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2014年6月 6日 (金)

■恋愛編vol.13 【ストーリーパターン⑤】 「恋人は不治の病」

Renaibana013    

純度の高い恋を描ける、「極限状態での悲恋のラブストーリー」 

 次のパターンは、「恋人は不治の病」です。
 これは悲恋の物語であり、「愛する人が病に冒され、あとわずかしか一緒にいることができないという時間に限りがある極限状態での二人の恋」というところが、このパターンの読ませどころであり、面白さのポイントです。
 愛し合う二人は、いずれ「死」という最大の障害によって引き裂かれていきます。二人はそのことを重々承知です。しかし、そのわずかに残された時間の中で、二人は愛を育み、その愛の純度を限りなく高めていくのです。そんな状況で二人はどう愛し合うのか、どのようなことを思い、考え、どのようなことを行い、どのようなことを言うのか、極限状態でしか描けないキャラクター同士のやりとり、そのリアクションがこのパターンの最大の読ませどころとなります。
 このパターンには、ラストが大きく二つに分かれます。「恋人が亡くなるラスト」「恋人の命が助かるラスト」です。恋人が亡くなるラストの場合、読者は、悲しいながらも二人の純粋な愛に深い感動を覚えていきます。恋人の命が助かる場合、読者は本当に嬉し涙を流して二人を祝福するでしょう。

      

このパターンで描かれている参考作品『恋空』『世界の中心で、愛をさけぶ』『風立ちぬ』『半分の月がのぼる空』『タイタニック』

 このパターンは、悲恋の代名詞とも言えるパターンです。このパターンを使って書かれた作品には、切なく悲しいラブストーリーが多くあります。ケータイ小説ブームなどの一時期の恋愛ものは、このパターンが多用されていました。その中でも代表的な作品が小説『恋空』、『世界の中心で、愛をさけぶ』です。これも、恋人が不治の病にかかり、その状況の中での二人の恋愛が描かれています。
 宮﨑駿最後の長編映画であるアニメ『風立ちぬ』もこのパターンです。主人公と再会するヒロインは結核を患っており、残された時間が短い中で二人は夫婦の契りを交わします。
 この作品には、恋人が不治の病という状況に加えて、仕事と病に冒された妻との時間のどちらを取るのかという葛藤が設定されています。仕事に忙殺される主人公は、なかなかヒロインとの時間を取れずに苦しんでいきます。仕事で成功を収めても、それは病の妻との時間を犠牲にして、それと引き換えに成し遂げたことであり、主人公は非常に苦しい状態に置かれます。これらの設定が作品に深みを与えていきます。
 ライトノベル『半分の月がのぼる空』もこのパターンですが、この作品は、死による二人の離別による悲劇というものに頼らない形で、二人の極限状況での恋愛が描かれています。
 また、病気ではない形で二人が死別する応用パターンとして映画『タイタニック』があります。これは、ラストで「事故(船の事故)」という形での別れが二人を襲っていきます。愛し合う二人がラストで死別するという構造はそのままなのですが、それを病気ではなく事故にし、その事故をアクションたっぷりで見せていくことで、ラブストーリーとパニックものという二つのジャンルの組み合わせに成功しています。

     

悲劇に頼り過ぎない! このパターンは、いかに「味付け」をするかが勝負のカギ!

 このパターンは、その破壊力の強さから、昔から多くの作品のモチーフとして使われ、その結果、現在ではかなり飽きられつつあるパターンでもあります。
 また、このパターンの作品は、最後に待ち受ける悲劇、二人の離別というものがあるため、ややもすると作品のストーリーの流れがパターン化してしまい、悲劇に頼ってしまってストーリーがありがちなものになってしまったり、悲劇を描くことによって感動させようという計算が見えすぎてしまい、逆に読者が冷めてしまってあまり感動しなくなる危険性があります。
 その意味では、現在このパターンを書くのは、結構難易度が高いといえるかもしれません。
 それらのリスクを克服する手段としては、やはり独自性のある要素で味付けを加えていくということです。
 悲劇だけで見せようとせず、それ以外の、読者を楽しませ、面白さを生み出す要素を組み合わせていくことで、ストーリーの幅を広げて、パターン化を防いでいくことができます。
 また、最後に待つ悲劇に頼り過ぎず、悲劇を描くことに焦点を当て過ぎず、途中経過、極限状態を使っていかにキャラクターを描き、キャラクターを立てていくかに焦点を当てていくことで、作品を魅力的に描くことができます。
 間違えてはいけないのは、このパターンは単なる悲恋、悲劇を描くのではなく、極限状態、悲恋という状態の中でキャラクターがどんな行動、言動をするか、どんな気持ちを抱くかといった「普段の日常では描けないキャラクター」を描いていくためのパターンなのです。

    

このパターンは、「サブキャラのサイドストーリー」として描くと作品の良いスパイスとなる

 現在、このパターンは、単独で使うのではなく、サブキャラのサブストーリーとして隠し味的に使うのが有効です。
 普通のストーリー作品に恋愛要素を加えるときに、このパターンの悲劇、悲恋を加えていくと、いい感じで盛り上がっていきます。

    

応用パターン①「夫婦の最期を描く」

 このパターンを応用すると、夫婦の「死による別れ」、そのときに発生するドラマを描いていくことができます。
 夫婦、とくに年配の夫婦の最期の別れ、長年寄り添った二人が相手の余命を知ったとき、その相手との最期の時をどう生きるか、それは作品として描くに値する奥深いモチーフです。
 若い恋人にはない、長年共に生きてきた夫婦だけが持つ絆、関係性が物語に深みを与えてくれます。

 

     
応用パターン②「恋人以外の二人の別れ」

    
 このパターンは、「ラストの二人の死別」というものが核となっているストーリーパターンです。これは、裏を返せば「ラストで二人が死別するならば、そこへ至るまではどんな経緯を経てもいい、どんな関係性でもいい」ということです。
 これはラブストーリーという範疇から離れてしまうかもしれませんが、恋人ではない大切な二人(異性、同性限らず)が死別する、あるいは二人が出会って、知り合って大切になって死別するなど、恋人同士ではなくても二人の死別を描くことでこのパターンのストーリーを作っていくことができます
 この応用パターンの例として、次のようなエピソードがあります。
 これは芸人の江頭2:50さんにまつわるエピソードとしてネットで語られているもので、出処は不明で、ご本人は「ガセネタ」だと言っておられるそうですが、これを物語としてとらえた場合、このパターンの応用パターンで、こんなストーリーも作れるという好例だと思います。
 以下がそのエピソードです。
         
『江頭がとある公園でロケをしていると、公園の隣にある病院から抜け出して来ていた車椅子の女の子が江頭のロケを見ていた。
ロケが終わり、その車椅子の女の子は江頭に『つまらねーの』とつぶやいた。
それを耳にした江頭は当然『お前、もう一度言ってみろと』怒鳴った。
車椅子の女の子『だって全然面白くないんだもん』と呟いた。
江頭『なら、お前が笑うまで毎日ここでネタを見せてやろうか』
そして、断言どおり毎日仕事の合間にその公園に行っては車椅子の女の子にネタを見せ続けたのだ。
しかし、車椅子の女の子を笑わせるどころか呆れさせていたのは言うまでもない。
1ヶ月が過ぎた時、毎日のように散歩に来ていた車椅子の女の子が突然、来なくなってしまったのだ、次の日も女の子は姿を現さなかった。
そして、1週間が過ぎたある日、女の子がふと現れたのだ。
江頭はすかさず駆け寄りいつものくだらないネタを見せたのだ、しかし、いつもは全く笑ってくれない女の子が初めて少し笑ってくれた、江頭は調子に乗り、下ネタを連発してやった。
当然女の子は『それは最低…』と一言。
そして、日も暮れ、 江頭は『また、明日も来るから、ちゃんと待ってろよ』
女の子『勝手に来れば!!』
次の日、女の子は公園には訪れなかった。
江頭は頭にきて隣の病院に行き、車椅子の女の子を探した。
そして、担当の看護婦から、女の子が最近から急に容体が悪化していて、今朝他の病院に運ばれ、昏睡状態だという事を知らされた。
そして、看護婦に女の子の日記を渡された。
そこには…『大好きな芸人、江頭』と書かれていた。
10年後 今でも月に一度はその公園に来ては、花を手向け一人でネタを披露するそうだ。
俺は江頭ほど純粋な男を知らない。』

      
 これが事実か創作かは別にして、江頭さんと女の子は恋人ではありませんが、女の子にとって江頭さんが大切な存在になっていったことが、ラストの日記のくだりでわかります。
 恋人に限らず、大切に想う二人がラストで死別するというこのパターンは、じつは様々なストーリーのバリエーションを幅広く作っていくことのできるパターンなのです。 

        

このパターンを作るときのコツ、ポイント

 このパターンのを作るときには、以下のようなポイント、コツがあります。

◇このパターンに必要な登場人物
 (1)主人公(男性、女性どちらでも)
 (2)不治の病に侵されてしまった恋人(男性、女性どちらでも)

◇ストーリー展開の流れ(その1)
 ①主人公と恋人、深く愛し合っている。
 ②そんなとき、恋人が不治の病であることが判明する。
 ③限られた時間の中で愛を確かめ合い、絆を深める二人。
 ④ラスト、恋人は病の中、主人公への愛を抱きながら亡くなる。
  または、奇跡が起こり、恋人の病気が回復し、元気になった二人は永遠の愛を誓う。

◇セントラルクエスチョン
 このパターンを描くときは、以下のようなセントラルクエスチョンを描いていくことを心がけてストーリーを構成していきましょう。
 ①「主人公は不治の病に侵された恋人を好きなままでいられるのか」
 ②「極限状態で二人は、どんな恋愛をするのか(どんな取捨選択をするのか)」
 ③「二人はどうなってしまうのか」
 ④「恋人の病状はどうなるのか。治るのか、それとも……」

●このパターンには、もう一つのストーリー展開があります。次の展開がそれです。

◇ストーリー展開の流れ(その2)
 ①主人公と恋人、互いに愛し合い、幸せな恋愛を楽しんでいる。
 ②主人公、ある日突然、恋人から唐突に別れを告げられる。理由はまったく不明。
 ③失恋して失意の中の主人公、元恋人のことを忘れようとするが、忘れられない。
 ④そんなとき、恋人がじつは不治の病で、主人公のためを思って一方的に別れたことが判明する。
 ⑤それを知った主人公、恋人に再度愛を告白し、二人は限られた時間の中で愛を確かめ合い、絆を深め合う。
 ⑥ラスト、恋人は病の中、主人公への愛を抱きながら亡くなる。または、奇跡が起こり、恋人の病気が回復し、元気になった二人は永遠の愛を誓う。

 ※その2の場合、主人公が別れを切り出した恋人が病であることを知らずに、亡くなってから恋人の真意(主人公のことが好きだということ)を知る場合もあります。

◇セントラルクエスチョン
 このパターンを描くときは、以下のようなセントラルクエスチョンを描いていくことを心がけてストーリーを構成していきましょう。
 ①「なぜ主人公は恋人から一方的にフラれたのか」
 ②「極限状態で二人は、どんな恋愛をするのか(どんな取捨選択をするのか)」
 ③「二人はどうなってしまうのか」
 ④「恋人の病状はどうなるのか。治るのか、それとも……」

ポイント① 今ならあえて「ハッピーエンド」を!
 このパターンの大きな特徴は、最期に待ち受ける二人の別れ(死別)です。
 しかし、この最期の悲劇は、あまりに多用されたため、ありきたりなものとなってしまいました。
 ですから、今このパターンを描くならば、最後は恋人の病気が奇跡的に回復するというラストの方が、逆に新鮮かもしれません。飽きられた悲恋を描くよりも、ご都合主義かもしれませんが、二人のハッピーエンドを描く方が、今の状況では読者に感動を与えることができるのではないでしょうか。
 ラストの悲劇がなくても、このパターンは魅力的なストーリーを描いていくことができます。
 大事なのは、最期の悲劇ではなく、極限状況でのキャラクターを描いていくことなのです。

 

ポイント② 「二人の悲恋」以外の要素を充実させよう 
 このパターンを今用いる場合、どれだけドラマを広げられるかが勝負の分かれ目となります。
 そのための一つの方法として、二人の恋愛以外の要素を充実していくということが挙げられます。たとえば、グランドホテル形式にして、群集劇という形で、不治の病の中で恋愛をする二人を見ることで様々な人々が影響を受け、変化していくというような描き方もできるかと思います。
 治療をする医師の視点から描いても面白いかもしれません。
 二人の恋愛に絡めて、様々なドラマを盛り込んでいって、作品の幅を広げてみましょう。

 

 それでは、これらのパターンをストーリーのテンプレートとして、そこに自分の設定を当てはめて「恋人は不治の病」の物語を作ってみましょう。

参考:第8章 ラブストーリーのパターン

■恋愛編vol.09 パターン①「《かわいそうなあの娘》は、幸せになれるのか」

■恋愛編vol.10 パターン②「《大嫌いなあいつ》と協力して問題を解決する

■恋愛編vol.11 パターン③「モテない男が美女と恋仲になる」

■恋愛編vol.12 パターン④「恋人の命と世界の平和、どっちか選べ」

■恋愛編vol.13 パターン⑤「恋人は不治の病」

■恋愛編vol.14 パターン⑥「どっちの相手とくっつくのか? 誰を選ぶのか?」

■恋愛編vol.15パターン⑦「偽物の恋が、本物の恋になっていく」

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