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2014年6月 6日 (金)

■恋愛編vol.12 【ストーリーパターン④】 「恋人の命と世界の平和、どっちか選べ」

Renaibana012


愛する人の命か、世界の平和か、「究極の選択」のラブストーリー

 次のパターンは、「恋人の命と世界の平和、どっちか選べ」です。
 これは、「主人公が『大切な恋人(又は配偶者)』と『とても大切なもの』をどちらか一つを選ばなければいけなくなる、どちらを選び、どうなるのか」という物語です。
 このパターンの読ませどころは、この「葛藤(込み入った難しい選択で悩むこと)」です。
 このパターンは、「二人が結ばれるかどうか」ということを描くのではなく、すでに愛し合う二人が「どう引き裂かれてしまうのか」というところを描いたストーリーとなります。
 葛藤という要素により、「恋人」と、それと同じぐらい「大切なもの」のどちらか一つを選ばなければならないという状況に主人公と恋人が置かれ、その主人公たちはどのような決断をするのか、それらの興味がこのパターンの読ませどころとなります。

        

このパターンで描かれている参考作品『ロミオとジュリエット』『存在の深き眠り』『キャッツ・アイ』

 ドラマは「葛藤」であると言われています。
 そして、それはラブストーリーにも当てはまります。「愛する者」と「大切なもの」の二者択一は、古くから物語のモチーフとして広く描かれてきました。
 このパターンで最も有名な作品が『ロミオとジュリエット』です。
 創作講座基礎編でも述べましたが、 ロミオの家モンタギュー家と、ジュリエットの家キャピュレット家は血で血を洗う抗争を繰り広げている敵同士。しかし、その敵同士の家の息子と娘があろうことか恋に落ちてしまいます。ロミオは、家や親との家族関係を取ればジュリエットと戦わなければいけない、しかしジュリエットとの恋を取れば家族や親、家を失ってしまう。恋人をとるのか、家族をとるのか……、これが葛藤のラブストーリーです。
 このパターンは、恋人と天秤にかけられる要素にバリエーションを持たせていけば、さまざまなストーリーを作っていくことができます。
 もう一つの例では、ジェームス三木脚本の舞台『存在の深き眠り』にも魅力的な葛藤が描かれています。
 この作品の主人公は精神科医であり、多重人格に苦しむ女性患者の治療をしています。しかし、あろうことか主人公は、女性の持つ多重人格の中の女性格の一つの人格に恋をしてしまうのです。
 医師としては、患者を治療するためにその人格を消していかなければいけません。しかし、個人としては愛する女性(の人格)を消したくない。主人公は、医師として治療をとるのか、男として恋をとるのかで葛藤していきます。
 また、マンガ『キャッツ・アイ』も葛藤で作られています。
 主人公は女怪盗(泥棒)で、その恋人は男性刑事です。恋人の刑事は、怪盗キャッツ・アイを追っていますが、自分の恋人がにっくきキャッツアイだということは知りません。二人の恋愛はどうなるのか、もし正体がバレたら……と考えると、読者は作品に釘付けになっていくのです。
 このように、葛藤の要素を作っていけば、面白いラブストーリー、切ないラブストーリーを簡単に構想していくことができるのです。

     

「選択できないこと」を選択させていこう!

 このパターンは、いかに葛藤を作っていくかというところが、ポイントとなっていきます。
 このパターンの場合、葛藤の設定は「恋人(又は配偶者)」と「大切な何か」の二者択一をさせることで生み出すことができます。
 たとえば、「恋人と家族」、「恋人と出世」、「恋人と世界の平和」など、どちらか選ばなければいけないと言われたときに、どちらも選択するのが難しいというものを設定して、主人公にそれらを選択させていくようにしましょう。

     

葛藤を取り入れれば、「切ないラブストーリー」が作れる!

 ラブストーリーに葛藤の要素を取り入れることで、切ない物語を容易に作っていくことができます。
 切ないラブストーリーを作るには、「愛し合うのに結ばれない」という状況が必要です。葛藤は、それを演出するのにピッタリのモチーフです。
 主人公は、恋人ではない、もう一方のものを選択することで恋人を失っていきます。場合によっては、恋人の命を失うという場合もあるかもしれません。主人公が恋人のことを愛していればいるほど、その別れは切なくなっていくのです。
 読者は、主人公の置かれた苦しい状況に同情し、数奇な運命に翻弄される二人を大きな興味を持って見守っていくのです。

      

このパターンを作るときのコツ、ポイント

 このパターンのを作るときには、以下のようなポイント、コツがあります。

◇このパターンに必要な登場人物
 (1)主人公(男性、女性どちらでも)
 (2)愛し合う異性(男性、女性どちらでも)
 (3)二人の恋の良き理解者

◇ストーリーの展開の流れ
 ①主人公と副主人公、深く愛し合っている。
 ②そんなとき、主人公に事件が起こり、「恋人」か「同じぐらい大切なもの」のどちらかを選ばなければいけない事態になる。
 ③主人公にとっては「恋人」も「大切なもの」もどちらも大切、しかし、選べるのはどちらか一方だけであり、選ばなかった方は失うことに。主人公、大いに悩む。
 ④二人の良き理解者が、二人にアドバイスをする。
 ⑤主人公、どちらかを選ぶ。
 ⑥選んだ「結果」が示される。

◇セントラルクエスチョン
 このパターンを描くときは、以下のようなセントラルクエスチョンを描いていくことを心がけてストーリーを構成していきましょう。
 ①「恋人を選ぶのか、大切なものを選ぶのか」
 ②「主人公の選択の結果、二人はどうなるのか」

 

ポイント① 葛藤の作り方
 このパターンの命ともいうべき「葛藤」は、以下のような手順で作っていきましょう。

 (1)まず、主人公にとって大切な「恋人、または配偶者」を設定する。
 (2)次に、恋人と同じぐらい「大切なもの」を設定する。
 (3)どちらか一つを選ばなければいけないという「状況」を設定する。

 最も簡単な例は、「恋人」と「世界の平和、他の人達の命の安全」での二者択一です。
 たとえば、ファンタジーであれば、(2)を「世界の平和」と設定すれば、(3)を「魔王を倒す力を得るには、恋人の心臓を捧げなければいけない」という状況を設定することで、「恋人の命」と「世界の平和」、どっちかをとらなければならないという「葛藤」を作り出すことができます。
 SFならば、(2)に「みんなの命」と設定すれば、(3)を「爆発する宇宙旅客船から乗客ともども脱出しなければいけない、でも皆が脱出するには、誰か一人が中央制御室で宇宙船をコントロールし続けなければいけない、そしてそれができるのは恋人だけ」という状況を設定することで、「乗客みんなが助かるには、恋人の命を犠牲にしなければいけない」という葛藤を作ることができます。

 

ポイント② 『ロミオとジュリエット』をアレンジして、「敵対関係にある者同士の恋愛」のストーリーを作ってみよう 
 手っ取り早くこのパターンのラブストーリーを作っていくには、『ロミオとジュリエット』の設定を下敷きにして、それをアレンジしていくことで作っていくことができます。
 この『ロミオとジュリエット』の面白さを一言でいえば「敵対関係にある者同士の恋愛」ということになります。この設定を、作品の世界観に合わせてさまざまにアレンジしていき、葛藤のラブストーリーを作っていくのです。
 たとえば、「敵対する国、組織、グループ、流派、種族、里の人間を愛してしまう」、「自分が戦っている敵を愛してしまう」、「刑事が泥棒を愛してしまう(又はその逆)」、「肉親の仇と恋に落ちる」などです。
 こうした、敵対者同士の恋愛を描けば、当事者は必ず「敵を倒すか、恋をとるか」の選択に迫られます。それによって、魅力的な葛藤を作っていくことができます。
 世界観やジャンルを決めたら、この「敵対関係にある者同士の恋愛」の形にはめ込んで、葛藤を作ってみましょう。

 

ポイント③ 悩ませる!
 創作講座基礎編でも述べましたが、葛藤を描くときは、十分に当事者たちを「悩ませる」ということがポイントです。
 せっかく葛藤を作っても、当事者同士が悩まずに、はじめから選択ありきで、早々と結論を出して行動をしてしまうと、作品の面白さが半減してしまいます。
 このパターンを描くときは、結論を急いではいけません。二人の良き理解者などの助言に耳を傾けながら、あらゆる可能性を試して、それでもダメで、どうすることもできずに、最後に泣く泣く決断をする、というように主人公たちを追い込んでいきましょう。
 その結果、ハッピーエンドになってもいいですし、恋人を失う悲しく切ないラストでもいいのです。
 また、葛藤を描く場合は、少なくとも主人公が一回は「どっちもとる」という選択を試すようにしましょう。それが、最後の結論でもいいのです。『ロミオとジュリエット』も、ある策によって「どっちもとる」という選択を最後にとっていきます。しかし、その結果は、かくも切ないものになっていきます……。
 要は悩むかどうかです。葛藤のラブストーリーの面白さは、当事者同士が悩み、苦しむところにあるのです。

 それでは、これらのパターンをストーリーのテンプレートとして、そこに自分の設定を当てはめて「恋人の命と世界の平和、どっちか選べ」の物語を作ってみましょう。

参考:第8章 ラブストーリーのパターン

■恋愛編vol.09 パターン①「《かわいそうなあの娘》は、幸せになれるのか」

■恋愛編vol.10 パターン②「《大嫌いなあいつ》と協力して問題を解決する

■恋愛編vol.11 パターン③「モテない男が美女と恋仲になる」

■恋愛編vol.12 パターン④「恋人の命と世界の平和、どっちか選べ」

■恋愛編vol.13 パターン⑤「恋人は不治の病」

■恋愛編vol.14 パターン⑥「どっちの相手とくっつくのか? 誰を選ぶのか?」

■恋愛編vol.15パターン⑦「偽物の恋が、本物の恋になっていく」

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