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2011年10月 8日 (土)

■vol.61 長編・短編のつくりかた どんな長さの作品でもお客さんを満足させる方法

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◇物語の「長さ」を考えよう
    
 物語には長編・短編・ショート作品がある
   
物語作品には大きく分けて3~4種類の「作品の分量」の種別があります。
   
まずマンガ媒体では連載、長編、短編、ショート、4コママンガ(1本)があります。
   
デビューをするためには「短編の読み切り(その1本で話が完結している)作品」が求められます。ページの制限は賞によって違い(だいたい24Pぐらいから50P前後)、ページ制限がない賞もあります。また4コママンガでもデビューできます。4コママンガは賞の規定の本数を描きます。
   
小説は長編(だいたい本1冊分)、短編、ショートショート(すごく短い)です。シリーズものになりますと10巻20巻と、長い巻数に渡って物語が続いていきます。
  
小説媒体でデビューするには必ず「長編小説」が求められます。短編でデビューする人はまずいません。ただ、短編をいくつも作って連作の形で長編の体裁に整えた作品は大丈夫な賞はあります。またショートショートのコンテストなどはあります。
   
アニメーションでは、30分番組(作品尺は20分)、劇場アニメーションでは1時間30分から2時間程度です。またTVシリーズでは毎回20分の作品が1クール(13回)から2クール(26回)続きます。デビューするにはこれといった規定はないのですが、シナリオコンテストの応募規定は30分ぐらいの作品というのが一般的です。
   
実写ドラマでは40分から1時間番組、2時間ドラマが一般的です。CMは15秒、30秒とあります。実写の映画作品では2時間前後が一般的になっていますが、短編映画などもあります。デビューするにはシナリオコンクールの応募規定に従った分量の作品を作る必要があります。映像のコンクールでは5分などの短い尺のコンクールも多くあります。
   
さて、これらの作品を制作・投稿するにあたっては、その賞の制限ページ数や時間尺に合わせた規模、内容の作品を作るように心がけなければいけません。そうでないと短いページ数で壮大なストーリーを語るといった無理が生じてしまい、結果作品が破綻してしまいかねないからです。では、その作品の内容を分量に合わせていくにはどうすればいいのでしょうか。
  
   
◇作品の「長さ」に合ったストーリーを考えよう!
   
 作品の「長さ」に合うストーリーの作り方
   
物語を考える上で重要なポイントの一つは「作品の分量(ページ数・時間尺)に合うスケールの物語を作る」という点です。
   
エンタメ系作品の場合、発表する媒体や賞の都合上作品の分量にあらかじめ制限があることが多くあります。ある一定の分量内に物語を収めなくてはいけないことがほとんどです。その場合「作品の分量に合った物語」を考えていくことがとても重要になってきます。物語の舞台の大きさ、ストーリーの長さ、内容を分量に合ったものにするのです。
   
例えばマンガ作品などで200ページとか300ページぐらいの分量があれば「国の平和を取り戻す」とか「世界を救う」くらいの物語は描けます。やりようによっては「宇宙の平和を取り戻す」くらいのこともできるかもしれません。しかし、これが16ページであった場合は、とてもじゃないけど「世界を救う」ことはできません。明らかにページ数が足りないのです。宇宙の平和を取り戻すなど夢のまた夢、せいぜい町内とか地域の平和ぐらいしか取り戻せません。逆に「ウサギと亀が競争して亀が勝った」というぐらいの小さい規模のストーリーを200ページも300ページもかけて描いていたのでは、読んでる方も描いてる方も途中で退屈してしまいます。これだけのページ数があればウサギと亀が宇宙戦争をするくらいの物語は書けそうです。
   
 このように作品の分量に合わせて、長編向きなのか、短編向きなのか、もっと短いショートショート向きなのかということを考えながらストーリーを考えていきましょう。
   
    
ストーリーにはおもに「長い話」と「短い話」の2つの種類がある
   
 物語には大きく分けて2つの種類があります。それは「長い話」と「短い話」の二つです。ストーリーを考える際はこの二つを「分けて考えていく」ことがポイントになります。
    
 「長い話」というのは、作中で登場人物たちが「成し遂げるべきことが壮大なもの」をいいます。たとえば世界の平和を取り戻すとか、全世界を統一するとか、オリンピックで金メダルを取るとか、長い旅をして目的地に着くといった、成し遂げるのに長期間かかるもの、イコールたくさんのページ数を必要とする種類のストーリーのことです。この種のストーリーは連載作品や長編作品などに向いています。短編ではこの種の長い話を作らないように注意しましょう。
   
 「短い話」とは、登場人物が物語の中で比較的短期間で目的を成し遂げることができる内容のものを描いたストーリーです。こちらは少ないページ数で表現することができますので、当然ながら短編作品に向いています。
  
   
「長い話」も「短い話」も同じ感動を生み出すことができる
   
 「長い話」は大掛かりで壮大な内容を描け、長期間にわたるストーリー、広大な舞台背景を持つ作品に向いています。「短い話」は限定された、身近な、小さな範囲でのストーリーに向いています。内容も大戦争とか派手な大事件とかではなく、日常的なものや恋愛ものなどが向いています。では、「長い話」は壮大なスケールの物語を描きやすく、「短い話」は小規模な話しか描けない、不利じゃないかと思われた方もいらっしゃるかと思いますが、ここで再確認したいことは規模が大きいからといって感動や満足感も大きくなるわけではないということです。そうです、感動や満足感とストーリーの規模は必ずしも比例するわけではありません。
   
確かに壮大で大掛かりなストーリーやアクション大作などは作品が豪華に見えて、クライマックスなどで大きなカタルシスを得やすいです。また広大な舞台背景の中ではキャラクターが立ちやすいという利点があります。でも、人と人との出会いと別れや、男女の恋愛を丹念に描いた規模の小さいストーリーの作品でもカタルシスや感動を、規模の大きな物語と同じようにお客さんに得させることができます。
  
すごいCGやVFXを駆使して描かれたSF超大作が何だかつまらないという場合もありますし、日常を舞台にした予算もあまりかかっていない短編作品でメチャメチャ感動してしまう場合もあります。
   
壮大な話が必ずしも面白くなるわけでもなく、こじんまりとした小さな話であっても描き方では「大きな話」を越える感動をもたらすことも十分可能なのです。
   
それでは以下で、短編でも長編と同じように感動させる物語を作る方法を学んでいきましょう。
  
   
◇短編を作るときのコツ、山椒は小粒でもピリリと辛い!
    
 短編は長い人生の「一部」を切り取って見せよう!
   
長い話は壮大な内容、短い話はこじんまりした内容、これは向き不向きの話であって、たとえば大きな舞台でも短編はできますし、日常的な話を長編で描くことも普通にできます。
  
大切なのは描き方です。
   
具体的には、短編は「人生の中での一部分、短い出来事、小さなドラマをクローズアップして大きく取り上げる」ということです。
   
長い事件や出来事の一部分だけを切り取って、そこを取り上げて描いていくのです。大きな目標の達成ではなくて「小さな目標の達成」を取り上げていくのです。大きな目標達成の途中の一段階「小さな前進」を描いていくのです。そして、その小さなドラマ(目標の達成の過程で起こること)を大きく描写していくのです。
   
一つの方法として、たとえば「逆上がりができない小さな子が逆上がりをできるようになる」というストーリーだったら、その逆上がりができるようになるということがその子にとってどれだけ大きなことか、偉大なことなのか、ということを描いていくのです。いかに大きな努力をしてできるようになったかがわかるときに、お客さんは感動するのです。その子にとって逆上がりが出来るようになるということは、世界選手権で優勝することと同じぐらいの価値、重さがあることなのだと描いていくのです。苦難の度合いが大きいほど、達成できた時の喜びも大きくなるのです。
    
 別の例では、若い男女が出会って、交際を経てプロポーズ、結婚してゴールインします。出会いから結婚までを描こうと思ったらかなりの作品の長さが必要です。連載作品や連続ドラマで描写していく内容です。これを短編にする場合は「出会いから結婚までの過程の中で起こる様々な出来事・事件の一つをピックアップして描く」ということです。たとえば「はじめて出会ったところから交際が始まるまで」を描く、「二人で協力して何か問題を解決してお互いの良さがわかる」とか、「デート中ケンカして、お互いの大切さを再確認して仲直りするまで」を描く、「問題を乗り越えながらプロポーズするまで」を描くとか、「結婚式の一日」を描くといった具合です。要は交際期間中の全体を描くのではなく、一部、一つの出来事、エピソードを切り取るということです。
    
太平洋戦争を扱った作品は多くの媒体でたくさんありますが、岡本喜八監督の超名作『日本の一番長い日』という劇場作品は「太平洋戦争の最後の一日、終戦の日一日だけ」をピックアップして描いた作品です。戦争が終わる、戦争を終わらせる、というときに起こった様々なドラマを描いた名作です。モノクロの古い映画ですが、ぜひ今の若い人たちに観て欲しい作品です。戦争映画というジャンルの作品を作る上で、ああ、こんな作り方、やりかたがあったのかと思わず感心してしまうでしょう。
    
この映画はカット割りやテンポ、レイアウトなども優れた作品です。映像関係を目指している方は観ておいた方がいいと思います。
   
    
◇「変化」を描写しよう!
    
■ 短編の作り方「長い旅の中のとある一日」
    
 短編の物語を考えるときは、まず「旅の目的」を決め、「その目的の達成を目指して主人公が旅をしている」という状況を作ります。この「旅」に該当するものは「部活」でも「バイト」でも「恋愛」でも何でも構いません。要は「目指す目的」と「状況」を設定します。
     
次に、その「旅」の中での「とある一日」、もしくは「数日間」という短い時間をピックアップします。そして、そこで起こる出来事・事件を描いていくようにします。
    
その際、大事なポイントは「物語のはじめと終わりで、何かが変化する」という点です。この「変化」がなければ物語は中途半端なもの、描くべき価値のないものになってしまいます。そして、この変化は「状況の変化」と「キャラクターに関する変化」の両方であることが望ましいです。例えばキャラクターに関する変化であれば、トラウマを克服するとか、ケンカしてた同士がちょとだけ和解するとか、過去のしがらみを断ち切るなどの「心の成長・変化」です。状況の変化は、まあいろいろ、悪いヤツの支配が終わるとか、秘密が明らかになるなどどんな変化でもかまいません。
    
短い物語でもしっかりとした物語を作り、お客さんに満足と感動を与えるにはこの状況とキャラクターの「変化」をしっかりと描いていくようにしましょう。
  
   
◇短編も長編も、「構成」は同じ!
    
 短編こそ「しっかりした構成」を!
    
 第4章で「物語の構成」を学びました。これはいわば「お客さんに満足感を与えるための仕掛け」なのです。「のっけにインパクトのある出来事があり→状況・背景の説明・キャラ立てをし→事件が起こり→問題が発生し→悪化→キャラクターが窮地に陥った後に大逆転して→問題が解決する」、「キャラクターの心が変化し、状況も変化する」というこれらの展開は「お客さんを物語に引き込み、ハラハラドキドキさせ、最後にカタルシスを与え、感動を与える」ものになっています。この「構成」は、問題発生→悪化→危機に陥り→一気に解決という「抑圧」と「解放」という流れを描いています。この抑圧と解放がお客さんに満足感をもたらし、キャラクターの心の変化がお客さんに感動をもたらすのです。
    
エンタメ系作品は基本的にこの構成の流れを大きく外れると作品がうまくいかない場合が多くなります。逆に多少はっちゃけた、とんがった設定の作品でも、作品一本の中にこの構成があれば必ずお客さんに一定の満足感と感動を与えることができます。
    
そして最も大事なことは、この構成は基本的に「長編」でも「短編」でも「全く同じ」だということです。
    
長編の場合は「全体で一つの大きな構成」になるか、「この構成が長いスパンの中で連続して複数回起こっていく」かのどちらかになります。
    
短編の場合は、たとえページ数が短くてもこの「構成の流れがすべて入って」きます。短編はページ数が短いので、いろいろな部分を長編と同じようにじっくり描写できない場合もありますが、それでもこの基本的な展開の流れの構造は保たれたまま「省略・短縮」していきます。
    
満足感と感動を生み出すのに、物語の長い短いは関係ありません。この「構成」通りに物語が展開しているかどうか、作品にこの構成が存在しているかどうかなのです。
   
   
◇短編こそ「はじめが肝心」!

 短編のはじまり方
    
 短編でページ数が少ない場合のファーストシーンは、もう第1幕ラストの「きっかけの事件」から始まっちゃうようにしましょう。で、事件を進展させながら人物設定と状況説明、キャラの目的を同時に描いていきましょう。
   
また、短編こそ「人物の生活の変化・転換点」から始めるのがやりやすいです。新鮮な感じが出るし、物語に入りやすいという利点があります。短編は「出会い」「入学(進学)・進級」「事件」「新しい場所に到着する」など、これから新しいことが始まるという内容からはじめてみると作りやすいでしょう。
  

 短い作品をたくさん作ってみよう
   
とくに物語作りに慣れないうちは大きな舞台の作品ではなく、小さな舞台の作品、短いドラマの作品をたくさん作ってみてください。
   
 漫画であれば1Pや4P、小説であれば短編を作ってみましょう。1エピソードでも構いません。4コママンガでもいいです。1つの短いドラマ、ちょっとした出来事を物語にしてみるのです。短い中でもしっかりと起承転結を描くのです。これは非常に勉強になります。
   
インターネットなどでも日替わりで1Pマンガを公開しているサイトなどがあります。こういったサイトをのぞいて、短い物語の構成方法を肌で感じてみてください。短いながらも起伏があり、緩急があり、起承転結があり、しっかりオチまでついています。
    
 ぜひこういった短いドラマの話を作ってみてください。必ずや皆さんの力となってくれるでしょう。なぜなら長い話は短いドラマ、エピソードが連なったものだからなのです。

参考:第5章 設定をつくろう!

■vol.48 「設定」は、「キャラが魅力的に見えるシーン」のためにある!

■vol.49 物語のもう一つの流れ、「謎の解明」

■vol.50 「同人誌」をつくろう!

■vol.51 主人公には「いちばんの才能」を持たせよう!

■vol.52 「特殊能力」の面白さは「制限要素の面白さ」である!

■vol.53 キャラクターの「目的」「目標」「動機」を設定しよう!

■vol.54 キャラクターが一番引き立つ「世界観」を設定しよう!

■vol.55 「組織」「職業」「部活」「家族」――人は何かに所属している

■vol.56 敵には敵の「都合」がある!

■vol.57 キャラクターや物語を引き立てる「道具・アイテム」をつくろう!

■vol.58 「制限」があったほうが物語を作りやすいって、ホント?

■vol.59 物語に「仕掛け」を施して、お客さんをアッといわせよう!

■vol.60 物語を盛り上げる方法と、キャラクターが勝手に動いてくれる設定

■vol.61 長編・短編のつくりかた どんな長さの作品でもお客さんを満足させる方法

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