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2011年10月22日 (土)

■vol.62 お客さんにページをめくらせ続ける 「面白い物語」の作り方

0062

 

◇面白い物語をつくろう!

  

 物語の面白さを生み出すもの

面白い物語をつくるためにこれまで様々な方法論を学んできました。その根本は「キャラクター」「ストーリー」「設定」です。そしてこの三つはキャラクターを中心にして繋がっており、すべてはキャラクターを魅力的に描くための要素なのです。そのために事件が起こり、そのためにお客さんを退屈させない構成・ペース配分を作ります。すべてはキャラクターのため、キャラクターが魅力的に見えれば物語は必ず成功します。

さて、それを踏まえたうえで今回、取り上げていきたいことは「物語作品」としての面白さ、お客さんがドンドンページをめくり、常に興味を保ち、最後まで見続けてくれるためにはどうすればいいかについてです。ある意味これは、面白い物語を作る上で、最も基本的なことであり、最も大事なことになります。では、学んでいきましょう。(長い前振りだ~)

   

◇お客さんにページをめくらせるためには?

  

■ お客さんが物語を読むのを止める「二つの原因」

お客さんが物語を読んでいて、途中で読むのをやめる、観るのをやめてしまうことが往々にしてあります。この、お客さんが物語作品を読むのを途中でやめてしまう原因は大きく分けて二つあります。

一つは「構成」で失敗してしまっているケースです。キャラもストーリーもいいんだけど、ページ配分・時間配分や展開のさせかたを誤ってしまうというものです。これについては『第4章「構成」を組み立てよう』を参照してください。

もう一つの原因はずばり、『「この後どうなるんだろう?」というストーリーの先(結末)が気になる要素がない、あるいは足らない』というものです。

   

 「先が気になる」設定要素を作品に持たせよう!

すべての物語作品の作り手の願いは「お客さんに終わりまでページをめくり続けてほしい、見続けてほしい」というものです。どうすればお客さんにページをめくらせ続けることができるのでしょうか。

お客さんが「ページをめくる・見続ける」という行為の源には「先が見たい、続きがみたい、結末を知りたい」という欲求があります。つまり、お客さんは物語の先が見たいからページをめくり、その結果を知ろうとして見続けるのです。ということは、お客さんにページをめくり続けてもらうには、お客さんに「先が気になる要素」を提供して、お客さんの興味を持続すればいいということになります。作品を読んで、あるいは観ていて「面白い」と感じる場合は、大抵この「もっと先が読みたい」という気持ちを感じていることがほとんどです。面白さは「キャラクター」「ストーリー」「設定」が作り出します。つまり、お客さんは「このキャラクターが、この設定の中で、どうなっちゃうのかというストーリー」が見たいと望んでいるのです。

 さて、以前に物語のファーストシーンで「先が気になる要素」を描いていくことは学びましたが、ここでは物語本編で「先が気になる要素」を描いていくにはどうすればいいかを学んでいきたいと思います。

   

◇物語本編で先が気になる要素を描くときの「2つのパターン」

   

■ 本編での「先が気になる」要素の描き方

 物語本編で「先が気になる要素」を描く場合には、2通りのパターンがあります。それは、

●一つの、全体を貫く「大きな先が気になる要素」
●連続して起こる「小さな先が気になる要素」

 ……の二つです。

まず、物語本編を貫く「『大きな』先が気になる要素」を描く場合です。これは物語の序盤、初段で「先が気になる要素」が提示され、その真相が明かされるのは物語の終盤、もしくはラストになります。こうすると、お客さんはその「先が気になる要素」の真相を知るために物語の最後までページをめくって言いってくれるのです。

 もう一つのパターンは「『小さな』先が気になる要素」を物語全編を通じて連続して複数提示していくというものです。これはその都度その都度何らかの「先が気になる」展開が提示され、比較的すぐにその結果が明かされるというやり方です。このパターンの利点は、常にお客さんを「先が気になる」という心理状態に置くことができるところです。いわゆる「一難去ってまた一難」というやつです。次から次へと苦難や危機や問題が襲ってきて、それをその都度解決していくことでお客さんの興味を釘付けに出来るのです。このように定期的に「先が気になる展開」が物語に登場すればお客さんは決してダレないのです。

■ 2つのパターンを同時に使え!

 この2つのパターンは、2つを同時に使っていくことで、決してお客さんを飽きさせることなく物語の最後までお客さんに観ていってもらうことが可能となります。つまり、物語全体を貫く「どうなるんだろうと先が気になる要素」が一本横たわっていて、さらにその都度その都度、連続的・定期的・継続的に「先が気になる展開」が表れていくのです。

こうすると、連続して起こる「気になる展開」がもし飽きられてしまったり途切れてしまったりした場合でも、全体を貫く「気になる要素」が気になるのでお客さんはページをめくってくれますし、逆に「全体を貫く気になる要素」がありきたりになってしまっても、個々の気になる展開を頻発させていけばやはり最後まで読んでもらえるのです。

     

◇「先が気になる」をつくる3要素

   

 3種類の「先が気になる要素」を取り入れよう!

お客さんにページをめくり続け、作品を鑑賞し続けてもらうには、お客さんが興味を持つような先が気になる内容を物語内で提供し続け、刺激を与え続けて興味を持続させていけばよいということがわかりました。では、お客さんの興味を引く要素は具体的にどんなものがあるでしょうか。

物語で「先が気になる」とお客さんに思わせる要素は大きく分けて次の3種類です。

◎「ハラハラ、ドキドキ、この後どうなるんだろう?」
◎「アッと驚く!」
◎「知りたい!」

これらの気になる要素の結末や真相を知りたくて、そのためにお客さんは物語の先を読んでみようと思ってページをめくってくれます。

ですから、これらの3つの「先が気になる要素」を作品の中に取り入れていくことによって、よりお客さんにページをめくってもらえる割合を高くしていくことができるのです。それでは、これら3つの「先が気になる要素」を詳しく分析していきましょう。

    

◇「ハラハラ、ドキドキ」のつくりかた

   

 「ハラハラ、ドキドキ、どうなるんだろう?」ストーリーの先、結果が気になる!

 では、3つの「先が気になる要素」のうちの一つ、「ハラハラ、ドキドキ」を生み出す方法を見ていきましょう。

ハラハラ、ドキドキ、これはお客さんが「この後どうなるんだろう?」とストーリーの展開の先、結果が気になるという気持ちなのです。この気持ちをお客さんに抱かせるためには「ストーリーの展開」において次の「3つの内容」を描いていきましょう。

①「成否」(うまくいくかどうか)
②「不幸」(キャラクターが不幸に見舞われる)
③「葛藤」(難しい選択・決断に悩む)

この3つの要素がお客さんに「ハラハラドキドキ、どうなるんだろう」という思いを抱かせます。

  

①うまくいくかどうか、事の「成否」でお客さんをハラハラさせよう!

■ 「失敗するかも!」と思わせよう!

物事がうまくいくかどうか、キャラクターの行動が成功するか失敗するかという「事の成否」を描くことでお客さんをハラハラドキドキさせることができます。

お客さんは主人公のやることは大概成功するとわかっていても「失敗の可能性がある」ということを描いていけば、ハラハラドキドキして、どうなるのか結果を知ろうとして物語を読んでくれます。

   

 ハラドキのポイントは「感情移入」「失敗した時のリスクの高さ」「報酬」

お客さんをハラハラ、ドキドキさせるさせる2つのポイントがあります。それは「感情移入」と「失敗した時のリスク」と「報酬」です。

たとえば「綱渡り」です。綱渡りがハラハラドキドキするのは、高いところを綱一本でわたっていて「落ちたら命を失う」というリスクがあるからです。

これをもっとハラハラドキドキさせるには、まず渡っている人が観ている人にとって「大切な人」、たとえば恋人とか兄弟などの、より感情移入できる人物にするとよりハラハラします。

また、渡る高さも、低いなら危険もなくぜんぜんドキドキしないですが、高ければ高いほど、落ちた時の「危険・リスク」が高いほどハラハラドキドキします。失敗すれば家族の命がないなどの更なるリスクを加えてもハラドキが増します。

さらに「渡りきれば借金が帳消しになる」とか「結婚の許しをもらえる」などの「成功した時の報酬」があるとハラハラドキドキはもっと増えていくでしょう。

落ちるかもしれない、渡り切れるかどうか、渡れなかったら大変なことに……という要素がハラドキを生んでいくのです。

ということで、綱渡りの例からもわかるように、お客さんがハラハラ、ドキドキするのはそのキャラクターに感情移入しているからです。キャラクターに感情移入しているとき、お客さんはキャラクターを自分のことのように考え、また心から応援します。キャラクターが行うことがうまくいって欲しいと心底思うようになります。また失敗したら大変なことになる(綱渡りでは命を失う)という状況があれば、さらに心配して、成否の結果が気になります。そして、成功すればこんないいことがあるという報酬があれば、何とかうまくいって欲しいという気持ちに火がつき、事の成り行きを最後まで見届けたいという強い気持ちをお客さんに起こさせるのです。

    

②「不幸」な目に合わせよう!

  

「他人の不幸は蜜の味」! キャラクターを「不幸な目」に遭わせよう!

前にも書きましたが、ぶっちゃけてしまうとお客さんは「キャラクターの笑顔」が見たいのではなく「キャラクターが不幸な目に遭い、苦しむ様子」を見たいのです。お客さんはキャラクターが幸せになるよりも不幸になる方に興味を示すのです。ですからキャラクターが不幸な目に遭うと「ああ、この後このキャラはどうなっちゃうんだろう?」と思って見てくれます。それでいてお客さんは「最終的にはハッピーエンドになってほしい」という要求もあるのです。

つまり、物語の中間は「キャラクターを襲う不幸」を見せてやり、物語のラストで「解決・幸福」を描いていくのです。

    

 「障害」や「サブプロット」に不幸を絡めよう!

もう少し詳しくいうと、第二幕でキャラクターを「何らかの不幸な状態」に持っていくのです。その際には第二幕の「障害」に不幸を絡めていく、サブプロットに絡めていくとやりやすいかと思います。「障害=不幸」、もしくは「障害が原因で不幸になる」といった具合です。物語では大体の場合において事件があって問題が発生します。で、それによってキャラクターは何らかの不幸な状態に陥っていくわけなのですが、ポイントは「その悪い状態を回復・解決しようと一生懸命もがいている主人公に「『更なる不幸』が襲いかかる」というところです。

映画『バックトゥザフューチャー』では主人公はタイムマシンで過去に行ってしまい、帰りの燃料がなくて元の時代に戻れなくなります。で、何とか方法が見つかって戻るためにいろいろ行動していく中で、なんと主人公の母親が父親を好きになるのではなく「主人公を好きに」なってしまうという事態が発生ます。もちろん母親と父親が結婚しなければ主人公は生れず、その存在は消えてしまいます。これは先が気になりますよね~。

……このように障害やサブプロットに不幸を絡め、不幸に不幸を重ねていきましょう。

    

 様々な「不幸」の種類

さて、具体的に不幸な目とはだいたい次のようなものが挙げられます。

「命の危機」
「事故」
「病気」
「アクシデント」
「失敗・うまくいかない」
「挫折・転落」
「ピンチ(窮地に陥る、絶体絶命)」
「人間関係の悪化、または破綻」
「恋愛関係における関係悪化、誤解を受ける、ケンカ、裏切り」
「喪失(地位、財産、住居、職業、身体、その他など)」
「秘密がバレる」
「望まない状態に陥る・堕落」
「親しい人物・大切な人物の病気・死」
「絶望」
「大切なものと引き換えの交換条件」
「タイムサスペンス(時間制限)」

……などなどです。

一つひとつ見てみましょう。。

まずは「命が危険にさらされる」場合です。アクション物とか冒険物とかで主人公の命が危ない! という危機的状況になると「どうなっちゃうんだろう!」と思います。

同じように「主人公や周囲の人物が危険にさらされる、事故に遭う、病気になる、あるいは病気が発覚する、倒れて病院に運ばれる、入院する」などの要素を入れることによってお客さんに「先が見たい」と思わせることができます。昼メロドラマなどは必ず金曜日の放送のラストで「誰かが倒れたり、入院したり」します。なぜなら土曜・日曜は放送がないので月曜日になっても「先が気になる」というお客さんの興味を持続させて放送を観てもらうためです。

「アクシデント」でもお客さんの興味を引けます。アクシデントは「予期せぬ突発的な不可抗力の不幸」です。たとえば剣で敵と戦っていたら剣が折れてしまったとか、デートの場所に急いでいたら車のタイヤがパンクしてしまった、といったような展開です。こういった目に主人公を陥れて「どうなるんだろう、先が気になる」という状況を作り出していきましょう。

もう一つは「失敗」です。こちらは自分が原因の場合です。そして継続的な失敗、状況が進展しない・改善しない・悪化しているなどが「うまくいかない」状況です。不可抗力でも自分が原因でも、突発的でも継続的でも、大切なのはそれによって主人公が不幸な目に遭い、立ち行かなくなり、「ピンチ」「窮地」「絶体絶命」の状況に陥ってしまうということです。

「人間関係の悪化」もお客さんの興味を引きます。とくに「親しい間柄の者同士」の関係悪化・破綻・絶縁・対立・敵対という状況がお客さんの最も強い興味を生みます。さらに大きく興味を引くのが「恋愛関係」にある者同士の場合です。「誤解を受けるようなことをされる、見てしまう」「ケンカ」「浮気」「他に好きな人ができた」「奥さんと子供がいた」「二股掛けられていた」「だまされた」「裏切り」「暴力」「結婚詐欺」(ああ、書いてて嫌になってきた……)といった要素を描くとお客さんを引きつけることができます。

また、恋愛関係でいえば「好き合っているのに二人が引き裂かれる」というパターンもあります。「親が決めた結婚相手と無理やり結婚させられる」とか「(外国など遠方に」引っ越しする」とかです。

何かを「喪失」するということでも不幸になります。地位、財産などの所有物、勤め先、職業、家族(伴侶・兄弟・娘・息子ほか)、親友、恋人、身体や能力などを失ってしまうというものです。健康や安全の喪失もあります。事故や病気、死などで親しい人物・恋人を失っても興味を引けます。

喪失ということでは、旧約聖書で最も有名な物語の一つでもある「ヨブの物語」があります。ヨブは正しい人間で、神から祝福を受け、多くの財産・家畜・子孫・地位に恵まれます。しかし、悪魔がやってきて神に向かって「ヨブは恵まれているから神に従っているのだ。財産が全部なくなれば神に従わなくなるはずだ」といいます。神は悪魔に『ヨブの信仰を試す許可』を与えます。悪魔はヨブの家族の命をことごとく奪い、財産、家畜、社会的地位、そして健康をも奪っていきます。さらにヨブは最愛の妻や親友たちから「おまえは罪を犯したから罰を受けたのだ」という誤った批判を浴びせられ名誉も自尊心も失い、身も心もずたずたにされてしまいます。しかし、ヨブはそんな状態でも神への信仰を失わず、「神が自分を殺されても神を信じる!」という強固な信仰を示した彼は、神に認められて以前に持っていたもの以上の財産や家畜、子孫を神からの祝福として得ます。

この物語を物語的視点でながめてみると、次々とヨブを襲う不幸に読者の目は釘付けになっていくという構造が発見できます。

また「何らかの秘密がバレる」ことでもキャラが窮地に陥ったり、人間関係を悪化・破綻させ不幸にすることができます。ポイントは「秘密がバレると何かを失ったり、人間関係が破綻してしまう」というように設定することです。また「秘密を隠している」という状況で「いつバレてしまうか」という不安とドキドキの中で物語を描いていくことによって緊張感を持たせ、先が気になる要素を作り出すことができます。

「望まない状態」に陥るというものは、どちらかというと自分の罪、悪い行いが原因でそういう状態に堕ちていくというもの、要するに「堕落」です。たとえば借金で多重債務を負うとか、婚前交渉の末に妊娠し、望まない相手と結婚をするとか、怒りにまかせて人を殺める、などです。悪い行いの結果、悪い状況に堕ちていく、そんな内容でもお客さんの興味は引けるのです。

「絶望」は望みを失ってしまう状態です。不幸な目に遭っても気持ちの面で強ければやがてその状態を乗り越えられますが、気持ち・精神面で力を失ってしまうと人間立ち直ることは難しくなります。

ただ、絶望の底までいかなければわからないこと、気づかないことはあります。家族を失ってみて家族の大切さを思い知る、とかです。

「大切なものとの交換条件」とは、これを達成・成功しなければ自分の大切な何かを失う、という状態になることです。戦いに勝たなければ息子が殺されるとか、ホームランを打ったら手術を受けるとファンの子と約束したとかです。『走れメロス』では主人公が城に戻らなければ親友が処刑されるという状況があります。

これは「失うものが大きければ大きいほど、失敗した時のリスクが大きければ大きいほど」危機感が煽られ物語としては盛り上がります。

交換条件に関連するものとしては「タイムサスペンス」があります。これは「いつまでに○○をしなければいけない、そうしないと大切なものを失う」という「制限時間」「期限」が設けられている場合です。時効までに犯人を見つけなければ犯人の罪が問えなくなるとか、何時間以内に輸血しなければ命が危ないとか、何時までに行かないと遅刻してしまう、大事な書類が会議に間に合わない、後何分以内に爆弾を処理しなければ爆発してしまう……などです。「何時までに」という時間制限・期限を設けることによって不幸になってしまうかもしれないという状況をよりスリリングで、緊迫したものにすることができます。「間に合うかどうか」という要素は最後までお客さんの「先が見たい」という気持ちを持続させ、ページをめくらせてくれるでしょう。

     

■ 「山高ければ谷深し」、「悪いことが重なる」

不幸を描く際には「山高ければ谷深し」ということを覚えておきましょう。高い所にいるほど落ちた時の衝撃は強くなります。転落の落差、つまり幸福であればあるほど不幸に陥った時のダメージが大きい=お客さんの興味をより引くことが出来る、ということです。

また「悪いことが重なる」ようにしましょう。悪いことが起きて「さらに悪いことが起きる」、「切羽詰ってるときにかぎってさらに切羽詰ったことが起きる」ものなのです。
    

「不幸」を取り入れる例

では、不幸を取り入れて「先が見たい」という気持ちを起こさせるような物語にする例を見ていきましょう。

 まずは基本形として次の物語を使うことにします。

ストーリーの基本形:「学校へ行く」

ただ「学校へ行く」では何の面白みもない物語です。お客さんは即読むのを止めます。では、これにいくつかの不幸の要素をくっつけてみます。

アクシデントを加味すると、

「学校へ行く途中で忘れ物に気づく」

これで、もしかしたら遅刻しちゃうかもという可能性が出てきます。ここで制限時間とリスクを明確にしてみます。

「あと30分で学校へ行かなければ停学になってしまうのに、途中で忘れ物に気づく」

 だいぶハラハラ感が出てきましたね。ではこれにさらに不幸を加えますと、

「あと30分で学校へ行かなければ停学になってしまうのに、途中で忘れ物に気づき、急いで家に帰るところで自転車がパンクし、その勢いで転んで右足を負傷してしまう」

 さあ、いよいよヤバくなってきましたね。この主人公、学校へ時間通りに着くのでしょうか。

では最後にきわめつけです。

「あと30分で学校へ行かなければ停学になってしまうのに、途中で忘れ物に気づき急いで家に帰るところで自転車がパンクし、その勢いで転んで右足を負傷したところにトラックが突っ込んできて主人公はひかれて、救急車で病院へ運ばれてしまう」

 さあ、どうですか。主人公は最終的に病院送りになってしまい、この後どうなるのか非常に気になります。こうなると自然とページがめくられていくかと思います。

……こんな風にして、何気ないプロットに不幸を加えていくことで「先が気になる物語」を作っていくことができるのです。

    

③「葛藤」させよう!

   

 「難しい選択をさせる状況」をつくろう!

   

以前にこの講座でもたびたび出てきた「葛藤」を描くことによっても、お客さんを「ハラハラ、ドキドキ」させることができます。

ここで少しおさらいしますと、葛藤とは「難しい選択で悩むこと」です。難しい選択とは「両方とも非常に大切なのに、どちらか一方しか選べない」という状況のことです。

葛藤はお客さんの興味を引くのにかなり有効な手段です。なぜかというと、主人公は作中で選ぶことが困難な2つのもののうち、どちらか一方を選らばなければならないからです。どちらを選んでも「もう片方を失う」という悲惨な状況があります。ですからお客さんは「キャラクターがどちらを選ぶのか」「その結果どうなるのか」を見たいと思いページをめくるのです。主人公の「選択とその結果」が見たいのです。

葛藤に関しては第11課『「葛藤」をつくってみよう!』で取り上げています。葛藤の種類、葛藤の状況のつくりかたについてなど、詳しいことはそちらを参照してください。

    

◇お客さんが「アッと驚く」ようなことを物語に登場させよう!

    

 「びっくりするようなこと」を登場させよう!

物語において、お客さんに「先が気になる」状態をもたらす2つ目の要素は「驚き」です。

お客さんを驚かせる、お客さんが驚くような要素を描いていくことによってお客さんはページをめくっていってくれます。この要素を取り入れるにはお客さんがびっくりするようなもの・出来事・展開を作中で出していくことが大切になってきます。

    

■ びっくりするようなもの

すべての事柄においてびっくりするようなものを出すというわけではないのですが、ポイントポイントでここぞ! というときにお客さんの驚くような要素を登場させましょう。びっくりするような要素はあらゆるものに適応させることができます。

一例としては、

「びっくりするような性格の人物」が「ビックリするような形で登場」する
「びっくりするような出来事が起こる」
「びっくりするような行動をとる」
「びっくりするようなことをいう」
「びっくりするような能力を使う」
「びっくりするような場所に行く」
「びっくりするような文化・風習・習慣」
「びっくりするような本心」
「びっくりするような敵とその能力」
「びっくりするような正体」
「能あるタカは爪を隠すパターン」

……このように、あらゆるシーンでお客さんの驚く「びっくり」するようなものを登場させることができます。

    

■ びっくりとは「裏切り」と、「常識・普通からいかに外れているか」ということ

    

さて、では「びっくりするようなもの」を具体的にどういうものにするのかを考えていきましょう。お客さんはどんなものにびっくりするのでしょうか。

びっくり・驚きとは、お客さんの「予想を裏切ったとき」と、「常識・普通だと思うこと」を覆したときに起こります。普通では考えられない「状況」「状態」「人物」「行動」「考え」「規模」が出現したときにお客さんは驚くのです。アイスを買って当たりが出たくらいでは驚きませんが、宝くじで3億円が当たったら驚きます。転校生が普通の子だったら何も驚きませんが、転校生が土佐犬を連れて教室に入ってきたら驚きますよね。「状況」「状態」「人物」「行動」「考え」「規模」を異常・極端にすることによって「驚き」を生み出していくことができるのです。そして驚くようなものが物語に登場するとき、お客さんはそれが何なのか興味を持ってくれてページをめくる手を早めていくのです。

     

◇お客さんが「知りたい!」と思うようなものを登場させよう!

     

謎・秘密・不明な要素を登場させて、お客さんの知的好奇心に働きかけよう!

物語において「先が気になる」二つ目の要素は「知りたい!」とお客さんに思わせることです。そのためには「謎・秘密・不明な要素などの真相が気になる要素」を物語の中で描いていきましょう。

このことについては、第49課『「物語」のもう一つの流れ、謎の解明』をまず参照してください。その内容と合わせて、これ以降を読んでいただけたらと思います。

お客さんは知りたい要素が出てくると興味を持ってくれて、その真相・答えを知ろうとしてページをめくって作品を読み進め、見続けてくれます。

さて、これらの「謎・秘密・不明な要素」を取り入れる上で大きく2つのポイントがあります。

 そのポイントは、

①「興味」
②「疑問」

この2つです。

お客さんが「興味を持ちそうなこと」を作品に登場させ、お客さんが「疑問に思い、その答えを知りたい」と思うようなことを作品に登場させるのです。

この2つの要素が「謎」となり「秘密」「不明な要素」となるのです。

    

①お客さんが「興味」を持つようなものを作中に出そう!

   

お客さんが「興味」を持ちそうなものとは

お客さんが興味を持つようなものとは「お客さんが好奇心を示すようなもの」のことです。具体的には、お客さんが「何だろうと思うもの」「見たい、知りたい、聞きたい、行ってみたい、使ってみたい、乗ってみたい……」と思うようなものです。つまり「お客さんが持っていないもの、出会ったことのないもの、経験したことのないもの、珍しいもの・貴重なもの・変わったもの・特殊なもの・希少価値が高いもの」などにお客さんは興味を示し、それが何なのか、どんなものなのかを知ろうとしてページをめくってくれるのです。こういった要素を人物や異性、出来事、景色・場所、道具などいろいろなものに適用させて、お客さんの興味と好奇心を引きつけていきましょう。

   

お客さんの願望・欲求をくすぐろう!

このときポイントとなることは「お客さんの願望・欲望をくすぐるようなものを出す」ということです。

たとえば「あの店の看板娘はすごく可愛い!」「何でも願いをかなえてくれるツボ」「日本一まずいラーメン」……などを作中に登場させたとします。するとどうでしょうか。すごく可愛い看板娘っていわれたら見てみたいですよね。何でも願いをかなえてくれるツボ、あったら欲しいですよね。日本一「まずい」といわれたら怖いもの見たさで逆に興味がわきますよね。

このようにお客さんの願望や欲求に働きかけるようなものを登場させることによって、「興味」をより持ってもらいやすくなります。

    

②お客さんは「疑問」の答えを知ろうとする!

   

お客さんが「解明・探求」したいと思う「疑問・謎」を描いてページをめくらせよう!

物語の中でお客さんが「疑問に思うこと、何だろうと思う謎」を描くと、お客さんはそれが一体何なのか、真相はどうなっているのかを知りたいと思い、作品を読み進めてくれます。なぜなら人間には、自分にわからないこと・不明なことを知りたいという欲求、好奇心、探求の本能ともいうべきものが備わっているからなのです。

科学技術の進んだ現在でもまだまだ解明されていない謎は多くあります。宇宙の果てはどうなっているのか、宇宙人はいるのか、人間は死んだ後はどうなるのか……、人はそうした謎・疑問に興味を持ち、その答えを探そうとします。これはすべての人間が持っている感情です。これを物語作りに応用していくのです。つまりお客さんが「疑問・謎」に思うことを物語の中に出すことによって、その真相・答えを知ろうとするお客さんをずっと物語に引きつけていくことができるようになるのです。

     

疑問・謎のつくりかた①「正体がわからない『謎の人物』を出そう」

作中に正体不明の謎の登場人物を出すと、お客さんはその正体を知ろうとして物語を読み進めていってくれます。

名作『あしながおじさん』では「あしながおじさん」とは一体誰なのか、どんな人物なのかという読者の疑問・謎の探求心がページをめくらせます。

浦沢直樹氏の傑作マンガ『20世紀少年』では『カルト宗教団体の教祖「ともだち」の正体が誰なのか』という謎がコミックス第一巻で描かれ、その答えがコミックスの最終巻の物語のラストで明かされるという展開になっています。「ともだち」は主人公たちの子供時代に一緒に遊んでいた仲間しか知らない秘密のマークを知っています。つまり「ともだち」の正体は主人公と一緒に遊んでいた仲間のうちの誰かということになります。読者は「ともだち」の正体が知りたくて最後まで作品を読んでしまうのです。(もちろん作品の魅力はそれだけではありませんが)

アニメ映画『耳をすませば』では主人公が借りた本の図書カードに頻繁に出てくる「天沢聖司」という名前の人物が誰なのか、どんな人物なのか、という疑問が物語の冒頭で描かれています。主人公の「雫」はそれを調べながら物語が進んでいきます。そしてお客さんもその人物のことが気になり、作品を見続けてくれるのです。この作品は恋愛映画なのですが、この「天沢聖司は誰なのか、どんな人物なのか」という「疑問」によって、恋愛という話の流れに「推理もの」の楽しみがプラスされ、より多くのお客さんを引き込んでいくことがでるように作られています。この点からいっても宮崎駿氏は本当に上手いと思います。計算されてます。

ライトノベル小説で、オンラインゲームを舞台にしたボーイ・ミーツ・ガールものの傑作「千の剣の舞う空に」という作品があります。この作品では、様々なオンラインゲームのランキングで常に1位に名を連ねる「闇」という名前の「正体不明のプレイヤー」が登場します。そのプレイヤーが何者なのかという謎・疑問が作品を最初から最後まで引っぱってくれます。主人公とヒロインは対戦ランキングを上げて「闇」と戦い「闇」の正体を明らかにするためにゲームを進めていきます。読者は「闇」とはどんな人物なのかという疑問をもち、その答えを知ろうとしてページをめくるのです。

 こうして見ると、恋愛ものと推理ものの相性は良いようです。恋愛も「恋の相手はどんな人間なのか」ということを知ろうとして探っていく一種の推理ものなのかも知れないですね。

    

疑問・謎のつくりかた②「不明なこと・明らかにされていない要素を描いてお客さんの『探求心』をくすぐろう!」

人物ではなく「何らかの不明なこと・解明されていないこと」を描いてお客さんの「知りたい」という好奇心に訴えかけましょう。

不明なこと、明らかにされていないことを描くにはまず「5W1H」を考えていきましょう。「いつ」なのか、「どこ」なのか、「誰が」やったのか、「何を」やったのか、「なぜ、なんのため」なのか、「どうやって」やったのか、これらの要素をお客さんから隠し、「結果」だけを先に描いていくことで謎を作り出すことができます。この「結果部分」が不思議な不可解な現象、つまり「ミステリー」となります。

たとえば「毎朝クラスの机がピカピカになっている」という結果があります。これは不可思議な現象です。一体「誰が」ピカピカにしているのか? という謎になります。血だらけの少女が道に立っている、一体「何が」あったのか? 「なぜ」そうなったのか? という謎になります。このようにまず結果、それも不可解な驚くような結果を提示して「5W1H」を考えていきましょう。

既存の作品での例を挙げると、前述のライトノベル小説「千の剣の舞う空に」では正体不明の謎のプレーヤー「闇」の戦い方がこの謎になっています。抜群の勝率を誇り、一回も負けないというその戦い方とはどんな戦い方なのか、どうやって勝っているのか、これが解明されていない謎となり秘密となります。そして、その真相が知りたくて読者はページをめくるのです。

    

「思わせぶりなセリフ、ヒント、手がかり」でお客さんを誘い込もう!

    

疑問・謎、お客さんが知りたいを描く場合はちょっとずつ「手がかり・ヒント」を描いていくようにすると、よりお客さんに「先が気になる」と思わせることができます。疑問・謎は何もヒントがないよりも、答えの手がかりやヒントが少しでもあった方がより、お客さんの「知りたい」という気持ちを強くしていくことができます。

 その際には「思わせぶりなセリフ」などを、ちょっとずつ小出しにしていくようにしましょう。

参考:第5章 設定をつくろう!

■vol.48 「設定」は、「キャラが魅力的に見えるシーン」のためにある!

■vol.49 物語のもう一つの流れ、「謎の解明」

■vol.50 「同人誌」をつくろう!

■vol.51 主人公には「いちばんの才能」を持たせよう!

■vol.52 「特殊能力」の面白さは「制限要素の面白さ」である!

■vol.53 キャラクターの「目的」「目標」「動機」を設定しよう!

■vol.54 キャラクターが一番引き立つ「世界観」を設定しよう!

■vol.55 「組織」「職業」「部活」「家族」――人は何かに所属している

■vol.56 敵には敵の「都合」がある!

■vol.57 キャラクターや物語を引き立てる「道具・アイテム」をつくろう!

■vol.58 「制限」があったほうが物語を作りやすいって、ホント?

■vol.59 物語に「仕掛け」を施して、お客さんをアッといわせよう!

■vol.60 物語を盛り上げる方法と、キャラクターが勝手に動いてくれる設定

■vol.61 長編・短編のつくりかた どんな長さの作品でもお客さんを満足させる方法

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