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2011年9月24日 (土)

■vol.60 物語を盛り上げる方法と、キャラクターが勝手に動いてくれる設定

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◇物語が盛り上がらないときの対処法

  

■ 物語がなぜか盛り上がらない、その理由は……

 魅力的なキャラクターができて、物語のメインプロットも決まり、「解決すべき問題」「解決のための行動」とその「動機」もバッチリ決まったのに、実際に物語を書きはじめるとなぜか〝盛り上がらない〟という場合が多くあります。執筆している途中で「キャラクターが物語を進行させるためだけに行動している」ような感じを受けるのです。キャラクターの思い、強烈な動機、それを心からやらなければいけないというキャラの心情が感じられないのです。これはなぜなのでしょうか。

もしキャラクターの人物設定やプロットに問題が見当たらない場合は答えはただ一つ、「物語を盛り上げるための設定」が加えられていないからなのです。ここでは物語を盛り上げる方法を学んでいきたいと思います。と同時に、物語が盛り上がるとキャラクターが「一人で勝手に動いてくれる」ようになります。

   

■ おさらい:プロットの確認「超目標」と「貫通行動」

ここで少しおさらいをしておきましょう。

まずは物語の人物設定とプロットを確認してみましょう。キャラクターは物語の中で「目標・願望」を持って物語世界に存在しています。キャラクターは「~をしたい」という欲求や願望、目標、夢を必ず持っています。

そんな中で、物語では特定の「事件」が発生します。この事件から生じた「問題」によってキャラクター自身や周囲のキャラクターに悪影響が及んだり、そのキャラクターの持つ願望や目標の達成が困難な状況になります。そのため、キャラクターは周囲の人々を助けたり自分の願望を達成するために「問題を解決しようという望み、思い」を抱きます。この「問題的な状況を解決したい!」という目的をシナリオ用語で「超目標」といいます。これは「その問題を解決したいという動機」となり、この超目標を持ったキャラクターは問題解決のために「行動」をしていきます。この問題解決の行動を、同じくシナリオ用語で「貫通行動」といいます。物語はこの二つを描写したものです。これが物語のメインプロットとなり、またキャラクターが動いてくれる原動力となります。皆さんの人物と物語にはこの「超目標」と「貫通行動」はあるでしょうか。

さて、この二つの要素が揃っていれば面白い物語が出来上がりキャラが動いていきそうなのですが、じつはこれだけではキャラはなかなか動かないのです。「超目標」は問題を解決するための貫通行動の動機にはなり得ますが、それだけでは物語の上では弱いのです。「なぜそれをするのか、なんのためにするのか、なぜそれをしなければならないのかという裏付け」が必要なのです。じつはこれが物語が盛り上がるかどうか、キャラが活き活きと動くかどうかのポイントとなってきます。

   

◇「特別な理由」で盛り上げよう!

    

「野球で勝つ」だけではダメ、『何のために勝たなければいけないのか』という「勝つための理由」をプラスしてやろう!

たとえば「主人公の所属する野球チームが試合で勝つ」という物語があったとします。主人公の目的、というか願いはもちろん「野球の試合で勝つ」です。これだけでも主人公が熱望している事ですから動機としては十分で、試合に勝つためにあらゆる行動をしてくれるでしょう。

しかし、このストーリーをさらに「盛り上げる」方法があります。

その方法とは『「何かのために」野球の試合に勝たなければいけない』という、ただ単に勝つという事の「他に別の理由」をプラスしてやるのです。たとえば「病気で入院している子供のファンと『必ず勝つ』という約束をした」とか「この試合で勝たなければ野球部が廃部になる」とか「試合に勝たないと婚約が破談にさせられてしまう」とか、多少無理があってもいいですから「勝たなければいけない特別な理由」を設定してみましょう。この付加された「別の特別な理由」がキャラクターに「さらに強力な行動の動機・理由」を持たせることができるのです。もちろんこれは野球に限ったことではありません。プロポーズでも大掃除でもあらゆる物語の中の人物の行動事項に言えることですが、主要な目的以外の「それをしなければいけない何か別の特別な理由」があるだけで物語は格段に盛り上がっていくのです。

このように行動しなければいけない特別な理由をプラスしてやるとキャラクターが一人でに動きやすくなっていきます。

さて、行動しなければいけない特別な理由は、以下の項で紹介するキャラクターに関する三つの設定と関係のあるのもとして設定してやりましょう。

   

◇「キャラクターが勝手に動いてくれる状態」とは?

   

 キャラが立つと「自分で勝手に動いて」くれる!

プロ作家の方は自分の作品の登場人物を語るときに、よく「キャラクターが勝手に動いてくれる」といいます。これは物語を作っていく上で作者のコントロール以上に人物がどんどん活発に行動していく状態のことです。この状態になればキャラクターを活き活きと引き立たせていくことにおいて、ほぼ成功しているといえます。

またこの状態は、キャラクターが立つという意味での「勝手に動く」状態の他にもう一つ、キャラクターが問題を解決するために「積極的に行動する状態」をも意味します。どちらもキャラクターが立ち、活き活きとし、存在感が出て魅力が増していきます。

我々は最終的にこの状態を目指していきたいと思います。

さて、ではこのキャラクターがあたかも人格を持ってひとりで動いてくれるという状態を作るにはどうすればいいのでしょうか。

   

◇キャラクターを動かしてくれる「三つの設定要素」

    

■ キャラを動かす「目標」と「環境」と「人物」

 物語を盛り上げキャラクターが動いてくれるためには、まずは「本人の魅力的なキャラクターの人物設定」が必要です。これは当然といえば当然です。(これに関しては本書第二章「キャラクターをつくろう」を参照してください。ここでは魅力的なキャラクターができているということで話を進めていきます)

しかし、魅力的な人物ができてもなかなか「ひとりで勝手に活発に」動いてはくれません。多少は動いてくれますが、物語に乗せるとまだまだ活き活きとまではいきません。キャラクターは作っただけでは「ひとりでに勝手に動いてくれる」わけではないのです。キャラクターが動いてくれるためには、以下の三つの設定要素が必要になります。

 ①キャラを動かす「大きな、長期的な目標・目的」
 ②キャラを動かす「状況、環境」
 ③キャラを動かす「積極的、または対になる人物」

 まずはこの三つの設定要素について考えていきたいと思います。この三つについては以前に学んだ事と重複する部分がありますが、もう一度、復習する意味も含めて学んでいきましょう。

   

◇①「大きな目標」とは《問題の解決に関連した、長期的な目標》である!

  

■ キャラに「大きな目標」を持たせよう!

「大きな、長期的な目標・目的」とは何かというと「キャラクターが日頃から持っている達成したいこと、成し遂げたいと思っていること」です。またその達成に長期間のスパンや継続的な行動が必要なレベルの目標・目的・志・夢のことです。これらの目標を「超目標」と区別する意味で「大きな目標」と呼びたいと思います。この「大きな目標」と物語上で発生する問題を解決したいという目標「超目標」は別なものです。ただ、この二つは互いに関連したものにしていきます。キャラクターにはを必ずこの「大きな目標」を持たせるようにしましょう。

   

■ 「大きな目標」がキャラの行動に影響を与える!

キャラクターが物語の世界で生きているということは、必ず「目標、やりたいこと、いつかはやろうとしていること」を持っているということです。「大きな目標」はキャラクターの外的環境や過去の経験、キャラクター自身の内的心理状態などすべてのものを通じて形成されていきます。また、キャラクターはその「大きな目標」の達成について何らかの「思い」を持って生活しています。そして、その「大きな目標を達成するということ」に従って日常生活を送り、様々な行動の動機となっています。いい換えれば、その「大きな目標」がキャラクターの行動のすべてに影響を与えているのです。キャラクターが「なにをやるか、やらないか」を判断するその判断基準はこの「大きな目標」なのです。ですから、この「大きな目標」の達成にそぐわない行動に関してはキャラクターは動くことができない、動くことしないのです。ここで無理に動かそうとするとキャラクターは死に、操り人形になってしまいます。

逆に「大きな目標」に関連することであればキャラクターは否が応でも行動する、行動せざるを得ない状況・状態となります。「大きな目標」の達成がキャラクターの行動指針となり、キャラクターを動かしているのです。

   

■ 「大きな目標」の具体例

 優れた作品は、主要な登場人物がこの「大きな目標」を必ず持っています。たとえば『鋼の錬金術師』では主人公は「失われた弟の体を元に戻す」という大きな目標を持っています。そしてそのために「弟の体を元に戻す力を秘めた『賢者の石』を探す旅」をしています。物語は、その『賢者の石』の探索に起因する事件やトラブルを解決していく内容が描かれています。

 『母をたずねて三千里』などは文字通り「母親を捜す」という目標があります。『エヴァンゲリオン』は「襲いくる怪物を撃退する」という目標があります。その過程で様々な出来事が起こるのです。『魔女の宅急便』では「魔女になる」という目標があり、『美味しんぼ』では「究極のメニューを見つける」という目標があります。……と、挙げていけばきりがありませんが、このほかにもたくさんの作品で「大きな目標」が設定されています。皆さんの好きな作品のキャラクターの持つ「大きな目標」をぜひ調べてみてください。

    

■ もしキャラが願望や目標を持ってなかったら……

もしキャラクターに願い求めるものや願望が一切なかったら、どうなるでしょうか。答えは「そのキャラクターは一切何も行動できない」のです。行動させたくてもしてくれないのです。行動の動機、理由がないから、キャラクターはどういう目的で、どう行動すればいいのか、何のために、何をすればいいのかわからなくなってしまうのです。ですから、物語にはこのキャラクターが行動する理由がぜったいに必要です。

「大きな目標」はキャラクターの願望や欲求、願いそのものです。ただ、なかなか達成・実現できません。長い期間や多くの労力が必要です。常日頃からその達成のために努力を続けたり、考えをめぐらせたりしているのです。そういったまさに「大きな目標」をキャラクターに持たせましょう。

   

「大きな目標」は、メインプロットの問題解決と〝関連のあるもの〟にしていこう!

せっかくキャラクターに「大きな目標」を持たせたのに、いまいち動いてくれない、盛り上がらないという場合があります。これはなぜかというと「大きな目標(夢や願い、思い、達成したいこと)」と「物語上の問題とその解決の行動(超目標と貫通行動)」とがうまくリンクしてない、絡み合っていない、関連してない、「大きな目標がメインプロットの問題解決とその行動に関係性がないものになっている」からなのです。

「大きな目標」を設定するときは、物語上の問題と解決=「超目標」と、その行動=「貫通行動」に〝関連する〟大きな目標を与えてやることが大切です。つまり、大きな目標と超目標を関連させるということです。考え方としては、大きな目標があり、その大きな目標に関連した出来事・事件を起こしていく、あるいは問題と解決が先に浮かんでいる場合は、それに関連した「大きな目標」をキャラクターに付与してやればいいのです。このように二つを関連させれば、「大きな目標」の達成のために物語上の問題を解決しなければいけない、という状況が生れます。この行動しなければならない、という状態が物語としての「盛り上がり」を生むのです。

  

◇②キャラを動かしてくれる「環境、状況」をつくろう!

   

■ キャラクターを動かしてくれる「強制力」

 超目標と関連性のある「大きな目標」をキャラクターに持たせたら、次にキャラクターが「否が応でも動かなければいけない、キャラクターを動かしてくれる環境、状況」を設定していきます。キャラクターを動かしてくれる「環境、状況」とはどんなものなのでしょうか。

それは「強制力」の働く環境、状況のことです。

   

キャラが勝手に動いてくれる状態を作るには、「強制力」のある環境・状況に放り込もう!

 キャラクターは物語の中では何をしようが何をしまいが自由です。誰にも強制されることも強要されることもありません。人間は自由意志によって行動し、選択の自由を行使して生活しているからです。ただし、自由すぎることは物語という面ではマイナスになります。キャラクターには「枷」「しばり」ともいうべき「強制力」が必要なのです。その行動を「やらなければいけない」環境、状況をキャラクターに与えて、やらざるを得ない状態にしてしまうのです。いわば行動する「必然性・必要性」を与えるのです。不思議な事ですが、自由に行動するよりも、何らかの理由があって「行動しなければいけない」という状況の方が物語が盛り上がるし、キャラクターの存在にも行動にも説得力と必然性が生れるのです。

 では具体的にどうすれば「強制力」のある環境・状況をつくれるのかというと、一番簡単な方法は「行動しなければいけないような組織にキャラクターを所属させてしまう」ことです。キャラクターにその世界での何らかの「役目」を与えてやるのです。キャラクターに社会的な何らかの役目を帯びさせればキャラクターには役目に伴う、やらなければいけない(つまり強制力がある)「役割」が生じます。

その代表的なものは「職業」です。

   

 「職業」が生む強制力

そのことに関して具体例を示したいと思います。

浦沢直樹氏の名作マンガ『MASTERキートン』の主人公キートンは2つの「強制力のある設定」を持っています。1つ目は「考古学者であり、大学の非常勤講師という職業」です。これが学者、講師としての仕事・やらなければいけないこと、行動の動機・理由・目的・必然性を生み出します。

もう一つは「大手生命保険会社調査員という職業」です。この「職業が生み出す行動の動機」があるためにキートンは調査員として様々な案件を調査するために様々な場所へ赴き、様々に行動します。なぜそう行動するかというと「保険の調査員」という仕事に就いているからです。これが「強制力のある設定」なのです。この設定があるからこそ、キートンを自然に違和感なく、必然性を保ちながら様々なトラブルに巻き込ませることができるのです。

キートンは大学の講師の仕事や保険調査の過程でトラブルなどに巻き込まれ、軍隊時代に培った戦闘やサバイバルのスキルを発揮して問題を解決していきます。これは逆をいえば、いろいろな問題に巻き込まれてそれを解決するために「行動しなければいけない状況」になるには、「講師」と「保険の調査員」という環境・状況が必要だったといえるのです。

 キートンは給料をもらって生活するためには、それらの職業を続けていかねばなりません、。だから、職業を続けるために業務である仕事をこなすのです。

   

■ 強制力のある環境・状況を与えよう!

 探偵がいたとします。探偵は探偵を生業としていますから、事件が持ち込まれたらそれを解決するために調査を開始します。なぜそう行動するかというと探偵だからです。刑事がいたとします。刑事も事件を解決するのが仕事ですから、事件があったらその解決のために力を尽くします。両者とも「職業」という「強制力を伴った動機」があるために「事件を解決しなければならない立場」にあるのです。しかし、もし何の理由も持たないで、事件が発生したからといってそのキャラクターが調査を始めようとしても、いまいち盛り上がりません。なぜ盛り上がらないかというと、それをしなければいけないという必然性や必要性、半強制的とも言える状況的動機という強制力がないからなのです。「~しなければならない」という強制力を持った目的がないと盛り上がらないのです。逆に強制力が働いている立場にキャラクターを置いてやると面白いほどに盛り上がります。

 『美味しんぼ』というマンガ作品があります。新聞社で働く主人公の山岡士郎と栗田ゆう子が、新聞の新企画である「究極のメニュー」を探していくというストーリーの作品です。この作品の一番の面白さは『究極のメニューを探す途中で、各方面のいろいろな問題・トラブルに遭遇し、主人公の山岡が食に関する深い知識と技術を使ってその問題を解決していく』という部分です。

物語の作り方の手順をおっていくと、まず山岡が「食に関する深い知識を使って問題を解決する」というシーンが浮かび、それを実現する「海原雄山を父に持ち、子供のころから高級料亭の厨房に叩き込まれた」という設定が作られます。そして「問題を食に関する知識という解決方法で解決する」というストーリーが出来上がります。

さて質問なのですが、もしもこの二人が新聞社で働いていても「究極のメニュー作り」という目的を持っていなかったらどうでしょうか。つまり記事を書くために取材するというの「必然性」もなければ、究極のメニューを作り出さなければならないという「必要性」もないという状態です。山岡は、それでも深い食の知識と技術で問題を解決していくでしょう。一定のカタルシスもあるかもしれません。しかし、それでは盛り上がりにかけるのです。なぜかというと、常日頃から持っている目的、それを進展させようと行動すること、そして、その過程で事件・問題に巻き込まれることが大切だからです。強制力とは一言でいうと「~をしなければいけない、それをやらないと自分、みんな、もしくは誰かの目的が達せられない、何らかの不都合・不具合・不利益が生じる、そうならないようにがんばらなければいけない」というものなのです。

   

 『ハルヒ』に見る強制力の設定「部活」

職業でなければ、部活動やサークルなど何か他の組織に所属させて「やらなければいけない事項」と「その必然性・必要性」をキャラクターに与えていくことができます。

『ハルヒ』を例にとって見ていきましょう。

主人公たちは就業する前の年齢(高校生)ですので職業には就いていません。しかし彼らは部活動をしています。

主人公キョンは、はじめは何の部活動にも属していないのですが、「SOS団」という部活(サークル?)をハルヒが立ち上げ、それに巻き込まれることになります。

この例ではまず「『新クラブ』の立ち上げに必要なことを行わなければいけない」という強制力が生れます。キョンたちはこの目的に向かって追い立てられるように、せき立てられるように行動していきます。この「追い立てられるような状況」が大事なのです。これが盛り上がりを生みます。部室を探し、備品を集め、メンバーを揃えと、ドンドン行動していきます。せざるを得ない状態にあるからです。

そして無事設立された「SOS団」、その活動目的は「不思議なことを探す」というものです。実はこの「SOS団とその活動目的」という点がすごく大事なのです。なぜなら、この「SOS団とその活動目的」が彼らの「行動の動機」となるからです。主人公のキョンはハルヒにこのSOS団に無理やり所属させられて、不思議なことを探すという活動を無理やり強要されています。つまりは「強制力が働いている状況」です。SOS団に所属するキョンにとってSOS団の活動は「やらなければならないこと」なのです。所属している、だからやらなければならない、だからやるのです、だからハルヒの無理難題、むちゃくちゃな行動に協力するのです。協力せざるを得ないのです、SOS団の団員だから。これが強制力から促された動機です。この行動の必然性・必要性がキャラクターを行動させ、盛り上がりを生むのです。

   

 ハルヒ、キョン以外のメンバーの強制力の設定

また、『ハルヒ』がさらに優れているところは、ハルヒとキョン以外のメンバー「朝比奈みくる」「長門有希」「古泉一樹」の三人のキャラクターがそれぞれ別の「強制力を伴う動機」を持っている点です。「朝比奈みくる」は未来からタイムスリップして来た未来人で「未来の時間の流れに異常をもたらすハルヒを監視する」という役目を帯びています。だから「その任務を果たすために」SOS団に所属し、ハルヒのすぐ近くにいるのです。

同じく「長門有希」は銀河を統括する「情報生命体」が「宇宙の情報構造に影響を与える力を持つハルヒを監視・観測する」という目的で造られた有機アンドロイドです。やはり「ハルヒの監視」という目的のためハルヒのすぐ近くにいます。

「古泉一樹」も、とある秘密機関の人間で、自身も超能力者であり「ハルヒの監視とハルヒが作り出す閉鎖空間の発生の調査をする」という任務を持っています。だからハルヒのすぐそばにいようとします。

また、この三人は「ハルヒの持つ能力に影響を与える人物であるキョン」の監視もしています。彼らは「任務を果たすために好都合なので」SOS団に所属し、ハルヒやキョンたちと行動を共にしているのです。これが特殊な設定を持つキャラクターである三人がハルヒやキョンと一緒にいて、行動を共にするための自然で、もっとらしい、盛り上がりを生む、無理のない動機・理由です。三人ともそれぞれの所属組織に所属し、その組織の使命・任務を帯びているという「強制力=必然性と必要性」があります。これこそが設定を作る上でのポイントなのです。ただの宇宙人・未来人・超能力者というだけの設定ではなく、「所属組織等からもたらされる使命や任務を果たすためにそれを行っている、そこにいるという強制力を伴う設定」をを付けてやるのです!

さらに、物語が進むにつれて任務を帯びて行動している彼らの気持ちの部分が描かれ、任務のため〝だけ〟でハルヒたちと行動をともにしているのではないことがわかってきます。そんな気持ちの面を描くことでも、キャラクターをより深く描き出しやすくなっていくのです。

   

■ その他の「強制力を伴う設定」の具体例

 映画『12人の怒れる男』という作品があります。「陪審員もの」の傑作です。この作品は、無作為に選ばれた12人の一般人が陪審員として集まって一つの事件について無罪か有罪かを話し合っていきます。ここでのポイントは「それぞれの『職業』という強制力を伴う設定」を持った人々が「陪審員」という「さらに強制力を伴う設定」を帯びて、ある意味「しょうがなく」、人によっては「嫌々ながら」集まっているという点です。そんな大人たちが、他人のこと(事件)について真剣に議論するというのがこの作品の面白さなのです。

 『こち亀』の両さんなんかもそうです。作中で毎回とんでもないトラブルを引き起こす両さんですが、彼が「警察官」という「強制力を伴う設定」を持っているから自然に描けるし、ギャップによって面白さがでるのです。両さんが警察官じゃなかったら、なんとも味気ない話になってしまうに違いありません。

 大人気漫画『ワンピース』なんかも、主人公ルフィは「海賊」という職業(?)をやっています。だからこそ、宝物を見つけるために旅に出たり、行く手を阻む敵と戦ったりするのです。時には危険を顧みず仲間のために行動したりもします。これは彼が「海賊」だからであり、他のメンバーが同じ海賊団に所属している仲間だからなのです。

     

「強制力」といっても、「嫌々」というわけではない

さて、微妙なところなのですが間違ってはいけないのは、強制力が伴うからといって「必ずしも嫌々ながらやらなくてはいけない」というわけではありません。好きなことでも、それをするためにはやらなければいけないことというのがあります。例えば車でドライブに行くのが何よりも好きだという人がいたとします。でも遠くにドライブするためには「車を点検」したり、「車両を整備」したりしなくてはいけません。「ガソリンやオイルも補充」しなくてはいけません。それと同じなのです。

「やらなければいけない」というのは「ごく自然な行動の理由・動機」として捉えてください。

    

「絶体絶命の危機的状況」や「極限状態」、「切羽詰った状態」になれば否が応でも動く

強制力を生む最も直接的で即効性のある手段としては「命の危険が迫っていたり、何らかの重大な結果をもたらす事態に陥っている状況」にキャラクターを入れ込むことです。こうすると当事者のキャラクターは否が応でも動き出します。

さらに、時間に間に合わない、いついつまでにこれをしなければいけない等の時間制限の要素「タイムサスペンス」がある場合は、さらにキャラクターが動かなければいけない理由は強固なものになります。たとえば、エレベーターの故障で中に閉じ込められてしまうなどの状況です。中に閉じ込められた人物は脱出しようと必死に行動するのです。

 何時までに「そこに行かなければいけない」「それをしなければいけない」などの状況を作ってみましょう。

   

◇③「キャラを動かしてくれる人物」を登場させよう!

「キャラを動かしてくれる人物」のつくりかた

最後に、主人公が消極的だったり動きたがらない性格だったり、必然性を持った設定を何も持っていない場合、どうやって動かしていくかということなのですが、その場合は他のキャラを登場させてそのキャラに「大きな目標」や「強制力を伴う設定、状況」を付与してやるようにしましょう。そして、そのキャラと主人公を絡ませるのです。一緒に行動するようにさせましょう。二人の関係は何でも構いません。恋人でも、会社の同僚でも、家族でも兄弟でも、店員と客でも相棒でも、たまたま居合わせたでも何でも構いません。ポイントは利害関係を一致、または対立させるという点です。利害が一致しているならば、たとえ敵対する者同士でも人は行動を共にします(呉越同舟)。または利害が対立していれば「競い合う関係」が生まれ、キャラは競争するようにして動き出していきます。

ではそのキャラを動かしてくれる人物はどんな人物であるべきでしょうか。以下のような人物が「キャラを動かして」くれます。

●「積極性」があり、グイグイ引っぱってくれる人物
●または主人公と「対立」もしくは「敵対」する人物

積極性のある人物と一緒に行動すれば、否が応でも動いてくれます。積極性のある人物が目標の達成のために引っぱっていってくれる、あるいは巻き込んでいくからです。動かしてくれる人物側に「大きな目標」「強制力のある設定」を付けましょう。『涼宮ハルヒの憂鬱』の「ハルヒ」と「キョン」などはその好例です。

 対立する人物と一緒にいてもキャラは動いてくれます。主人公と組む人物は性格や価値観などを反対にして絶えず何らかの対立や意見の違いが生れるようにしましょう。これは『らんま1/2』の「らんま」と「あかね」がいい例です。対立してるのに、お互い相手のことが気になっている(恋愛感情がある)というのがポイントです。

 敵対する人物を登場させてもキャラクターはとたんに動き出してくれます。これも『らんま1/2』から例を引くと「らんま」と「九能先輩」、または「らんま」と「良牙」などです。敵対関係となる人物を登場させ、しかもその敵対関係にもう一つ違った人間関係(たとえば恋愛関係とか秘密を共有する関係など)をプラスしてやると、さらに面白くなりどんどんキャラクターはひとりでに動いていってくれます。

   

◇「強制力を持った設定」をキャラクターにつけてみよう!

   

「強制力を持った設定」をつくってみる

では実際にみなさんの作品で、主人公やその他の登場人物にこの「強制力を伴う設定」を付けていきましょう。

一番手頃な方法は「職業」に就かせることです。職業に就いているということは、それだけでもう「やるべきこと・やらなければならないこと」が発生してきます。

高校生でも職業に就かせることは出来ます。高校生をやりながら探偵をしているとか、親の仕事を手伝っているとかなどです。またはアルバイトをさせてもいいですし、学業をやりながら職業に就かせてもかまいません。

しかし「学生」という設定だけだと漠然としすぎていて、何かをしなければいけないという状況を作るのが難しく「強制力」があまり働きません。やはり学生という身分に加えてなんらかの「強制力を伴う設定」を帯びている必要が出てきます。学生ということなら「部活動」でもいいですし、「生徒会」でも「委員会」でもいいし、「塾、予備校」「ボランティア」なんかでもいいと思います。職業と呼んでいいのか不明ですが前述のハルヒのような「何らかの組織・サークル・同好会に所属していて、何らかの役目・使命を帯びている」というものでオッケーです。ポイントは「その設定に基づく動機・やらなければいけないことが発生するかどうか」です。

物語作品を作っていて「何か物足りないなあ」と感じたときは、ぜひキャラクターが「強制力を伴う設定」を持っているかどうか確かめてみてください。もし、持っていなければ「強制力を伴う設定」を付けてみましょう。

  


■ 物語がはじまってから「強制力を伴う設定」を持つ場合もある

「強制力を伴う設定」は物語がはじまってからそれを得るというパターンもあります。例えばどこかに就職するとか、どこかの組織に所属するとか、どこかの部活動に入部するとか、部活動を立ち上げるとか、物語の途中で「強制力を伴う設定」を得てもぜんぜん構いません。何か新しい環境に身を置くところから物語がはじまる場合はこのパターンが当てはまるかと思います。

具体例を示すと、宮崎駿監督のアニメ映画『千と千尋の神隠し』では、主人公「千尋」は物語のはじめで不思議な世界に迷い込んでしまい、豚にされてしまった両親を救うためにその世界で「神様たちが利用する湯治場(?)」に就職し、その仕事をはじめます。

 このように、はじめは「強制力を伴う設定」持っていなくても、物語途中で「強制力を伴う設定」を得ることができるのです。

   

◇強制力を持った設定は「誰かからの依頼」でつくろう!

   

「誰かから何かを頼まれる、依頼される」設定

 なにかに所属して何らかの務め・使命を受けるという以外では「誰かから何かを頼まれる」という状況を付けてやれば「強制力を持った設定」をつくれます。たとえば「誰かを探して欲しい」とか「何かをして欲しい」という「お使い」に分類される「やるべきこと」を与えられる場合です。これには何らかの依頼を受ける、ということも含みます。

 この場合のポイントは「何らかの依頼を受ける立場・状況にある」という設定をしておく点です。人物の状況・環境があまりに依頼と関係ないと、依頼を受けるという必然性や必要性がなくなってしまい、物語が盛り上がらなくなる原因となるので注意しましょう。

   

「依頼された設定」は、「規模が大きい」「長期間かかる」ものにしていこう!

この依頼されたり頼まれたりすること、キャラクターが持つ「やらなければいけない設定」は、「比較的規模の大きなもの」、そして「長いスパンをかけて達成されるもの」となります。『おいしんぼ』での「究極のメニュー作り」のようにです。短いスパンでは解決できない、だから「強制力を持った設定」となることができるのです。この点が「通常の問題や依頼」と異なる点です。そして、問題はそれとは別に(関連はしていても)起きる、またはその依頼が引き金となって、あるいはその依頼された設定を遂行していく過程で、途中で起きてきます。

……以上のような感じで、キャラクターに「やるべきこと、強制力を持った設定」を与えてみましょう。

参考:第5章 設定をつくろう!

■vol.48 「設定」は、「キャラが魅力的に見えるシーン」のためにある!

■vol.49 物語のもう一つの流れ、「謎の解明」

■vol.50 「同人誌」をつくろう!

■vol.51 主人公には「いちばんの才能」を持たせよう!

■vol.52 「特殊能力」の面白さは「制限要素の面白さ」である!

■vol.53 キャラクターの「目的」「目標」「動機」を設定しよう!

■vol.54 キャラクターが一番引き立つ「世界観」を設定しよう!

■vol.55 「組織」「職業」「部活」「家族」――人は何かに所属している

■vol.56 敵には敵の「都合」がある!

■vol.57 キャラクターや物語を引き立てる「道具・アイテム」をつくろう!

■vol.58 「制限」があったほうが物語を作りやすいって、ホント?

■vol.59 物語に「仕掛け」を施して、お客さんをアッといわせよう!

■vol.60 物語を盛り上げる方法と、キャラクターが勝手に動いてくれる設定

■vol.61 長編・短編のつくりかた どんな長さの作品でもお客さんを満足させる方法

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