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2014年6月 6日 (金)

■実践編vol.08 「皮肉」のログラインから、シーンを発想していこう!

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シーンを思い浮かべれば物語は作れる、じゃあシーンはどうやって作るの?

 物語の構想段階では、「シーン」から発想していくと作っていきやすい場合が多くあります。
 その思い浮かべるシーンは、どんなシーンでも 構いません。たとえば、「椅子に座って、意味深な顔でうなだれている女性」のシーンが思い浮かんできたとしたら、そこから発想を広げていって、この女性は どんな人物なのだろうか、なんでうなだれているのだろうか、どんな生活をしているのだろうか、何か事件が起きた後なのか、その事件とはどんな事件か……、 といった感じで自由に構想していくと、しだいに物語が浮かんできます。
 このように、シーンを思い浮かべていくところから物語の構想をはじめるのがオススメなのですが、この「シーン」そのものがはじめに思い浮かばなければ、そもそも話になりません。
 無料創作講座「基礎編」では、シーンを思い浮かべていくための「きっかけ」となるいくつかの要素について記事が載っていますが、今回は、その「いちばんのきっかけ」となるものについて考えていきたいと思います。
 そのシーン発想のいちばんのきっかけとは、「皮肉」です。

    

物語の面白さは「皮肉」が握っている!

 皮肉とは、一体何でしょうか。
 辞書によると皮肉とは「遠まわしに意地悪く相手を非難すること。また、そのさま。当てこすり」とありま す。また、もう一つの意味に「期待していたのとは違った結果になること。また、そのさま」と書かれています。物語における皮肉というのは、この後者の方に なります。皮肉については、拙著『シーン書き込み式物語発想ノート(新水社)』の方で詳しく解説しておりますが、おおまかに言うと「期待していたのとは違ったことが起きていく」ということです。
 物語を読んでいて、どことなく面白いな、おかしいな、愉快だなと感じる作品には、だいたいにおいてこの「皮肉」の要素が含まれています。
  登場人物がこうなってほしいという「期待、望むこと」がまずあり、それとは180度正反対の状況になっていってしまうというような展開が必ず盛り込まれて います。たとえば「そんなことやりたくないのに、なぜかやるハメになってしまう」とか「予想外、想定外のことが次々と起こっていく」などといった皮肉の展 開が作品を盛り上げ、面白くしていっているのです。
 この皮肉が、面白いシーンを生み出すいちばんの「きっかけ」となってくれます。
 シーン、とくにどこか面白い、おかしいシーンを思い浮かべて発想の手がかりにしたい場合は、まず皮肉の状況を思い浮かべていくところからはじめていきましょう。

    

皮肉を作るには、登場人物が困って切羽詰まる「緊張する状況」を設定していこう!

 読者は、登場人物が困れば困るほど、思い通りにいかなければいかないほど、おかしさ、面白さを感じていきます。
 じつは、これが「皮肉の面白さの原理」なのです。そして、困る状況が「切羽詰まっていればいるほど」、おかしさ、面白さも増していきます。
 物語の皮肉を作るポイントは、この「困った、切羽詰まった場所、状況」をいかに設定していくかです。
 困った、切羽詰まった場所、状況というのは、一言でいうと「緊張するような状況」の ことです。たとえば、入社試験の面接、お見合い、結婚の許可を得るといったような「失敗できない、チャンスが一回しかない、大事なこと、ピンチ、追い込ま れている」という状況を作れば、そこで登場人物の期待すること、望むことと正反対の事態になっていけば「皮肉」を作ることができます。
 皮肉は「緊張」が生みだすのです。

     

皮肉を含んだ「ログライン」を作って、シーン発想のきっかけにしていこう!

 では、シーン発想のきっかけとなる「皮肉」要素を作る具体的な方法を進めていきましょう。
 皮肉の状況は、「ログライン」という形で具体化させていきます。(ログラインについて詳しく知りたい方は無料創作講座「基礎編」、または拙著の方で詳しく解説しておりますので、そちらを参照してください)
 以下のような文章の「〇〇」の部分に自分で要素を書き込んで、皮肉のログラインを作ってみましょう。

 

パターン①「場違いな人が、場違いな場所で、場違いなことをするハメに……」

 

(人物の職業、地位) (場違いな場所)で、

(場違いな行動)」をするハメに。

  

例:「魔王が、現代日本で、幼稚園の先生をするハメに」

 ポイントは、できるだけ「ハード」な職業の人が、できるだけ「ほんわかした」ことをするようにしていくと面白くなります。
 または、その逆で「ソフト」な職業の人、平凡な人が、できるだけ「ハードなこと」、「非凡なこと」、「危険なこと」に巻き込まれ、それをやらされるハメにしても面白くなります。

例:「どこにでもいる平凡な高校生の男の子が、修学旅行で、なぜか殺し屋から命を狙われるハメに」

例:「どこにでもいる平凡な高校生の女の子が、手違いでアイドルデビューするハメに」

 考え方としては、どれかひとつの要素を固定して考えていくと、 作りやすいと思います。「魔王が」ということを固定すれば、「どこで」「何をするか」を、できるだけ「魔王のイメージと遠いもの、ギャップとなるもの」で 考えていくようにします。すると、たとえば「迷子センターで迷子の親を探す」や「老人の訪問介護する」、「日本の田舎にホームステイする」といった「悪、恐怖、こわい、地位が高い」という魔 王の持つイメージとギャップのある面白いアイディアを考えていくことができます。
 行動の方を固定すれば、たとえば「事件を推理、解決する」とい うふうに決めれば、それをするといちばん面白い(意外性のある、遠い、ギャップのある)職業、人物は何か? と考えていくことで、面白いアイディアを作っ ていけます。事件を解決するのは刑事というのが常識的な典型的なイメージですが、それが「推理作家」、「医者」、「教授」などの頭の良さそうなイメージの 職業はもちろん、「タクシードライバー」、「葬儀社の社長」、「ルポライター」、「占い師」、「神父」なんていう意外な職業から、「落語家」や「腹話術の 人形」などの事件の推理とは最も遠いところにある意外な職業、人物までが事件を解決する推理ものがあります。
 ログラインを考えていくときは、どちらも同時に考えるとなかなか難しいので、どれかひとつの要素を決めて、それに対しての意外性を考えていくようにしましょう。

   

パターン②「あろうことか、一番やりたくない人物と一緒に何かをするハメに……」

 

(人物、または職業)と「(イヤな人物、反対の職業)が、
一緒に「
(行動、目的)するハメに。

             

例:「物理学者とオカルト研究家が、一緒に幽霊退治をするハメに」

 ポイントは、一緒に行動する二人の人物は「水と油」というような、対立関係の者、真反対の価値観、行動理念を持つ者同士にしていくと、面白くなっていきます。たとえば、「犯人と刑事」とか「勇者と魔王」とか「別れた元夫と元妻」など、絶対に協力しないような二人を協力させていくと面白さを出していくことができます。
 行動に関しては、二人の共通の利害関係から発想していくといいかと思います。このパターンに関しては、「何をするか」も重要ですが、「どうやってするか」という手段、方法での意外性が重要になってきます。

例:「平凡な一般人が、トップアイドルと、一日限りの恋人になることに」

 または、「対立する二人」という以外に、「知り合うことのない遠いところにいる二人」というパターンもあります。映画『ローマの休日』などはまさにこれです。王女と一介の記者がデートをしていきます。身分も住む世界も違う二人が知り合って、しかも恋に落ちてしまうところに面白さがあります。

       

パターン③「したいことが、ジャマが入ってできない」

 

(望むこと、期待すること、願望) したいときにかぎって、
(望むことと反対の出来事、状態)になってしまう。

    
例:「取引先の会社へ急ぐ遅刻しそうなときに限って、テロリストに駅が占拠されて人質になってしまう」
     
 これも、どちらか一方を決めて、もう一方の意外性を考えていくのが有効です。
 とくに主人公が望むこと、期待していること、やろうとしていることは、「切羽詰まっていること、必死になっていること」といった、それを「強く切望していること」、人間の持つ原初的欲求(生存、恋愛、結婚)に関するものにしていくと、より面白くなります。
    
      

 これらのログラインを作って、そこから思い浮かんでくること、シーンをふくらませて物語を発送していってみてください。

参考:第8章 作品をつくろう!

■実践編vol.06 創作コラム「独自性」があるということ

■実践編vol.07 「読者が主人公を好きになるシーン」からキャラクターを作るコツ

■実践編vol.08 「皮肉」のログラインから、シーンを発想していこう!

■実践編vol.09 「25の皮肉のパターン」と「皮肉のログラインPart2」

■実践編vol.10 ログラインは「主人公について書かれたもの」である!

■実践編vol.11 物語はどこから作る!? キャラクターの「職業と目的」が決まれば、ストーリーも設定も自動的に決まる!

■実践編vol.12 クライマックスの面白さを生み出す「22の問題解決方法のパターン」

■実践編vol.13 創作コラム:人は「偶然」に憧れ、それを味わいたいと思っている

■実践編vol.14 「主人公の感情の変遷」こそがストーリー構成のカギを握る!

■実践編vol.15 『シン・ゴジラ』と『涼宮ハルヒ』の作り方は全く同じ!?  魅力的なキャラクターは、「登場する前」に立っている!

 

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コメント

こんにちは。質問なのですが、物語の三つの障害を作るのに困ってます。声優を目指す主人公なのですが、何を障害にしたらいいのか、障害の作り方を教えてもらえないでしょうか。何かヒントなどはありますか。よろしくお願いします。

投稿: 砂時計 | 2014年6月28日 (土) 19時37分

砂時計さま

ご質問ありがとうございます!
お役に立てるかわからないですが、お答えさせていただきます。

砂時計さまの主人公は「声優を目指している」のですね。そしてそれを妨げる「障害」をどう作っていくか、ということですね。

障害を考える上では、太宰治の名作『走れメロス』を思い浮かべるとわかりやすかと思います。
主人公メロスは、身代わりに人質になった親友の命を救うため、また王に信じることの大切さを証明するために、遠く離れた村から走って城へ戻っていきます。しかし、その道中、橋の決壊や山賊、日照り、極度の疲労などの様々な障害がメロスを襲います。
そう、障害とは「主人公が物語りの中で成し遂げようとしていることをジャマする」要素なのです。
つまり、障害を設定するには、「主人公が物語の中で何をしようとするのか、何をしなければならないのかが明確になっている」必要があります。
これが障害を設定する上での大切なコツです。
これらを踏まえて、以下のような手順で障害を設定してみてください。

①まずは、声優を目指す主人公の物語上の到達目標(ゴール)を決めます。たとえば、「オーディションに合格して役をもらう」とか「演劇の公演を成功させる」などです。

②次に、その目標へ到達するために「何をするべきか」、必要な行動やモノなどを洗い出していきます。

③そして、その到達目標へ向かって進んでいく主人公を「ジャマ」していきます。
つまり、主人公が目標に到達するための行動が取れないようにしていくのです。
具体的には「アクシデントやトラブル、ハプニング」などを使うといいかと思います。
また、人を障害にしても面白くなります。主人公と利害関係が対立する人物に主人公をジャマさせてみてください。
葛藤を設定しても、読者を引きつけることができます。目標の到達か同じぐらい大切なものかの二者択一を迫るのです。

長編の作品ということなら前半、後半、クライマックスで三つの障害を作っていきます。ということは、つまり「物語前半で主人公が行うべきこと」、「物語後半で主人公が取り組むべきこと」をそれぞれ決めていくことが重要です。そしてクライマックスでは、もう少しで目標へ到達しそうな主人公を絶望させるような出来事を引き起こしていくのです。

障害となるべき要素は、自然現象、移動、距離的なもの、時間的な制約、状況的なもの、場所、環境的なもの、目標到達に必要な要素や物の喪失または取得の困難、敵対する存在、信頼する者の裏切り、意外な秘密、人間関係のこじれ、誤解、勘違い、身分の差や掟、法律、しきたり、ルール……などです。

……こんなかんじで三つの障害を作ってみてくださいネ!

投稿: 谷口剛司 | 2014年6月28日 (土) 21時01分

こんばんは。お返事ありがとうございました。先生のヒントを見ながら、もう“一度シーンから作る”所から始めてみようと思いました。初めて最後まで描きたいと思った小説ですので、頑張りたいと思います。これからも参考にさせてもらいながら、また質問をしたいと思います。本当にありがとうございました。

投稿: 砂時計 | 2014年6月29日 (日) 22時04分

こんばんは
いきなりですが、今考えている話は『不器用な山賊の跡取り息子が偉大な父を超える』というテーマで構想を練っています。
ちなみにこの山賊は所謂義賊で、民衆に愛されているという設定です。
知勇に優れ、その采配で山賊ながら大国にも引けをとらない偉大な父と比べ、主人公は凡庸でどうにも不器用、しかし理想だけは一丁前に高い。
ヒロインの立ち位置は、あるとき主人公達のアジトを訪ねてきた頭のキレる少女で、後に参謀として主人公を支えていくという設定です。
さらに物語の中盤で父が戦死し、強大な帝国軍を敵に回した状態で主人公は父の跡を継がざるを得ない。
ここまで考えたは良いものの、主人公やヒロインに一つ、捻りの効いた設定が欲しいのですが……どうにも思い付きません。
この設定に皮肉を効かせるとしたらどういうものが考えられるでしょうか?
また、設定に対して何かアドバイスを頂けたら嬉しいです。

投稿: | 2016年10月 2日 (日) 22時23分

ご質問ありがとうございますcat

とても面白そうな物語ですね!
父と息子の物語はワタクシも大好きです。今、大河ドラマでやっている『真田丸』などはすっごくツボでございます!

さてさて、皮肉の要素を作品で出していきたいとのご質問ですが、ワタクシはキャラクターこそが物語の面白さにとっていちばん大切な要素であると考えている人間なので、皮肉を効かせるとしたらキャラクターに関することです。

最も基本的な皮肉は「一番やりたくないこと、向いてないことをやらなければいけなくなる」または「一番嫌なことをやらなければいけなくなる」さらには「一番イヤな相手と一緒にやらなければいけなくなる」といったものです。

この物語の設定からすると、

①「父が山賊であることが大嫌いな息子が、大嫌いな山賊の首領の跡を継がなければいけなくなる」

②「臆病で力も弱く背も低い息子が、父の跡を継いでまったく向いていない山賊の首領をやることになる」

③「山賊である主人公と山賊を取り締まる側である帝国の役人(騎士?)のヒロインが、協力して巨悪やモンスターを討つ、またはさらわれた人々を助ける」

というような形になるのかなぁと思います。
これらの要素を、質問者様の物語の設定に取り込んでいかれるといいかもしれません。

そして、もしワタクシがこの物語を作るとしたら、質問者様の描きたいモチーフから外れてしまうかもしれませんが、山賊の首領である父親が死ぬところから物語を始めると思います。
ツカミのインパクトを出すのと主人公の皮肉の状況の面白さを最初に提示して読者を引っ張っていくためです。
また、ヒロインと主人公は敵対する立場にいる者同士のほうがいいかもしれません。そして、最後はもちろん恋人同士です。

それらを踏まえた上で、①の場合は、父親が義賊だったというのは後からわかったほうがいいかもしれません。金品を強奪する父が許せない息子だったが、じつは父親は悪人からしか金品を奪わず、奪った金の大半を貧しい人や孤児のために使っていたことがわかる、という感じで描いていきます。(←ここがミッドポイントでしょうか)そんなときに、その貧しい人や孤児たちを皆殺しにするような帝国の陰謀を知り、それらの人々を助けるために父の跡を継いで戦っていく、といった具合になっていくのかなと思います。
②の場合では、意気地がなく臆病で心優しい主人公が、山賊をやらなければいけなくなってトラブルや失敗を連発する爆笑のドタバタシーンを前半で描きながら、ミッドポイントで父親が死に、そんなときに帝国が襲ってきて人々が虐殺されていく、そこで父がじつは帝国の兵士から人々を守るために戦っていた義賊だったことを知り「おまえならできる」という父の言葉を思い出して、立ち上がっていくという展開にします。主人公は力はないが天性の知恵者で、計略を持ってわずかな手勢で帝国の大群を打ち破るというような形にするといいかもしれません。
③の場合であれば、物語冒頭で死んだ父の跡を継いだ主人公は山賊をやることは嫌ではない(むしろそんな父を尊敬していた)、そんなところへ帝国の騎士(?)として山賊討伐の任を受けて来たヒロインと出会い、最初は敵対していたが(一騎打ちシーンとかで主人公とヒロインのバトルを描きます)、ひょんなことから打ち解けていく(←打ち解けるところでミッドポイントかな)、そんなときにヒロインは、帝国が行おうとしている恐ろしい、邪悪な陰謀を知ってしまい命を狙われることに、頼れるのは山賊の主人公のみ、そんな事情を知った主人公はヒロインとともに協力して帝国の野望を打ち砕くために戦っていく、というような「バディもの」の物語になるかと思います。

ワタクシだったら、この3つのようなプロットを下に敷いて、物語を描いていくと思います。

お役に立てるかどうか不安ですが、また描きたいのはそれじゃないんだという質問者様の思いもあるかもしれませんが、何かの参考になれば幸いです。

ぜひぜひ、面白い物語を生み出していってみてください。応援しております。

投稿: 谷口剛司 | 2016年10月 6日 (木) 21時46分

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