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2014年5月10日 (土)

■恋愛編vol.11 【ストーリーパターン③】 「モテない男が美女と恋仲になる」

vol.Renaibana011     

男は顔じゃない! 年収じゃない! すべての「普通の人」に希望を与えるラブストーリー

 三つ目のパターンは、「モテない男が美女と恋仲になる」です。
 これは読んで字の如し、モテない冴えない男子が、とびっきりの美女と恋人になっていくという、多くの一般男子、普通の人に希望を与えるストーリーです。
 このパターンの面白さのポイントは、「イケメンじゃないモテない、ただの一般人が、誰もが付き合いたいと思うような美人にアタックして、ついに恋が成就する」というところです。
 これは、読者のストーレートな願望を満たすストーリーです。その意味では、このパターンは、パターン①「《かわいそうなあの娘》は、幸せになれるのか」の男性版です。つまり、このパターンも、パターン①と同じように「一発逆転」の物語であり、高嶺の花とも思える美人と普通以下のモテない男が恋人になるという痛快性、言葉を変えればその「ギャンブルで大穴を当てる」感覚が面白さの基本になっています。
 また、美人が高学歴高収入のイケメンよりも、顔も冴えない年収も低い主人公を選ぶことで、「人間、顔や年収ではない、心がいちばん大事なんだ」というメッセージを描けるところが、このパターンの読ませどころであり、多くの一般読者層の共感と支持を得ることができるポイントです。

     

このパターンで描かれている参考作品『電車男』『ああっ女神さまっ』

 このパターンは、多くの作品で用いられている定番のパターンですが、とくにわかりやすい具体例として『電車男』(TVドラマ版)が挙げられます。
 顔も人並みかそれ以下、年収も低い、背も低い、会社ではうだつが上がらず、何をやってもまくいかない主人公の電車男。しかも、彼は生粋の「オタク」であり、あらゆるモテない要素を持っている主人公が、美人で家がお金持ち、大手企業に勤めるお嬢様のエルメスと出会い、最終的に二人の項は成就していきます。女性と付き合ったこともない主人公が、外見の改善やデートなどでがんばっていく姿、ヒロインが電車男のことをだんだんと好きになっていく過程が、この作品の見所です。
 また、この作品に登場する主人公を応援する「ネットの住人」たちは視聴者の分身であり、彼らの応援によって主人公が変わっていき、ヒロインも変わっていくという構造が、この作品を単なるモテない男がモテていくストーリーではない、独自性を持ったユニークな恋愛物語に仕上げているのです。
 もう一つ、ちょっと変わった例では、マンガ『ああっ女神さまっ』もこのパターンの亜流です。モテない冴えない主人公の森里螢一は、ある日、天界からの女神ベルダンディーの訪れを受け、何でも好きな願いを叶えてくれると言われます。それに対し、螢一は「君のような女神にずっとそばにいてほしい」という願い事をして、神によってその願いが受理され、二人は強制的に一緒に暮らすことになります。そんな中でベルダンディーは、螢一の優しさや人間性に触れ、だんだんと螢一のことが好きになっていきます。
 このストーリーパターンも、多く用いられる基本的なストーリーであるがゆえに、よくあるありがちな展開になりやすいところがあります。そうならないためには、『電車男』の「ネットの住人との恋愛相談」、『ああっ女神さまっ』の「ヒロインが女神である」というような独自性のある人物や状況の設定を組み合わせるなどして、ありがちにならないような工夫を必ず盛り込んでいきましょう。

     

このパターンは、多くの男性読者に希望と共感を与えるストーリーである

 このストーリーの最も大きなポイントは、これは「男性読者に希望を与えるストーリーである」ということです。(もちろん女性読者も楽しめますが)
 大多数の男性は、イケメンでもなく、収入もそんなに多いというわけではありません。背が高いわけでもなく、女性と交際したことのない男性のほうが多いです。しかし、そんな普通の男性読者でも素敵な女性と素晴らしい恋ができるんだよというメッセージを伝えることができます。男性読者は、美人で、頭もよく、控えめで、やさしいお嬢様との恋愛を夢見ています。でも、そんな「ハイスペック」な女性と、普通かそれ以下の自分なんかとでは釣り合わない、と心の中では思っているのです。そんなふうにいつも思っている読者に対して、このパターンのストーリーは勇気と希望をもたらしてくれます。だからこそ、このストーリー展開は、多くの男性読者から支持と共感を得られるのです。
 このパターンの作品の売りこみ方は、その一点にあります。

     

モテない主人公は、ヒロインの「心を救う」!

 このストーリーのパターンの核となる部分は、「モテない主人公が、ヒロインの心の中の問題や悩み、苦しみを癒し、解決していく」というものです。
 このパターンのヒロインは、「何らかの心の傷を負っているか、苦しみをかかえている」必要があります。それは、人間関係でも、進学に対する不安でも何でも構いません。部活動でも仕事に関することでも、家族のことでもいいのです。もちろん、恋愛に関することでもいいです。
 ヒロインは、何らかの心の中の問題を抱えており、その問題をモテない主人公が解決する、または解決のきっかけになっていきます。これが、このパターンの基本構造です。後は、この基本構造をもとにヒロインの心の問題や状況のバリエーションを設定していけば、物語を作っていくことができます。

      

応用パターン「イケメン高年収男性が、モテない平凡な女性を好きになる」

 このパターンの応用パターンとして「イケメン高年収男性が、モテない平凡な女性を好きになる」という逆のパターンがあります。
 女子がイケメンからモテるというと、パターン①「《かわいそうなあの娘》は、幸せになれるのか」と同じじゃないかと思うかもしれませんが、パターン①は主人公が女性で、女性の視点でかっこいい男性との恋がうまくいく、イケメンエリートからモテるという擬似恋愛体験を楽しむということが目的であるのに対して、この応用パターンは、イケメン男性の視点で、見た目は地味だけど、心が美しい、内面的に魅力のある女性を好きになっていくという過程をドキドキしながら楽しんでいくのが目的になっています。
 見せかけだけの美しさよりも、人間として大切な心の美しさに気付いていく、それがこの応用パターンの物語なのです。

      

このパターンを作るときのコツ、ポイント

 このパターンのを作るときには、以下のようなポイント、コツがあります。

◇このパターンに必要な登場人物
 (1)モテない、冴えない、残念な主人公(男性)
 (2)美人で、誰もがうらやむような素敵なヒロイン
 (3)モテモテのイケメン男性(恋のライバル)

◇ストーリーの展開
 ①モテない、冴えない主人公、残念でうだつの上がらない日々を送っている。
 ②美人の素敵なヒロイン、モテモテのイケメン男性と付き合っている。
 ③美人の素敵なヒロイン、モテモテのイケメン男性に裏切られ(二股、浮気、不倫など)、破局する。
 ④モテない主人公と美人の素敵なヒロイン出会う。
 ⑤事件、出来事を通してモテない主人公、傷ついた美人の素敵なヒロインの心を癒やす、救う。
 ⑥美人の素敵なヒロイン、モテない主人公を好きになる。
 (※②~③の過程は省略して、ヒロインがつらい失恋などを経てすでに「傷ついている」、「恋することをやめている」という状況からストーリーをスタートしていくこともできる)

◇セントラルクエスチョン
 このパターンを描くときは、以下のようなセントラルクエスチョンを描いていくことを心がけてストーリーを構成していきましょう。
 ①「モテないヤツが幸せになることができのか」
 ②「美人のヒロインは、主人公を好きになるのか」
 ③「主人公は、恋のライバルであるイケメン色男に勝つことができるのか」

 

ポイント① モテない主人公は、「内面」の美しさ、魅力を与えよう!
 このパターンの最も大事なポイントは、作品の持つ「人間、顔やカネじゃなく心だ」というテーマ性です。
 「美人でハイスペックな女性」というのは、世の男性が憧れる素晴らしい女性を記号化した象徴であり、その女性が高年収のイケメンよりも主人公を選ぶところ、また、その選ぶ理由が主人公の「内面の美しさ」だというところが、このパターンを描く上での、もっとも重要なポイントになります。
 男性女性問わず多く読者は、恋人は顔、年収だという唯物論的、物質文明的な価値観に対して、心のどこかでアンチテーゼを抱いています。みんな、本当に大事なのは「心」なんだということを知っているのです。
 このパターンを描くときは、主人公には誠実さ、実直さ、純情、優しさ、勇気などの「内面の美しさ」を必ず与えていくようにしましょう。この主人公の内面の美しさによって、ヒロインの心の問題、悩みや苦しみを解決していきます。その点からも、主人公には「内面の美しさ」が必要なのです。
 読者は、主人公がいい奴だからこそ、「このキャラの恋がうまくいってほしい」と応援してくれるのであり、美少女とうまくいっても妬みをいだかないのです。
 そのためには、子供や老人、後輩や友達、困っている人を助けるなど、「誰かのために行動するシーン」を描いて、主人公がいい奴であることを描いていきましょう。

 

ポイント② 主人公には「残念さ」を、ヒロインには「憧れの要素」を!
  このパターンの勝敗は、「読者が主人公にどれだけ《共感》できるか」で決まります。読者が主人公に共感し、主人公の「恋を応援したくなる気持ちにする」ことができるかが、いちばん大事なポイントになります。
 主人公は、大多数の一般の読者に近ければ近いほど、そしてモテなければモテないほど、読者の共感を得ることができます。ですから、主人公にはできるだけモテない理由、要素を与えていきましょう。モテない要素は、「内面的な要素以外のもの」、すなわち外見、身体的なものや収入面、趣味、トラウマなどで「残念な」要素を持たせるようにしましょう。
 主人公に「残念な部分」があると、読者はすぐに共感してくれます。とくに主人公のルックスが悪くない、ある程度美形という場合は、必ず残念な部分、欠点、弱点を持たせましょう。
 読者は、そんな「残念さ」に親しみを覚えるのです。
 残念さには、次のような種類があります。

 (1)見た目の残念さ(目つきが悪い、身長が低い、顔が怖い、地味、雰囲気が暗いなど)
 (2)内面、社会性の残念さ(目立たない、友だちがいない、人に言えない趣味を持っている、オタク、男性(女性)恐怖症など)
 (3)能力的な残念さ(料理が下手、ドジ、走るのが遅い、何もないところでつまずく、方向音痴など)
 (4)生活、状況的な残念さ(運が悪い、貧乏、人に言えない恥ずかしいバイトをしている、家がヤクザなど)
 
 どんなに主人公にモテない要素を加えても、主人公に「内面の美しさ」がある限り、大丈夫です。
 しかし、不潔、下品などの読者が引いてしまったり生理的に受けつけないようなモテない要素は、避けるようにしましょう。(主人公への共感ができなくなってしまうおそれがあるからです)
 逆にヒロインには、できるだけ「男性が憧れるような要素」を付加させていくようにしましょう。まず美人であることは最低限の条件で、そのほか性格のよさや育ちのよさ、学歴、職業、才能、気質などで、魅力的で憧れてしまうような要素をできるだけ持たせるようにしていきましょう。さらに、ヒロインを引き立てる手段として、人気があり、周囲から羨望の眼差しを受けたり、ファンや親衛隊がいるなどの「多くの他者からの評価」を描くことで、ヒロインがいかに高嶺の花なのかを強調していくことができます。
 このパターンのヒロインを描くときは、読者が「こんな主人公とすごいヒロインじゃ、恋なんて成就するわけがない」と思うようでなければいけません。主人公がモテなければモテないほど、ヒロインが魅力的で手が届かなければ届かないほど、そのヒロインと主人公が結ばれたときの感動のインパクトは大きなものになっていきます。

 

ポイント③ ヒロインには「心の悩み」を持たせる、主人公にはその悩みを解決する「心の美しさ、価値観」を持たせる!
 前述しましたが、このストーリーのパターンでは、モテない主人公がヒロインの心の悩みを解決し、ヒロインを救うことによって、ヒロインが主人公を好きになっていきます。
 ですから、ヒロインは「誰にも言えない心の悩み」をかかえている必要があります。このパターンの面白さの大部分は、ヒロインのかかえている悩みがどんなものかというその内容によって決まっていきます。ヒロインのかかえる悩みをどんなものにするかを、しっかりと設定していきましょう。
 このパターンのヒロインは、下手をすると「ただの憧れの存在」という非常に薄っぺらいキャラクターになりやすい危険性があります。主人公だけでなく、ヒロインの人間性、価値観もしっかり描いていくようにしましょう。そのためには、この「心の悩み」、「事情」などを丁寧に描いていけば、血の通った深みのあるヒロインを描き出していくことができます。
 ヒロインの悩みを解消していくのは、誰あろう主人公です。主人公の心の美しさ、主人公の持つヒロインにはない考え方、価値観によって、ヒロインは救われていきます。それもしっかりと設定していきましょう。

 

ポイント④ 恋のライバル「イケメン高年収」を登場させよう!
 このパターン描く場合、できるだけ「恋のライバル」を登場させるようにしましょう。
 ライバルの特徴は、主人公より外見も収入もハイスペック、さわやかで人気もある主人公が足元にも及ばない「モテモテ男性」というものです。このキャラクターは、物質主義の象徴、外見、上っ面だけの人間を記号化した存在です。
 ヒロインは、この誰が見ても魅力的な男性と主人公のどちらかを選んでいきます。多くの場合、魅力的なライバルの方と付き合っているか、もしくは片想いをしています。しかし、最後にはモテない主人公の内面の魅力に気付いて、主人公の方を選んでいくのです。
 モテモテイケメンの恋のライバルを登場させるときの注意点は、「主人公よりも内面的に魅力ある人物にしてはいけない」ということです。年収もルックスも上で、内面的にも魅力があったら、主人公が勝てなくなります。また、その条件でヒロインが主人公を選ぶことに対する説得力が失われてしまいます。ですから、ライバルが魅力的なのは見てくれだけ、中身は主人公の方が何倍も魅力的だというふうに描写していきましょう。
 このライバルキャラ、いうなれば物語で主人公を引き立てる機能があります。ライバルキャラのルックスがイケメンであるほど、年収が高いほど、それらの要素に主人公の心の美しさが勝つ場合には、より大きなカタルシスを生み出していくのです。

 

ポイント⑤ 恋に「悩む」姿を描く
 主人公が悩むと、読者の共感を得ることができます。恋がうまくいかず落ち込んだり、不安になったり、必死に努力したりもがき苦しむなどして、悩むシーンを描いていきましょう。

      

 それでは、これらのパターンをストーリーのテンプレートとして、そこに自分の設定を当てはめて「モテない男が、美女と恋仲になる」の物語を作ってみましょう。

参考:第8章 ラブストーリーのパターン

■恋愛編vol.09 パターン①「《かわいそうなあの娘》は、幸せになれるのか」

■恋愛編vol.10 パターン②「《大嫌いなあいつ》と協力して問題を解決する

■恋愛編vol.11 パターン③「モテない男が美女と恋仲になる」

■恋愛編vol.12 パターン④「恋人の命と世界の平和、どっちか選べ」

■恋愛編vol.13 パターン⑤「恋人は不治の病」

■恋愛編vol.14 パターン⑥「どっちの相手とくっつくのか? 誰を選ぶのか?」

■恋愛編vol.15パターン⑦「偽物の恋が、本物の恋になっていく」

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