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2011年11月18日 (金)

■実践編vol.01 いいセリフとは、「短い」「話し言葉」である!

vol.J0001
    
    

◇面白い作品は「セリフ」がおもしろい!
    
    

作品を作るとは「セリフをつくる」ことである
     
 今まで作ったプロットなどの構成段階と、これから書きはじめる原稿との一番の大きな違いというのは、〝セリフ〟があるかないかです。キャラを作る段階やプロットを作る段階で、部分的にキャラクター同士のやり取りや決めゼリフなどが漠然と浮かんでいるかもしれませが、すべての「セリフ」はまだこの段階ではできていないと思います。
 実際に原稿を書いて作品を完成させるということは、すなわち「セリフを作っていく」ということなのです。ここではそんな「セリフ」について一緒に学んでいきたいと思います。
     
    
いい「セリフ」を書くには
     
 さて、面白い作品の特徴の一つは「キャラクターがいきいきとしたセリフをしゃべっている」という点です。物語の至上命題は「キャラクターを魅力的に描く」ことです。そしてキャラクターを魅力的に描く上で絶対に外すことのできない要素がこの「セリフ」なのです。なぜならセリフはキャラクターを描き表現していく上で一番有効なツールだからです。セリフを制するものはキャラクターを制すといっても過言ではありません。それだけセリフは物語作品の中で非常に大切な役割を果たします。
 セリフは物語の中でとても大きな比重を占めているのです。
    
 
◇セリフの持つ役割・機能
     
     

キャラクターがしゃべることで「描写できるもの」
     
 
当たり前の話ですが、セリフとは登場人物が「しゃべったこと」です。シナリオや小説では「」(カギカッコ)の中に書かれるもの、直接話法がそれです。マンガではフキダシの中に書かれ、アニメや映像作品では直接キャラクターが音声でしゃべります。
 さて、一般的にセリフは「しゃべったことを表現したもの」ですが、じつはこのしゃべることを通して物語では、それ以外のたくさんの要素を表現しています。  セリフには物語の中で様々な機能、役割があるのです。
 物語の「セリフ」には次のような働きがあります。
      
① キャラクターを描き出す(どんな人物か、性格、考え方、価値観、心理状態、感情など、キャラクターを立てる)。
② 会話している者同士の関係性、対人感情を表現する。
③ ストーリーを進展させる。
④ お客さんに作中で起こったこと、事実、状況などの必要な情報を知らせる。

      
 小説はセリフと地の文から成っており、マンガは絵とセリフから、映像媒体の作品はセリフの音声と映像から作品が構成されています。物語はそれぞれの媒体で「画像や地の文などの描写要素」と「人物のセリフ」の2つの要素によって描き出されています。
 セリフとは人物がしゃべったことであり会話です。つまり物語はある意味、登場人物が「しゃべることによって」人物が描き出され、ストーリーが進展し、お客さんが物語にとって必要な情報を得るといえます。しかもセリフが描き出す内容の割合は非常に多いものになります。
 また、セリフは物語作品を魅力的に見せる大切な要素です。キャラクターがしゃべっているだけで楽しい、面白い、笑っちゃう、そんな「セリフを読む楽しみ」がある作品が多くあります。物語には「ストーリーの筋のおもしろさ」の他にもう一つ、「会話・セリフの面白さ」というものがあるのです。
 ですから、セリフは物語の中で非常に大事な要素となってきます。いかに、良い、魅力的なセリフを書くかがこの原稿制作段階の作業での一番のポイントになります。
     
     

◇「いいセリフ」とはどんなセリフ?
     
     

いいセリフとは「話し言葉」である!
      

 物語においては「いいセリフ」を作ることが「いいキャラクター」を、ひいては「いい物語」に繋がっていくことがわかりました。では、「いいセリフ」とはどのように作っていけばいいのでしょうか。
「いいセリフ」を考えるには、まず「悪いセリフ」を考えてみましょう。
 悪いセリフとはズバリ「ストーリーを運ぶためだけにしゃべっているセリフ」「人物・状況に合っていないセリフ」のことです。これはとても不自然で、冗長で事務的で面白味がなく、説明的で理屈っぽく聞こえます。とても人間が実際にしゃべっているようには聞こえません。なにより読んでいて、聞いていて面白くありませんし、聞きづらい、読みづらいものになります。
 それに対していいセリフ、上手いセリフは「人が実際にしゃべっているような会話・セリフ」です。そして「しゃべっている人物・状況に合ったセリフ」です。つまりいいセリフとは「話し言葉」です。人間が日常会話で実際にしゃべっているような「リアルで、らしい」セリフが作れれば、物語もキャラクターも何倍も魅力的になっていきます。
 ただしリアルといっても、人の会話を忠実にトレースしようとすると、物語ではかえって面白味がなくなる場合があります。
 なぜかというと、実際の会話は無駄が多かったり、魅力的じゃなかったり、物事の進展とは全く関係ない内容のものが往々にしてあるからです。現実世界ではストーリーを展開するために会話がなされてるわけではないからです。しかし物語のセリフにはそうした意図が若干でも含まれています。含めなければいけません。つまり、厳密な意味では「セリフ」と「実際の会話」は「限りなく似ているけど違うもの」だということができます。リアルさ、らしさは追求するけど、物語作品として最低限機能するセリフにしていく必要があるのです。そのためには「自然な会話」に聞こえるためのエッセンスを分析して、それを物語のセリフにうまく含ませていくようにしましょう。そうすれば、物語上何らかの展開をもたらすセリフでありながら、自然な話し言葉に聞こえるセリフを書くことができるのです。
     
     
◇「話し言葉」を書こう!
       
      

「話し言葉」を作るコツ
     
 人が日常で会話をしているときの言葉というのは、文章で書くような言葉とは少しちがいます。会話は「話し言葉」なのです。では、どうすればリアルな「話し言葉」を書くことができるのでしょうか。
 私の友人にセリフがとても上手い者がいまして、その友人が「セリフを書くときのコツ」を教えてくれました。今回、その友人から許可を得たので、そのコツを皆さんにご紹介します。
 人が話す「話し言葉」にはいくつかの特徴があり、これらをセリフに取り入れれば実際に人が話しているかようなセリフのやり取りを作ることができます。
 以下がその特徴です。
      

《話し言葉の特徴》
     

①「単語ベース」の「短い」センテンス
② 体言止め(最後が名詞や代名詞で終わること)
③「助詞(て、に、を、は等)」や、「接続詞(そして、または等)」は省略
④ 結論が先に
⑤ 倒置

     
では、これらの5つの要素を「具体例」を使って見ていきましょう。以下がその例です。
      

● 具体例1
      

○キッチン 夜
料理や調味料が食卓の上に並んでいる。
太郎と花子が夫婦揃って食事をしている。
太郎「花子さん、その醤油を取って下さい」
花子「これね、はいどうぞ」
花子が醤油の瓶を取って太郎に渡す。

      
 こんなセリフはよく書きがちです。どこか問題でもあるの? と思う方もいるかもしれません。
 しかし、親しい夫婦、何年も一緒に暮らしている間柄での会話だと考えると、やはりどこか他人行儀で不自然で、セリフがくどいように感じます。
 これにちょっと手を加えると「会話」らしくなっていきます。
 まずは「短く」してみましょう。
     
太郎「醤油」
太郎が醤油の瓶を指差す。
花子「はい」
花子が醤油の瓶を取って太郎に渡す。

      
 実生活において人間、話すときはあまり詳しく長々と説明する人はいません。いつも一緒に生活している間柄なら、なおさら短い言葉で通じます。セリフも同じです。
 セリフは短いほどいいのです。
 最初の太郎のセリフ「醤油」は、その後に《取ってくれ》という思いが込められています。言葉にして発していませんが、長い間一緒に暮らしている花子は、食事中という状況の中で「醤油」を取ってほしいということを察して「はい」と醤油を渡します。
 内容的にもこれで成立します。
 では、逆に花子が太郎に醤油が「要るかどうか聞く場合」はどうでしょうか。
     
花子「醤油は要りますか?」
太郎「いるよ。取ってくれるかな」
花子「はい、どうぞ」

     
 これも書きがちな例です。会話している人物同士の関係、話している状況、年齢、話し言葉などを考えるとやはり説明的で不自然ですね。これを直すと、
     
花子「要る? 醤油」
花子が醤油の瓶を持ち上げる。
太郎「うん」

       
「醤油、要る?」でもいいですが、倒置法をつかって「要る? 醤油」とすることで、より会話しているライブ感が高まります。醤油を持ち上げる動作とも合ってきます。
 さらに、太郎と花子の関係の強さを演出するなら、もっと短く代名詞化して、
     
花子「これ(要る?)」
花子が醤油の瓶を持ち上げる。
太郎「それ」
花子「はい」
花子が醤油の瓶を太郎に渡す。

      
となります。このセリフのやり取りならばとても自然で、二人の関係を上手く表しています。長年連れ添った夫婦ならばこのくらいの会話で、すべて通じてしまうんですよね。
    
    

セリフは「動作や情景などのセリフ以外の描写」とセットで考えていこう!
      
 
セリフを作るときは何でもかんでもセリフにしていわせないように注意しましょう。セリフを考える際には「セリフ」と「セリフ以外の描写」を合わせて考えましょう。
 セリフが長く過剰・過多で「くどく」なってしまう原因の一つは「セリフだけですべてを表現しようとする」からです。前述の例では「醤油のビンを持ち上げる」というアクションがあります。この動作によって《要る?》というニュアンスが伝わりますので、わざわざセリフにして「要る?」と聞く必要はありません。これはよく「語るより見せろ」といわれていることです。セリフを考えるときはセリフだけを考えていくのではなく、動作やビジュアルの描写とセットでセリフを考えることによって、洗練された、それでいて内容的にも不足なく十分な「短いセリフ」を書いていくことができます。
     
     

「話し言葉」応用編
    

②~⑤にはリアリティを醸し出すだけでなく、言葉の力を増す作用もある、と友人が教えてくれました。
     
     

● 具体例2
     

「東京に行きたいな」
     
 これを直すとどうなるでしょう。
 これ以上どうしようもないくらい短いセリフですが、まず③の助詞を省略します。すると、
     
「東京、行きたいな」
     
 次に④の「結論が先」⑤の「倒置」を使い、②の「体言止め」にすると、
      
「行きたいな、東京」
       
「東京に行きたいな」と「行きたいな、東京」では、どちらが“東京に行きたい感じ”が強いでしょうか。友人は「東京を実際に思い浮かべながら遠くを見るような目で行きたいという思いを募らせているのは……おそらく後者ではなかろうか」といっています。
 このように、ちょっと会話文を見直すだけで、リアリティのある日常会話を書く事ができるのです。
      
     

◇セリフは書いた後の「直し」によって、良くなっていく!
      
       

いいセリフがなかなか書けなくても、無理やりにでもとにかく回数を書いて、そのあとで「直して」いこう!
       

 セリフというのは、はじめのうちは誰しもうまく書けません。どうしても不自然で、わざとらしく、くどい言い回しになり、説明的なセリフになったりします。これは会話を書いたことのある誰もが感じる悩みです。この時点で「自分には才能がないのではないか」「こんなに書けないなんて、何度も直さなきゃいけないなんて自分には向いてないんじゃないか」と挫折しそうになります。
 しかし、ここはくじけずに無理にでも書き進めることをおススメします。なぜなら、会話をうまく書くには、まず「数をこなすこと」が必要になってくるからです。
 はじめは、なかなかうまく書けずに四苦八苦してもがき苦しみますが、回数を重ねて、分量を書いていけば次第にセリフは書けるようになってきます。だから、自分の書いた会話部分がどんなにつまらなくても書き進めてください。そして、その後で「書き直して」いってください。そう、セリフは「書き直して良くしていく」ものなのです。
 プロでも何回か書き直してセリフを仕上げていきます。最初に書いたもので完成という人はほとんどいません。ですから、はじめに書いたセリフがダメダメでも何も恥じることはありません。それを直していけばいいのです。長ければ短くすればいいのです。過剰でくどければ簡潔にしていけばいいのです。そうすれば、セリフはどんどん良くなっていきます。セリフはそうやって完成度を上げていくのです。また、直しの過程でだんだん会話、人の話し言葉というもののコツがツカめてくるのです。
 では、以下でこの「セリフの直し方」、すなわち「セリフを短く簡潔にしていく方法」についてのテクニックをご紹介していきます。
      
      

◇いいセリフは「短いセリフ」!
      
     

お客さんを引き込むいいセリフとは「短いセリフ」である!
       

 いいセリフの第一条件は「短い」ことです。短いセリフはテンポのよい話運びを生み、必要な情報をお客さんにわかりやすく伝えます。なにより読みやすくなります。ですから、セリフはできるだけ短くしていきましょう。
 マンガなどのフキダシの中のセリフだけを抜き取って書き出してみると、その一つひとつのセリフが短いことに気づきます。読みやすいと感じるマンガほどセリフは短いです。読みづらいマンガは長いセリフが多いです。セリフの長さは読みやすさと大きな関係があるのです。
「話し言葉」は短いセリフです。よいセリフを書くには短いセリフに直していきましょう。
     
      
意味を変えずにセリフを短くするには?
      
 
以前、私は「英語のビデオを日本語にする」という仕事をしていたことがあります。
 セリフはもちろん全部英語で、それを日本語のセリフにして日本の役者さんに吹き替えてもらうわけです。日本語の直訳原稿が翻訳されてありましたので、それをそのまま台本として使えば問題なく収録できそうですが、じつはこのままではダメなのです。
 なぜかというと、ご存知の方も多いと思いますが同じ内容をいった場合、英語よりも日本語の方が「言葉として長く」なるからなのです。つまり、英語の台本を直訳すると、セリフが長くなってしまいアフレコの時に「口の動きは終わってるのにセリフがまだいい終わらない」という事態が起きてしまいます。これを避けるには「リップシンク」と呼ばれる映像の口の動きに合わせてセリフの長さを調整していく作業が必要になります。つまり、「意味を変えずに短い言葉にしていく」作業です。
 口の動きに合うようにセリフを短くしていっても、セリフの意味が変わってしまっては元も子もありません。でも短くしないと収録できません。
 では、どうすれば意味を変えずにセリフを短くすることができるのでしょうか。
     
      
短くするにはまず「内容の重複」を考えよう
      
 
セリフを短くするには、まずはじめに「内容の重複」を探していきましょう。「重複」とは内容が重なっている、ダブっている、同じ情報をいっている部分のことです。同じ情報ですから、どちらかを削除してもセリフの内容(情報量)自体は変わりません。ですから、まず重複している情報を探してそれを削除していきましょう。
 簡単な例を示しますと、
      
『赤い夕日が沈む』
    
 という文章、これを短くするとします。
 この場合、まず「赤い」が省けます。
 なぜならば「夕日は赤い」に決まっているからです。青い夕日はありません。ですから「赤い」と「夕日」は内容(情報)が重複しているのです。だから、省いても意味が変わらないため、削除できるのです。すると、こうなります。
    
『夕日が沈む』
    
 さらにもっと言うと、夕日は沈むもので「昇る夕日」はありません。
 ですからもっと省いて、
     
『日が沈む』
    
 もしくは、
    
『夕日』
     
 となります。
     
 どちらも、真っ赤な夕日が沈んで、空が夕焼けに赤く染まっている情景を思い浮かべる事ができます。
 情報は、重複していただけで何一つ失われていないのです。
 セリフとして書かれたものは吟味されて書かれていますから、パッと見て明らかに同じことをいっている箇所というのはほとんどありませんが、前後のセリフやセリフ以外の描写と照らし合わせていけば重複している情報・描写、同じことをいっている内容が見つかります。そういったものを削除していくことでセリフの意味を変えずに短くしていくことができるのです。
    
     
お客さんや登場人物に伝えなければいけない「核心の情報」以外は省略できる
     

 「重複」を削除しても、まだ短くできる要素はあります。セリフの幹だけ残して枝葉を取り払っていくのです。
 一つひとつのセリフはみな、目的があります。その目的とは「作中の登場人物に情報を伝えること」と「お客さんに情報をもたらすこと」の2つです。まず、この2点に注意しながらセリフをまず分析します。そして、物語を描写・進展させる上でそのセリフの「一番重要な情報、最低限伝えなければいけないこと」を探して「セリフの文意」を捉えていきましょう。これがセリフのポイント「核心の情報」、つまり「幹」に該当する部分です。
 そうして、そのセリフの文意・目的がわかったら、それ以外の要素をできるだけ刈り込んでいくのです。幹以外の部分はみな「枝葉」です。枝葉をいくら刈り込んでも幹は残ります。ですから、枝葉末節の情報をいくら削除していっても、そのセリフの目的である「どうしても伝えなければいけない核心の情報」が残っている限り、セリフとして全く問題なく機能してくれるのです。
     
     
セリフの中の「核心の情報」の見極め方
  
   
 セリフの中の「核心の情報」とは最も核の部分、勉強にたとえていえばアンダーラインを引いたり太文字で表記されているような部分のものです。
「核心の情報」を探す際には、そのセリフだけでなく前後のセリフ・シーンの内容を参照しながら見極めていきましょう。そのシーンはどんな目的があるのか、お客さんや登場人物にどんな情報が明らかにされているか、何が起きているのか、登場人物の感情の動きはどうか、そのセリフをいうことで周囲の人物や状況にどんな作用があるのかといったことを考えながら「核心の情報」を把握していきましょう。
     
      
「別な言い方」を用いて短くする
 
     
 もう一つ、セリフを短くする方法があります。それは同じ意味を持つ「別な短い言葉」にいいかえるという方法です。
 前述の英語のビデオの仕事をしていて悩まされたのは、せっかく短くして尺的にセリフが入るようになったのに「英語をしゃべっている口の形」と「短くした日本語のセリフの言葉の口の形」が合わないという問題でした。なんとかいける部分の多くあったのですが、明らかに違う、たとえば「あ」の音なのに画面の口は閉じているなんていう場合がありました。そのときに有効だったのが、意味は同じなんだけど「別な言葉にいいかえる」という方法です。日本語は幸い、同じ意味でもいい方の違う言葉がたくさんあります。この方法を使えば、セリフの意味やニュアンスを残したまま「別の短い言葉」に置き換えて、セリフを短くしていくことができます。
 その際もやはり、前後の内容、そのキャラクターの人物設定・口調、言葉のニュアンスなどに注意しながら、セリフを短く直していってみてください。
      
     

全部セリフでいわせなくていい
       

 セリフは簡潔であることが大事です。あまり詳しくセリフだけで伝える必要はありません。
 セリフを書きはじめのころは、作者は意図している内容を正確にお客さんに伝えようとするあまり、過剰な、説明過多のくどい言い回しになってしまうことがよくあります。そうしないと不安だからです。でも一から十までセリフにしなくても大丈夫なのです! 説明や描写が必要であれば、セリフ以外の絵や映像、地の文などで行えます。セリフはその描写にそっと添えるだけというイメージで書いていきましょう。セリフによる説明は「補足」でいいのです。少し説明不足かな、と思うくらいでちょうどいいのです。複雑な難しい内容でもなるべく簡潔に短くしていきましょう。また、意味も明瞭でわかりやすくしていきましょう。
      
      
一つのセリフには一つのテーマだけを
      
 セリフを書くときは一つのセリフに入れる「いいたいこと」は一つだけにしましょう。
 これについてシナリオセンターの所長として多くのシナリオライターを世に送り出した故新井一氏が名著『シナリオの基礎技術』の中で、セリフの中に二つも三つもいいたいことが含まれて入るセリフを「分裂セリフ」として避けるように教えています。氏は、その「分裂セリフ」の特徴として、セリフの中に「話はちがうが」とか「そういえばあの件なんだけど」といった「間接詞」が入っていて、それを境に全く違う2つの内容が一つのセリフに入っているといっておられます。『シナリオの基礎技術』の中で、例として述べられている「分裂セリフ」を引用したいと思います。(太字部分引用)
    
「君の家の庭はなかなかいいじゃないか、ぼくもこう言う庭が欲しいよ、ああ、話はちがうが、山田の奴がこの間結婚してね」
     
……という感じです。
     
 1つのセリフに1つ以上のテーマを入れると、セリフはどんどん長くなるばかりか、お客さんが「そのセリフが何をいいたいのかわからなくなってしまう」のです。2ついいたいことがあったら、聞いているお客さんはどちらの内容に焦点を定めて聞けばいいのか迷ってしまいます。
 いくつかいいたいテーマがある場合は、別のセリフにして分けていわせるようにしていきましょう。
    
     
物語上全く意味のないセリフは削ろう

     
 物語をお客さんに楽しんでいただく上で「物語と全く関係のない余計な情報・要素」というのはジャマになるだけでなく、面白さやストーリーの流れを阻害してしまうものとなります。ですから「様々な面で物語を前に進める意図と全く関わらない、何の意味もない、あるいは逆行させるようなセリフ」はいわせないようにしていきましょう。そういうセリフをもし書いてしまっていたら、削除していきましょう。物語の進行と完全に関係ない余計な情報・セリフ、物語の進展方向と外れるような、逆行停止させるようなセリフはいわせないようにしていきましょう。
      
    

作品のテーマをセリフでいわせない
    
 
完全に無駄な、必要のないセリフというものがあります。それは「物語のテーマをストレートにいわせたセリフ」です。たとえば、
    
「みんなで力を合わせたから、敵を倒せたんだ……」
     
 みたいなやつです。
 これはやってはいけません。お説教くさくなる一番の原因です。そんなことはいわなくていいのです。いわなくてもお客さんはわかります。また、わかるように物語を構成していかなければいけません。テーマは構造や物語の展開、エピソードで表現していくものであって、セリフでいわせるものではありません。そのための具体的な方法、テーマについては創作講座の基礎編で触れていますので、参照してみてください。
 テーマは前面に出さずに「匂わせる」ぐらいの感じで描いていきましょう。テーマはお客さんが自分で感じ取っていくものであって、セリフを通してお客さんに押し付けるものではないからです。
 テーマに関連するセリフは直接的にストレートにいわせないで、間接的に表現するようにしていきましょう。
      
     

◇セリフを読むたのしみ
     
     
読む楽しみを持った「無駄セリフ」もある!
 
     
 セリフを短くしたり削っていったりする上で覚えておきたいことが一つあります。それは「一見無駄なセリフと思うようなものであっても必要なものがある」ということです。
 物語に出てくるセリフというのは、その重要度は別としてどのセリフも前述の「セリフの持つ役割・機能」に応じた「物語上での何らかの意味や意図」を持っています。しかし、明確にそれらの役割を持たないように見える無駄なセリフなのに、そのセリフがないとなにか「寂しい」と感じるようなことがあります。
 物語の魅力の中には「セリフを読むたのしみ」があり、物語の進展とは直接関係ないものでも読んでいて聞いていて楽しい、心地よいセリフがあります。それらのセリフはキャラクターを広げたり、ユーモアやペーソスを生み出したり、作品の雰囲気や気分、その時代・世界の空気みたいなものを表現したり、豊かにしたりしてくれます。そういうセリフや、やりとりは残しておくといいかと思います。
 セリフにおいて大事なのは無駄なセリフとそうでないセリフを、いろいろな面から多角的に考えて見極めていくことなのです。そして、そのうえでできるだけ短く、簡潔に表現していくことなのです。

参考:第6章 セリフをつくろう!

■実践編vol.01 いいセリフとは、「短い」「話し言葉」である!

■実践編vol.02 「説明セリフ」を使わないで、お客さんに「説明」しよう!

■実践編vol.03 意外なこと、意外な言い方、「意外性」がセリフを面白くする!

■実践編vol.04 セリフでキャラクターを立てよう!

■実践編vol.05たったひとつでいい、「心に残るセリフ」をつくろう!

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