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2011年8月 4日 (木)

■vol.58 「制限」があったほうが物語を作りやすいって、ホント?

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◇わざと「制限」を設けて、物語を作ってみる!

 

「制限」があったほうが作りやすい?

 脚本家や作家、クリエーターの中には「自由に作っていいよ」といわれると作品を作れなくなってしまう方が多くいます。そういう方は、逆に「これこれこういう条件で、こういうのを必ず入れて欲しい」という「制限や条件、足かせ」があったほうが、作品を作りやすいというのです。

これは、人によるかもしれませんが、物語作りは「制限・制約」があったほうが作りやすい場合があるということなのです。

   

「制限プレイ」が人を熱くさせる!

 TVゲームなどで「制限プレイ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。意味は「通常どおりゲームをプレイするのではなく、自分で何らかの制限(禁止事項)を設けてプレイする」というものです。例えば「強い武器は使わない」とか「魔法を一切使わない」とか「仲間を加えないで一人だけで戦う」などです。

ゲームは一度クリアしてしまうと2度目は同じことの繰り返しとなり、面白さは半減、いやそれ以下になります。アクションゲームなどテクニックを競うゲームはまだいいのですが、ロールプレイングゲームやシミュレーションゲームなどは、まるっきり同じことをやるので救いようがありません。

そこで2度目以降のプレイを楽しむために考えられたのが自分にわざと禁止事項などの「制限」を設けて、それをいかに乗り越えられるかを競う、という遊び方です。どうやったら課した制限を乗り越えられるかを試行錯誤すること、これが面白さ・やりがいに通じます。

このように人は制限・制約があったほうが、それを何とかして乗り越えようと「燃える」ものなのです。

物語作りも同じです。自由に作るよりも頭を使うぶん、結果、自由に作るよりも良いものが、自由に作っていたら出て来ないような発想が生れます。制約があった方が方向性が定まるのです。

   

■ 三谷幸喜氏は「自分に制限を課して」作っている!

 喜劇作家の三谷幸喜氏の作劇術の特徴のひとつに「毎回、何らかの『制限・条件』を自分で設けて、その制限をきっかけにして作品を作る」というものがあります。

三谷氏は次のように語っています。

「制約が多いほど、シナリオ作りはたのしくなる。パズルを解いてるって感じです」

 氏はもともと主催する劇団の座付き作家であり同時にTVドラマの脚本でもありました。そのため執筆時に様々な制約を受けることが多くあったそうです。たとえば、スケジュールの問題でこのシーンにこの役者が出られないとか、このタレントとこのタレントは仲が悪いから同じシーンに出さないでくれとか、予算の関係でセットが組めないのでシーンを変えてしてほしいとか、劇団の役者一人ひとりにどこかで見せ場を作ってやらなければいけないなどなど、様々な制約・条件・制限の中で作品を書かなければいけなかったそうです。しかし、それらの制限を課せられながら出来上がった作品は皆さんご存知の通り傑作揃いです。

おそらく氏は、制限があってはとても描けネェよ! と突っぱねたりせず、いろんな事情を鑑みて制限を受け入れながら、そのうえで面白くしてやるぞという脚本家としてのこだわり、心意気みたいなものを持っていつも執筆していたのではないでしょうか。

氏は知っていたのです、「制限・制約を受け入れながら、その上で面白さを出すためにはどうすればいいかというところに創作の面白さがある」、そういう「制限要素的なきっかけがあったほうが面白いものができやすい」ということを。

 氏は名声を得て、自分の思うとおりに作品を書けるようになった現在でも自身の作品を執筆するときは何らかの「制約・制限」を課して作っています。最も有名な例ではNHKの大河ドラマ「新撰組!」で、毎回1話分のストーリーが「必ず劇中での1日の出来事になる用に作る」という制約を課していたそうです。それによって出来なくなってしまうこともあったかもしれませんが、その制限によって生れた思っても見なかった展開というものもあったかと思います。

   

■ 物語作りは「妥協」の連続?

 実際の物語作りというのは「妥協の連続」です。長いから斬ったり、実現不可能だから斬ったり、スケジュールの関係でなくしたりと、必ずどこかで妥協しなければいけないものです。じゃないと、終わらないからです。この制限・制約があると、こうれはもうしょうがないよね、と割り切って妥協していきやすくなります。

 このように、さまざまな制限・制約を課してみると、いつもの自分じゃ作らなかった、作れなかったような作品を作れちゃったりするのです。

    

■ 「制限・制約」と「変なこだわり・執着」の違い

ここで注意することがあります。それは「制限・制約」と「変なこだわり・執着」は『似ていても違う』ということです。どちらも同じ自由度を制限する要素ですが、「制限・制約」は、好むと好まざるとそれをクリアしなければいけないハードルや障害物のようなもので、それがあることによって発想やアイディアを広げ、方向性を整理し定めてくれるのに役立ちます。

しかし「変なこだわり・執着」は「こうじゃなきゃいけない、これ以外には考えられない」といった「固執・限定」であって「自分が好きでやっている制限・限界」なのです。これに囚われてしまうと、考えの自由度を下げ視野を狭くしてしまいます。

この二つを見極める点はずばり「その制約があることで考えが広がっていくか、それとも限定されるか」です。この点に注意しながら、ユニークな制限・制約を自分に課していってみましょう。

   

「制限・制約」を課してみよう!

 では、実際に自分に制限を課して作品を作ってみましょう。制限の要素は何でもいいのです。どんなものでもかまいません。制限を課して作ってみるとわかりますが、なぜか制約・制限があったほうがアイディアがわいてくるのです。その制約・制限があることによってもたらされるマイナスの影響を何とかカバーしようと、またはプラスに転じさせようと次々と打開策・新しいアイディアが浮かんできます。

また、何も制約・制限がないと、あまりにも選択肢が広すぎてどこに焦点を当てて、どこを目指していいかわからず、作品の企画・内容をどんなものにしていけばいいか判断できなくなってしまいます。でも逆に、制限・制約によって選択肢の範囲が狭められれば、そのぶん方向性を決めやすくなり、作品作りがラクになるのです。あとは、その範囲内でできることを考え、追求していくことによって、焦点を定めてどんどん作品を面白くしていくための工夫をしていくことができます。

   

■ 作品の「サービスポイント」から制約を考える!

作品、どんな作品を作ればいいかという段階では「作品のサービスポイント」を考えていくと、自分が作りたい、実現したい作品が少し見えてくるのではないかと思います。サービスポイントとはその作品を「どの年齢層に、どんな形で、どのようにアピールしていくか」ということです。いい方を変えれば「作品を使ってお客さんのどんな需要を満たしていくか、どんな『サービス』を提供していくか」という点です。

物語作品、とくにエンタメ作品は「サービス業」なのです。
      
例えば
      
「若い年代の女性のお客さんに、主人公の女の子に感情移入することによって『イケメンの超かっこいい彼氏と恋愛してるドキドキ、甘~い時間』を体験させたい」

または、

「男の子の客層に『ハラハラドキドキワクワクの冒険』を体験して欲しい」
    
というものが作品を通してもたらされるサービスポイントです。エンタメ作品はそのサービスをお客さんに提供するために、その目的で作られるというそもそもの大前提が存在します。それがいわゆる「芸術作品」との違いです。このサービスが作品の人気に繋がっていきます。そのサービスをどのようなものにするかが作品のコンセプトになります。

このようにエンターテインメント作品にはそれぞれのお客さんに対して、そのお客さんを楽しませ、要望にこたえるサービス要素が必ずなくてはいけません。作品のサービスポイントを決めていくことで、だいぶ選択肢が定まっていきます。何をやらなければいけないか、どのようにやればいいかが分かってきます。そのための最も効果的な手段を知ることができます。方向性が定まれば、その方向性を突き詰めていき、その過程で様々な制約・制限を設定していくことによって、物語の企画をだいぶラクに考えていけるようになります。

   

◇場所・舞台を限定してみよう!

   

「密室効果」を作品にとり入れよう!

 物語の中ではある特定の場所・舞台が作品の主要な要素になっているものがあります。物語によっては、かなり「限定された範囲」の中で繰り広げられます。これは一種の足かせ・しばりの要素となります。物語を作るときはこうしたしばりの要素があった方が作りやすい場合が多くあります。場所を限定することで緊張感・緊迫感を高める〝密室効果〟を生み出すことができます。

   

 場所を「限定」して、その中で「様々な出来事を引き起こして」みよう

 一幕ものの舞台やコントなどでは、場所や舞台・シチュエーションが限定されているものが多くあります。とくに日本の大人気喜劇作家三谷幸喜氏の舞台では、この限定された一つの空間であることを利用した作品がたくさんあります。

例を挙げると、『12人のやさしい日本人』という「日本に陪審員制度があったら」という設定の作品で、物語は「陪審員室の中だけ」で進行していきます。『笑いの大学』という作品は、戦時中の日本が舞台の物語です。ある喜劇作家がくせものの検閲官から「戦時下の上演にふさわしい作品かどうか」という検閲を受けるというストーリーで、やはり警察署内の「検閲室内のみ」で物語が進行してきます。『オケピ!』という作品では登場人物はミュージカルの伴奏音楽を奏でるオーケストラのメンバーで、実際にミュージカルが上演されている舞台の下に設置されている「オーケストラピット(通称オケピ)内だけ」で物語が進行していきます。このほかにも場所が限定されている三谷作品はたくさんあるのですが、それらの作品の特徴として「場所が限定されている中で非常にバラエティに富んだ色々なことが起こる」という点です。場所が限定されているから出来事もそんな大きなことは起きないだろうと思ったら大間違いです。限定された中だからこそ、そこで起こる出来事がより引き立って、大騒動になっていくのです。

 『オケピ!』を例に出すと、オーケストラピット内で演奏しているだけのストーリーなのに、男女関係の恋の駆け引き(何角関係かになっている)があるわ、演奏者同士のケンカが起こるわ、持ち込んだペットが出産するわ、あやしげな商品のセールスがはじまるわ、離婚して離れ離れになった娘が舞台を観に来てることがわかるわと、とにかくあらん限りの様々なハプニングが起こります。しかも、ミュージカルの上演中にです。上演中ですから演奏を止めるわけにはいきません。何とか、様々なで問題を解決させてバラバラなメンバーがある意味一致して何とか演奏を完遂していきます。場所が限定され、しかも、途中で出ることも止まることもできないという、状況面も限定されているからこそ、緊張感、緊迫感が高められストーリーが何倍も面白くなっていくのです。
    
    
■ 映像作品でも場所が限定されている傑作がたくさんある

 演劇作品でなくとも、舞台を限定して面白さを出している作品がたくさんあります。前述の三谷幸喜氏の監督作品である映画『ラジオの時間』も場所はTV局内と限定されています。そこで様々なハプニングが起こります。三谷氏が脚本を手がけたTVドラマ『王様のレストラン』は作品の舞台がフレンチレストラン内だけです。そこで様々なアクシデントやハプニングが起こり、トラブルが発生し、それを解決していくのです。

宮崎駿監督のアニメ映画『ルパン三世カリオストロの城』もカリオストロの城内で物語が進んでいきます。アニメ作品の『ミンキーモモシリーズ』のビデオ版の『ミンキーモモ 夢に架ける橋』という作品も、作中のメインの舞台は「橋の上」です。その橋の上を様々な人物たちが往来し、たまたま起こったひょんな出来事からその橋で人々が出会い、交流し、様々な出来事が起こっていくのです。映像作品の有利な点は、場所や視点を瞬時にあらゆるところへ設定できる点ですが、こうして場所をある程度限定して、その中でドラマを展開させてやっても面白いものができます。

   

■ 一つの場所を限定してみよう

 一つの限定された場所を決めて、そこに色々な人を登場させて、色々な出来事を引き起こしてみましょう。そこで起こる出来事とは何かというと「トラブル・問題」です。場合によってはたまたま偶然底に居合わせた縁もゆかりもない人たちが、協力して問題を解決することになるかもしれません。場所は何でもいいです。例えばコンビニのレジでもいいのです。そこにいろいろな人が訪れます。そこでなにか事件を起こすのです。場所は、不可抗力があってその場所にいなければいけない、簡単には出ることができないというシチュエーションが望ましいです。例えば飛行機や列車の中、船の上とか、エレベーター内に閉じ込められてしまうとか。またはたくさんの人が訪れる場所も適しています。お店、ホテル、レストラン、商店街、戦場など色々です。訪れる人がすでにもう問題を抱えているという場合もあります。そこで、様々なストーリーを展開させてみましょう。

参考:第5章 設定をつくろう!

■vol.48 「設定」は、「キャラが魅力的に見えるシーン」のためにある!

■vol.49 物語のもう一つの流れ、「謎の解明」

■vol.50 「同人誌」をつくろう!

■vol.51 主人公には「いちばんの才能」を持たせよう!

■vol.52 「特殊能力」の面白さは「制限要素の面白さ」である!

■vol.53 キャラクターの「目的」「目標」「動機」を設定しよう!

■vol.54 キャラクターが一番引き立つ「世界観」を設定しよう!

■vol.55 「組織」「職業」「部活」「家族」――人は何かに所属している

■vol.56 敵には敵の「都合」がある!

■vol.57 キャラクターや物語を引き立てる「道具・アイテム」をつくろう!

■vol.58 「制限」があったほうが物語を作りやすいって、ホント?

■vol.59 物語に「仕掛け」を施して、お客さんをアッといわせよう!

■vol.60 物語を盛り上げる方法と、キャラクターが勝手に動いてくれる設定

■vol.61 長編・短編のつくりかた どんな長さの作品でもお客さんを満足させる方法

 

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