派「飛天御剣流」ももちろん作者の創作です。伝説の「人斬り抜刀斎」として幕府派の剣士たちを何人も切り殺していた,なんていう設定も真っ赤なうそ。しかし,ここに「斎藤一」や「山形有朋」などの実在する人物を登場させ,それらの人物と絡ませることによって,さも剣心も実在しているかのような効果を出すことができるのです。竹本健治著『ウロボロス』シリーズなどはストーリー自体は架空のものですが,登場人物は「実在するミステリー作家」という衝撃の作品です。もちろん実名で登場し,さもその作家がいいそうなコメントをするのです。知らない人でも楽しめるけど,知ってる人はもっと楽しめる,この虚実入り交じった世界観が不思議な魅力を生み出しています。

  

◇若者(学生)は「学校」に通っている!

  

学生が所属する組織「学校」を考えよう

 就業する年齢に満たない人物たちが登場する場合、これらのキャラクターたちは(世界観・時代背景にもよりますが)「学校」に通っています。これらの年代のキャラクターが活躍する舞台は「学校」です。小学校、中学校、高校、大学、大学院、専門学校などいろいろな学校が存在します。

  

特殊な「学校」を作っちゃおう!

 特殊な「学校」をでっち上げることで、広がりのある設定・世界観を作ることができます。『ハリー・ポッター』では魔法を学ぶための「魔法学校」が登場します。ライトノベル小説の人気スピンオフ作品『とある科学の科学の超電磁砲』では超能力者の開発・訓練を目的とした「超能力学園都市」が出てきます。現実世界でも「探偵」を育成する学校、占い師を養成する学校など、かなり特殊な学校も実在します。

   

学校内の所属組織の「目的」と「内容」を決めよう

学校にはいろいろな所属組織があります。まず「学年」と「クラス」です。学年の違いは先輩後輩を生み出します。クラスメイトとは学校で一番顔を合わせている時間が長くなります。クラス内の組織に「係り」「日直」などがあります。

学校の組織になると「委員会」があります。委員会はそれぞれ目的と役割と仕事があります。各委員会は校内でのそれぞれに課された目的を果たすために活動します。委員会を統括する位置にあるのが「生徒会」です。「生徒会」は学生の校内自治のトップです。生徒会の中にも様々な役割があります。

これらの所属組織を題材に選ぶ場合はその組織の活動の「目的」「活動内容」「組織の現状」「組織内の人間関係」「仕事の進めかたや価値観などの違いや軋轢」「組織にまつわる問題」を描いていくようにしましょう。

 とりわけ重要になるのはギャップです。いわゆる生徒会長という最大公約数的な一般のイメージといかにかけ離れたキャラクターを生徒会長にできるかがこの手の作品を成功させられるかどうかの鍵になります。

  

「部活動」を設定してみよう

学校を舞台にした作品の定番の題材として「部活動」があります。部活動は大きく分けると「運動部」と「文化部」に分かれます。運動部の目的は(大会がある部活動は)もちろん「大会で勝つ」です。一方文化部は「作品展等で入賞を目指す」「部誌」の発行、作品の制作、研究と発表などです。まずはこの「部活動の目的」を明確に設定していきましょう。これらの部活動の「目的」は職業とは、また違った性質を帯びています。職業・会社の目的は「昇進する」「利益を上げる事」「社会に貢献する事」です。しかし、部活動は上記の目的に関連してかなり自由に「活動の目的」を設定できます。そしてこの部全体としての目的の他に所属する「メンバー個人の目的」も考えていきましょう。補欠の選手は「レギュラーになりたい」という目的を持っているでしょう。部活内でケンカしてる同士であれば「仲直りしたい」という目的を持つでしょう。

部活動を舞台にした作品は、「目的」であるこの「大会で勝つ」「作品展で入賞する」ということに関連するドラマの展開となります。この目的を達成するための努力、それを妨げる障害の要素、そして、それらを乗り越えて目的を達成するキャラクターたちの成長、これが部活動のドラマのパターンです。

   

特殊な、オリジナルの「部活動」をつくっちゃおう!

 変な部活、特殊な部活、ありえない部活、ありそうでない部活などの「新しいオリジナルの部活」を作ってみても面白いと思います。ライトノベル小説に『学校の階段』という作品があり、そこに登場するオリジナルの部活が「階段部」です。これは変な部活で「校舎の階段昇り降りしてそのタイムを競う」という競技(?)を行う部活です(いや、正確にはこのときはまだ正式な部活になっていなかったんでしたっけ)。その目的は「いかに早く校舎の階段を昇り降りできるかの追求」です。

別のライトノベル小説の作品『ベン・トー』では「ハーフプライサー同好会」なる部活動(?)が登場します。活動内容は「スーパーマーケットで出る、売れ残りの半額弁当をゲットする、力づくで」というものです。これも変です。一つの半額弁当をめぐって、様々な場所片集まった猛者たちが一触即発の格闘バトルを繰り広げるのです。たかが半額弁当一個のために……。どちらも、一見ばかばかしい目的のために本気でがんばる姿や、ポリシーや熱い闘志を持ったキャラクターのギャップの面白さが魅力となっています。青春の無駄使いですが、そこで経験・成長することは本物の部活動となんら変わりはありません。

 架空の、新しい部活動を作る際は、内容はもちろんですが、その部の「目的」を明確にしておきましょう。なぜキャラクターたちはそんな事のために一生懸命になれるのか、それをすることによって何を得られるのか、最終的にどうなりたいのか、何を目指しているのか、それらを踏まえて新しいオリジナルの部活動を作ってみましょう。

  

部活動に関するその他のドラマ「部の創設」「部を立て直す」「弱小部活の強化」

部活動もののもう一つの定番は「新しい部活動を立ち上げる」と「廃部寸前の部を立て直す」と「弱小部活を強くする」です。これらはストーリーのあらすじであると同時にキャラクターが持っている目的であり、問題となる悪い状況と回復したよい状態です。

「新しい部活動を立ち上げる」パターンは「その学校にはない一般的にある部活動を立ち上げる」「新しい架空の部活を立ち上げる」「マイナーな同好会・非公式の部活を正式な部活(予算がもらえる)に昇格させる」という3つが考えられます。それぞれ、部に昇格するための条件・反対する勢力といった障害を克服し、自分たちの活動を学校・生徒会等に認めてもらって部に昇格させるというプロットで、その過程で生じるドラマを描いた物語になります。

「廃部寸前の部を立て直す」パターンは「何らかの原因・理由でその部が廃部の危機に陥り、それをなんとかして回避させて部を立て直すというストーリーになります。ここでポイントとなるのは「廃部の危機の原因」と「廃部にさせないためにがんばる部員たちの姿を描く」という点です。廃部の危機は部員の減少、予算の削減、指導者の不足など「部活動の設立条件」を満たせなくなることです。部員たちはその条件をなんとか満たそうと奮闘するのです。

 「弱小部活を強くする」パターンでは、立て直すパターンと似ているのですが「大会などでまったく成績が出せない」「部員が足りない、部員のやる気がなくなってしまった」「もともと弱小部だった」などの部の目指す目的を達成するのがほとんど不可能という状態を何とかするというパターンです。この状態が進行していくといずれ「廃部」へとつながっていきます。このパターンを使うときのポイントは「物語のゴール」をどこに設定するかを明確にするというところです。例えば「試合に一回も勝ったことがない部活を強くする」という題材では物語のゴールは「はじめて1勝する」とか「地区予選で優勝する」とか、あるいは「全国大会での優勝」などいろいろ考えられます。どれが正しくどれが間違いかということはありません。これは作品の分量で変わってくるものです。どこをゴールとするかで、物語の描きかたが変わってきます。

   

◇描くものはあくまでも「人間」である!
 

部活動の題材を通して描くのは人の「再生」と「成長」

 部活動ものの定番としてキャラクターについて2つのパターンが存在します。一つは「再生」です。これは1度挫折とか怪我とか何らかの理由で部活をやめて落ち込んでしまったキャラクターが、立ち直って再びやる気を出すとかチームにもどるとかで再生するパターンです。また、別パターンとして学校生活という面で落ちこぼれてしまった人物が、部活動の世界で挑戦・結果を出すことで人間的に再生していきます。三浦しをん著『風が強く吹いている』では、寄せ集めの素人同然のメンバーが箱根駅伝に挑戦する、というストーリーです。

二つ目は「成長」です。部活を通して人間の大切な教訓を学び、実践する事によってキャラクターの心が成長するパターンです。未熟な状態のキャラクターが登場し、キャラクターが部活動で勝つ事や部の目的を達成する家庭で「変化・成長」することにより、試合に勝つ、部の目的を達成する、という内容になります。

部活ものといっても、主として描く対象は「人間」なのです。部活動という「舞台」を通して「人間の思い・行動・感情」を描くのです。「描くのは部活動ではなく人間である」、これを忘れないようにしていきましょう。

   

◇インターネットなど、特殊な結びつきを描く

  

新しい「結びつき」「コミュニケーション方法」

最近では「インターネット」といものから生じる結びつき、交流、関わり合いというものがあります。様々な場所の様々な年代の人々が(時には国境を越えて)出会う機会が生れています。インターネット通信全般、ネットゲーム、オフ会などネットに関連するものには様々なコミュニケーションの機会が存在します。

『電車男』なども実際にあった事柄をネットの掲示板に描きこんだことから物語がはじまります。電車の中から助けた女の子と交際して、その交際がうまくいくようにインターネットを通じて様々な人々がアドバイスをする、様々な人がネットを通じて繋がる、そして一つの問題に対して行動して、ついにはその問題が解決するということが、『電車男』の一つの魅力になっています。

インターネットを描くときは、ネットでの人物像と実際の人物像のギャップを描くようにしましょう。

   

◇キャラクターと組織の関係を考えよう

   

キャラクターが組織に所属している理由を考えよう

 職業や部活動にかかわらず、そのキャラクターがその組織に所属している理由を考えていきましょう。とくに部活動はキャラクターが持つ目的・目標に直結します。そのキャラクターは何をしようとしているのか、その組織で何をするために所属しているのかを設定していきましょう。

    

組織独自の人間関係を描こう

 組織内の特徴的な人間関係を描いていきましょう。会社の人間関係とか、部活動内での人間関係とか。組織・職業・部活動というのはあくまで舞台です。いわば「入れ物」です。肝心なのは中身です。つまりその組織内の「人物」を描かなければ、作品は面白くならないのです。そして、その人物同士の「人間同士の関わり合い」を描いていくときにこそ、舞台がキャラクターたちを引き立てていくのです。その組織ならではの人間同士の関係性、それに伴う問題、障害、行動を描いて物語をさらに面白くしていきましょう。

参考:第5章 設定をつくろう!

■vol.48 「設定」は、「キャラが魅力的に見えるシーン」のためにある!

■vol.49 物語のもう一つの流れ、「謎の解明」

■vol.50 「同人誌」をつくろう!

■vol.51 主人公には「いちばんの才能」を持たせよう!

■vol.52 「特殊能力」の面白さは「制限要素の面白さ」である!

■vol.53 キャラクターの「目的」「目標」「動機」を設定しよう!

■vol.54 キャラクターが一番引き立つ「世界観」を設定しよう!

■vol.55 「組織」「職業」「部活」「家族」――人は何かに所属している

■vol.56 敵には敵の「都合」がある!

■vol.57 キャラクターや物語を引き立てる「道具・アイテム」をつくろう!

■vol.58 「制限」があったほうが物語を作りやすいって、ホント?

■vol.59 物語に「仕掛け」を施して、お客さんをアッといわせよう!

■vol.60 物語を盛り上げる方法と、キャラクターが勝手に動いてくれる設定

■vol.61 長編・短編のつくりかた どんな長さの作品でもお客さんを満足させる方法

|

« ■vol.54 キャラクターが一番引き立つ「世界観」を設定しよう! | トップページ | ■vol.56 『敵には敵の「都合」がある!』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1503239/40673120

この記事へのトラックバック一覧です: ■vol.55 「組織」「職業」「部活」「家族」――人は何かに所属している:

« ■vol.54 キャラクターが一番引き立つ「世界観」を設定しよう! | トップページ | ■vol.56 『敵には敵の「都合」がある!』 »