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2015年6月20日 (土)

■実践編vol.11 物語はココから作ろう! キャラクターの「職業と目的」が決まれば、ストーリーも設定も自動的に決まる!

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物語作りで最も重要な要素、それは「キャラクター」である!

 エンタメ系の物語にとって最も大事なものは「キャラクター」です。なぜなら、読者は物語の中でストーリーや設定ではなく「キャラクターを好き」になり、「キャラクターに会う」ために物語を読んでいくからです。
 しかし、じつは物語を作る上でも、キャラクターは最も重要で、かつ必要不可欠な要素となっていきます。
 物語作りは、キャラクターを決めれば、ストーリー、設定、ログラインなどの物語を構成する要素が自動的にできあがっていきます。エンタメ系の物語作りでは、主人公キャラクターを作ることによって、ほとんどすべての物語に必要な構成要素を作っていくことができるのです。
 ……と、こんなことを書くと、次のような反論をする人がいるかもしれません。
「キャラクター作ったって、ストーリーなんかできないんだけど……」
「キャラクターから作れっていうけれど、実際問題、キャラクターからストーリーを作るってどうやんの?」

 そこで今回は、数ある物語作りの方法の中でも、最もオススメする「キャラクターから物語を作っていく方法」をご紹介したいと思います。

       

キャラクターから物語を作っていく手順

 キャラクターから物語を作っていくための手順は次のとおりです。

 手順① 主人公の「職業と目的」を決める
 手順② 主人公に「ギャップ」を持たせる
 手順③ 主人公のキャラクターの特徴を「強調」する
 手順④ 主人公の「行動」を決める
 手順⑤ 読者が「主人公に好感を持ち、共感し、応援したくなる要素」を加える
 手順⑥ 主人公の「行動」を妨害する「障害」を書き出し、作品の長さに応じて選んでいく

 では、これらの手順の具体的な方法を見ていきたいと思います。

 

手順① 「主人公の職業と目的を決めよう!」

 物語を作っていく上で一番最初にやることは、主人公の「職業」と「目的」を決めることです。
 拙著にも書きましたが、キャラクター作りは、性格などからではなく、主人公の職業と目的を作ることからはじまります。じつは、この職業と目的が主人公のキャラクター性を形づくっていきます。
 職業と目的は、どちらから先に考えてもかまいません。
 職業を先に決めれば、その職業上の仕事の遂行や任務の達成が主人公の目的となっていきます。
 目的を先に決めるならば、その目的を達成するために有利な職業、必要な職業を主人公に与えていくようにします。マンガ『鋼の錬金術師』の主人公エドは、失われた弟の身体を取り戻すという強い目的のために、「国家錬金術師」という職業に就いていきます。

 職業に就く年齢達していない主人公の場合は、「学業」を設定していきます。
 学業は、小中高校生、大学、専門学校という学生の身分のほか、部活動、委員会などでもOKです。または、成績や素行(優等生、不良など)、主人公の家柄や趣味(お嬢様、オタクなど)なども、「キャラクターのイメージ」として機能していきます。
 主人公の職業は、読者が抱く主人公に対する「見た目のイメージ」を決定していく最も重要な要素となります。「こいつって、こんなやつらしいぞ」という一定のイメージを読者に与えていく働きがあります。この職業による一定の見た目のイメージを使って、キャラクターのギャップを作っていきます。
 また、主人公の目的は、ストーリーの中での主人公の具体的な「行動」を決定していく原動力となります。

 この目的を決める上で重要なのはズバリ「主人公の動機」です。「~をしたい」、「~をしなければならない」という目的を決めるには、「なぜ、それをしたいと思ったのか、しなければならないと思ったのか」という動機を考えていきましょう。動機は、主人公の「過去の経験」を考えると見えてくることが多くあります。過去に「何らかの欠乏、欠落」があった、過去に「主人公が欲するもの」を見た、「不可解な出来事や事件、解明が必要な謎」がある、あったといった、事件、経験や人物の影響力によって生じた欠落を埋め、欲するものを手に入れ、不可解な謎を解明するという動機によって、主人公の目的が決まっていきます。

 目的を決める上では、ターゲットの読者層が「共感」できるような目的や願望を主人公に持たせることがポイントになってきます。
 たとえば少年マンガならば、「困っている友人を助ける、救う、守る、ライバルに勝つ、困難に立ち向かう、無理だと思うことに挑戦する」などといった目的をもたせると読者の共感を得やすくなります。
 また、どんな層でも共感を得やすい目的、願望としては、「原初的な欲求(死にたくない、素敵な異性と結ばれたい、大切な人、家族を守りたい)」、「人の道(善を行う、悪を倒す、人を助ける)」、ズルをしたい、大切な人(家族、友人、恋人)のために何かをするなどがあります。
 他にも、「読者層が持つ願望」を主人公にも与える、あるいは「読者層が解消したいと思う不満」を主人公に持たせたり、「読者層が持つ悩み、欠点、不幸な境遇、環境」などを主人公に与え、それをなんとかしたいと主人公が望むことでも共感を得やすくなります。
 ドラマ『半沢直樹』の人気が示すように、読者が共感するような目的を主人公に持たせると、読者が主人公の目的の達成を応援してくれるようになります。

 主人公を作る場合、この職業と目的が全てのスタート地点になります。

      

手順② 「ギャップを持たせよう!」

 職業と目的が決まったら、キャラクターの人物像を決めていきます。
 キャララクターの人物像とは「ギャップ」のことです。キャラクターに必ず、何らかの「ギャップ」を持たせていきましょう。
 ギャップとは「見た目」と「中身」が違っている、落差があるということです。
 面白い作品に登場するキャラクターはすべて、このギャップを持っています。ギャップは魅力的な主人公を作る上で、必要不可欠な要素なのです。

 ギャップとは、性格上のギャップではなく、「職業と人物像のギャップ」となります。
 ギャップは「職業」で作っていきます。
 主人公の職業が読者に「主人公の見た目のイメージ」を与え、主人公に、その職業に就いている人のイメージとは似ても似つかないような「正反対の人物像(中身)」を持たせることで、ギャップを作っていくことができます。
 具体的な方法としては、以前にも書きましたが、まずその職業に就いている人のイメージを書き出し、それを反対の言葉に書き換え、その反対の言葉を人物像として主人公に与えていくことで、職業とギャップとなる人物像を作っていくことができます。

 簡単な例としては、

職業:勇者
「勇者」のイメージ……「勇敢、勇ましい」

 

そのイメージを反対の言葉にすると……「臆病、怖がり」

この反対のイメージの人物を勇者という職業に就かせると、「臆病で怖がりな勇者」というギャップをもったキャラクターができます。
 この方法を使えば「暗いところが嫌いなオバケ」、「女性恐怖症のホスト」など、ユニークでドラマが起こりやすそうなキャラクターを容易に作ることができます。多くの人気作品でも、「警察官らしからぬ性格の警察官」である『こち亀』の両津勘吉、「教師らしからぬ性格の教師」である『GTO』の鬼塚英吉など、職業の見た目のイメージと人物像にギャップのある主人公が登場し、読者を魅了しています。

 また、ギャップにはもう一つパターンがあります。それは「職業と行動のギャップ」です。
 これは、「職業と人物像が一致していてギャップがない主人公」にギャップを持たせる方法です。
「職業と一致する人物像を持つ主人公」には、その職業のイメージからは想像もできないような「意外な行動、似合わない似つかわしくない行動、不向きな行動」をさせていくことでギャップを作っていくことができます。

 このように、ギャップは職業から作っていきます。
 前者の方法では、その職業のイメージと似合わない人物像を持つ主人公が、その職業の仕事という行動をしていくことがギャップとなります。
 後者の方法では、その職業のイメージと一致する人物像を持つ主人公が、その職業の仕事を遂行するために必要な行動として、その職業に不向きな、似つかわしくない、意外な行動をとっていかなければいけなくなることでギャップになるのです。
 魅力的な主人公を作るために、「職業と人物像」、または「職業、人物像と行動」という二つの方法でギャップを持たせていくようにしましょう。

 この二つのギャップに関しては『実践編vol.10「主人公」を作れば、ログラインができる!』でも、詳しく解説していますので、合わせて参考にしてみてください。

         

手順③ 「特徴を強調しよう!」
 
これまた拙著にも書きましたが、ギャップによって主人公の人物像ができたら、その人物像の特徴をいくつか書き出していき、その書き出した特徴を「強調、誇張、突出、歪曲、極端」にして、ディフォルメしていきます。また、その特徴を表すような「ついやってしまう行動、習慣、癖、リアクション、エピソード」なども考えていきます。
 ここでのポイントは、特徴を強調するからといって、何も『変人』にする必要はないということです。強調するのはキャラクターの面白味の部分(ギャップ)です。このギャップというのは「人間味」の部分です。この人間味の部分にちょっとした強調を加えてあげることで、より魅力的で、読者の共感を得るキャラクターになっていくのです。小説『ビブリア古書堂の事件手帖』の主人公・篠川栞子は、古本屋の店長なのに人と接するのが苦手というギャップを待っており、そのギャップが「緊張で人と目も合わせられない、噛みまくる、照れて耳まで真っ赤になる」などといった描写で、シャイな人は誰でも持っているような特徴が、強調されて描かれています。同様に、小説『戦力外捜査官 姫デカ・海月千波』の主人公・海月千波は、キャリアのエリート警部なのにおっとりしたドジっ娘お嬢様というギャップを持っており、「小柄、難しい四字熟語で決意を述べる、趣味がお菓子作りとピアノとハープ、極度の方向音痴、近所の不良の喫煙を注意しようとして簡単に転ばされて伸びてしまう」など、ギャップを強調した「人間的な部分」がエピソードを用いて描かれています。

 誰でも持っている、持っているかもしれない人間的な部分、特徴を強調していくことで、キャラクターの人物像がドンドン膨らんで、具体化していきます。 
      
     
手順④ 「主人公の行動を決めよう!」

 職業、目的、人物像(ギャップ)が決まり、特徴を強調してキャラクターが膨らんできたら、それらを踏まえて主人公の「行動」を決めていきます。
 じつは、この「行動」が物語を作っていく上での起点となる大切な要素となります。
 行動によって主人公のキャラクター性や考え方、価値観が表に現れ、主人公は行動することによって命が吹き込まれていきます。
 また、主人公が行動する様子、経過、その結果が、そのままストーリーとなっていきます。
 さらに、主人公が行動するときに、どんな状況、場所、主人公の状態で行動をしていくかが設定となります。
 これが、主人公を決めれば、物語ができるという本当の理由です。

 

 主人公の行動を生み出すのは、主人公の職業と目的です。仕事や目的を達成するために何をしていくか、その内容や方法を考えて行動を決めていきましょう。

 物語はこれらの「主人公の目的」、「主人公の職業」、「主人公の人物像」、「主人公の行動」を決めていくことによって、作っていくことができるのです。

      
 面白い作品は、必ずこれらの要素が密接に結びついて物語が形作られています。

『鋼の錬金術師』 主人公:エドワード・エルリック
 職業……「国家錬金術師」
 目的……「体を失った弟の体を元に戻す」
 欠乏……「弟の体が失われた」
 欲しいもの……「賢者の石」(無限の魔力を秘めたアイテム、弟の体をもとに戻せるかもしれない力を秘めている)
 行動……「弟の体を元に戻せるかもしれない力を秘めた賢者の石を探す旅に出る」

『七つの大罪』 ヒロイン:エリザベス  
 職業……「王女」
 目的……「荒廃した王国を救う」
 欠乏……「王国の荒廃」
 欲しいもの……「伝説の騎士団《七つの大罪》」
 行動……「国を救う力を借りるため、七つの大罪を探し出す旅に出る」

『千と千尋の神隠し』 主人公:千尋
 職業……「小学生」
 目的……「ブタにされてしまった両親を救い出し、元いた世界に戻る」
 欠乏……「不思議な世界に迷い込み戻れなくなる、両親がブタにされてしまう」
 行動……「両親を救う機会を得るため、湯屋で働く」

『ルパン三世』 主人公:ルパン
 職業……「怪盗」
 目的……「世界中のお宝を手に入れる」
 行動……「各地の美術館、博物館、銀行などに侵入し、金銭や財宝を盗み出す」

『ソードアート・オンライン』 主人公:桐ケ谷和人(キリト)
 職業……高校生(ゲーム内では剣士)
 目的……「閉じ込められたオンラインゲームの仮想空間から無事に脱出する」
 欠乏……「命の危機(ゲーム内で死ぬと、現実にも命を落とす)」
 行動……「最上部第100階層のボスを倒してゲームをクリアする」

『エヴァンゲリオン』 主人公:碇シンジ
 職業……「エヴァンゲリオン(ロボット)のパイロット」
 目的……「平和を守る、敵から秘密組織の本部を守る」
 欠乏……「平和、安全」
 行動……「エヴァンゲリオンを操縦し、使徒(正体不明の敵)を倒す」

『BLACK JACK』 主人公:ブラック・ジャック
 職業……「医者」
 目的……「患者を治す、患者の命を救う」
 欠乏……「患者の健康」
 行動……「病気を治療する、手術する」

『天空の城ラピュタ』 主人公:パズー
 職業……「炭鉱夫」
 目的……「伝説の天空の城ラピュタを見つけて、詐欺師呼ばわりされて死んだ父親の汚名を晴らす」
 欠乏……「父の社会的信用」
 行動……「(ラピュタ人の末裔であるヒロインを救出し)、ラピュタを探す旅に出る」

 このように、面白い作品の主人公は、明確で強い目的を持っていて、その目的を達成するために力強く行動していきます。主人公が目的を成し遂げるために何をするか、これが物語を形作っていく上で、最も大切な要素になるのです。

 主人公の職業、目的、人物像、行動を決めれば、ストーリーも設定も見えていきます。これがキャラクターから物語を作っていく方法なのです。

        

手順⑤ 「読者が主人公を好きになり、共感し、応援したくなる要素を物語に与えていこう!」

 さて、ここまでの要素が決まり、おおまかにでも物語が見えてきたら、最後の仕上げ、主人公のキャラクター、ストーリー、設定の面で、読者が主人公を好きになり、共感し、親しみを感じ、応援したくなるような要素を加え、そんなシーンを登場させていきます。具体的には、次のような要素が描かれたシーンのいずれかをストーリーの中に登場させてみましょう。

●読者が主人公に好感を持つシーン

 ・いいやつ
 ・さりげない優しさ、情深い
 ・人間的な温か味
 ・誰かを助ける
 ・誰かを信じる(たとえ裏切られようとも信じ抜く)
 ・どんなことがあっても、どんな状況でも考え方、価値観がブレない、それを貫く
 ・明るい、元気、くじけない、めげない、いつも前向き
 ・悪意がない、悪口を言わない
 ・器がデカい、突き抜けている
 ・素直、変われる
 ・他者を尊重している
 ・読者が言いたくても言えないことを言い、やりたくてもできないことをやってのける

●読者が「かわいそう、頑張れ」と主人公を応援したくなるシーン

 ・つらい立場
 ・疎まれている、孤独である、左遷されている
 ・不幸な境遇
 ・不条理な仕打ち
 ・不公平な扱い
 ・いろんなことがうまくいかない
 ・片想い中、または失恋した
 ・つらい過去を背負っている
 ・ターゲット読者層が抱くような悩み、読者と同じ苦しみを抱えている

●読者が主人公に親しみを感じるシーン 

 ・意外な弱点(普通の人が平気なものが苦手、普通の人が簡単にできることができない)
 ・運がない
 ・損な役回り
 ・苦労の割に報われない(でも、ちゃんと見ている人はいる、読者もその一人)
 ・ドジ
 ・天然
 ・庶民的な部分(金銭感覚、癖、仕草、言葉づかい、生活スタイルなど)
 ・貧乏

……などのシーンです。

 これらのシーンは、普段の主人公からは見られない「ギャップ」として描いていくと、主人公と作品の魅力を大きく高めてくれる働きがあります。主人公のキャラクター性や作品のカラーに合わせて、これらのシーンのいずれかを選んでみましょう。

 プロの作った作品では、どんな凄惨な状況が描かれていても、どんなドライな主人公であっても、こういった読者が主人公に共感し、好感を持ってしまうようなシーンが、必ず何らかの形で描かれています。

 主人公が人気が出るかどうか、読者に受け入れられるかどうかは、このシーンがあるかないかにかかっているといっても過言ではありません。

 ダークファンタジーマンガの金字塔『ベルセルク』の主人公ガッツは、自分を裏切って魔道に堕ちたかつての親友を追い、身の丈ほどもある大剣を振り回して異形の魔物に単身挑む非情のダークヒーローとして描かれていますが、ときおり見せる人間的な一面、優しさが、この主人公をただの狂戦士ではない魅力的な主人公にしています。
 とくに、コミックスの37巻に収録されている「遠い日の春花」という主人公ガッツの少年時代を描いた番外編となるエピソードでは、ガッツの人間らしい優しさが垣間見えるシーンが登場し、読者が主人公に好感を持てるように描かれています。少年時代、傭兵だったガッツは敵に捕らえられ捕虜として投獄されてしまいます。そんなとき、牢の中でガッツは不思議な花の妖精と出会います。牢の床石の隙間から生え出している一本の小さな花に宿るその妖精は、ガッツの傷を癒してくれますが、それによって力を使い果たしてしまいます。それを見たガッツは、「外に出てみたい」と言っていたその妖精の思いを叶えるために、その妖精が宿る一輪の花を携えて牢の外に待つ死闘へと踏み出していきます。戦いに明け暮れるガッツの、そんな優しい一面に、読者は共感していくのです。
 TVドラマ『相棒』の主人公・杉下右京は、有能すぎて皆から疎まれ、「警視庁特命係」というお払い箱の部署に追いやられているという設定が与えられています。そんな、孤独で、同情しちゃうような境遇にある主人公を見て、視聴者は共感を覚え、また「判官びいき」の心理によって応援したくなるのです。これは、昔話『シンデレラ』の頃からずっと物語の主人公について考えるときに必要な法則です。継母や姉たちにいじめられていることによって、読者は「このかわいそうな子は幸せになるべきだ」と同情し、応援してくれます。また、シンデレラが幸せになれるかどうかに大きな興味と関心を示し、刻限の12時が来てガラスの靴忘れてしまうときにハラハラドキドキしてくれるのです。
 こんな感じで、何らかの「読者が主人公に好感を持ち、共感し、応援したくなるシーン」を物語の中に登場させて、読者を「主人公が好き」という状態にさせちゃいましょう。

       

 ここまできたら、主人公が行動するときに起きることをイメージし、書き出していきましょう。また、その行動をどんな場所で、どんなときに、どんな状況で、主人公がどんな状態の時にやったら面白くなるかを考えてみましょう。

 

主人公の行動が「ストーリー」になる!

手順⑥ 主人公の「行動」を妨害する「障害」を書き出し、作品の長さに応じて選んでいく

 では、次にストーリーを作っていきましょう。
 主人公ができていれば、ストーリーは自然に生まれていきます。
 繰り返しますが、ストーリーとは、主人公が目的を達成するために行う行動の様子、経過、その時の気持ち、その行動の結果を描いたものです。キャラクターの行動が、そのままストーリーとなります。
 しかし、なんの苦労も不自由もなく主人公の行動がうまくいき、目的を達成してしまっては、ストーリーは面白くもなんともありません。
 物語のストーリーでは、主人公は「苦労して行動し、やっとのことで目的を達成」させていかなければならないのです。
 そこで、主人公の行動を阻み、ジャマをする「問題、難題、事件、人物、困った状況」を引き起こして、主人公が容易に目的を達成できないようにしていきます。すると、主人公は目的を達成するために、なんとかしてその問題や事件、障害を解決しようと行動を開始していきます。この過程がストーリーとなっていきます。

具体例を見ていきましょう。

例)

小説『給食のおにいさん』
主人公の職業:「元フランス料理のシェフ」
主人公の目的:「火事で焼失した自分の店を再建するべく、その資金を稼ぐ」
性格:「職人気質、自分に厳しい、子供嫌い(職業と性格は一致している)」
ギャップ:職業と行動のギャップ……「フランス料理のシェフが、給食調理員をする」
ログライン:「フランス料理のシェフが、給食のお兄さんをやることに」

主人公の行動:「給食調理員として働き、小学校の給食をつくる」

それを妨げるもの……

・好みの味付けができない(給食は全ての調味料の分量が決まっているため)。
・子どもたちが「野菜嫌い」で、いくら美味しく作っても、食べてくれない。
・保健室登校の児童がいて、給食を喜んでくれない。
・各教室で、調理員と子どもたちが一緒に給食を食べる「ふれあい給食」をすることに(子どもが苦手)。
・子どものいたずらで、給食用のリフトが停止してしまい、給食の時間に給食が教室に届かなくなってしまう……
・ネグレイト(育児放棄)されている児童がいる。親の愛情を感じられず、悩んでいる。
・教員の意見をまとめて、スペシャル給食メニューを作らなければならないことに。
・有名な子役タレントだった児童がいるが、今は太ってしまっている。

 ……などなど。
 この作品の主人公は、店を再建するために給食調理員として働いていきますが、その仕事を阻むような問題や事件、困った状況が次々と起こっていきます。苦しみ、悩む児童も現れ、給食調理員として、その児童たちの悩みを何とかするために行動していきます。
 つまり、主人公の行動を妨げる問題や事件を引き起こせば、その問題の数だけストーリーが生まれていくのです。

 また、長めのストーリーを構成していくには、一つの問題を解決していくにあたって、それを妨げるいくつもの様々な問題、難題、事件、困った状況を引き起こしていくことでストーリーを作っていくことができます。
 これも、具体例を見ていきましょう。

例)

映画『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム』

主人公の行動:「ネット空間に現れた有害なデジモン(電脳モンスター)を退治する」

その主人公の行動を妨げる様々な問題は……

・ちょうど夏休み中だったので、普段一緒に戦っている仲間が県外(島根県)や海外(ハワイ)に外出していて集まらない。
・仲間が中学受験の真っ最中で連絡がつかない。
・お誕生日会の真っ最中で、すぐに集まれない。
・仲間の一人とケンカしてしまっていて連絡が取れない。
・敵が電話回線に輻輳(ふくそう)を引き起こし、仲間との連絡がまったく取れなくなってしまう。
・仲間が島根県の田舎の地方に帰省していて、戦うために必要なパソコンがない。もってる人もいない。あってもネットにつながってない。
・戦いの最中に、仲間が麦茶の飲み過ぎでお腹を壊してトイレに駆け込んでしまう。
・戦うために必要なパソコンが途中でフリーズしてしまう。
・敵がペンタゴンのコンピューターに侵入し、核ミサイルを発射してしまう。
・敵が、進化してパワーアップしたり、無限増殖をはじめてしまう。
・主人公たちに世界中から送られてくる大量の「応援メール」が、逆に主人公たちのパソコンの処理速度を下げて、戦いを不利にしてしまう。
・パワーで勝っても、スピードで負けて、敵に攻撃が当たらない。

 ……などなど。
 この映画のストーリーは、そのほとんどが、「主人公の『敵デジモンを倒す』という行動のジャマ、妨げとなる様々な種類、規模の問題、事件、状況などの障害が起きていき、主人公たちはその障害を何とか克服しようとして様々な行動を繰り広げていくところ」だけで構成されています。このように、ストーリーとは「キャラクターの目的を達するための行動があり、それを妨害する障害が発生し、それをなんとか乗り越えて、目的を達成する」までを描いたものなのです。

 だから、主人公の行動をジャマする障害となる要素を書けるだけ書き出して、それらを物語の長さや内容によっていくつか選び、主人公にぶつけ、その障害に対して主人公がどんな対応、行動、思考などのリアクションを取っていくかをイメージしていけば、ストーリーのアイディアは簡単にできてしまうのです。

     
 主人公の目的や行動からストーリーを作っていけば、「キャラクターのためのストーリー」を作ることができます。逆に、ストーリーが先にあり、ストーリーのためにキャラクターを作ってしまうと、展開が不自然で、キャラクターが生きてこない、血が通ってない、どこか他人行儀なストーリーやキャラクターにしかなりません。
 ストーリーは主人公が作っていくのです。主人公がストーリーを「動かして」いくのです。
 主人公の「行動」を軸に、それを妨げて、それでも必死になって行動していく主人公の姿を描いていくならば、読者はきっとその主人公に共感と応援を送り、あなたの物語に釘付けになることでしょう。

 

参考:第8章 作品をつくろう!

■実践編vol.06 創作コラム「独自性」があるということ

■実践編vol.07 「読者が主人公を好きになるシーン」からキャラクターを作るコツ

■実践編vol.08 「皮肉」のログラインから、シーンを発想していこう!

■実践編vol.09 「25の皮肉のパターン」と「皮肉のログラインPart2」

■実践編vol.10 ログラインは「主人公について書かれたもの」である!

■実践編vol.11 物語はどこから作る!? ①キャラクターの「職業と目的」が決まれば、ストーリーも設定も自動的に決まる!

■実践編vol.12 クライマックスの面白さを生み出す「22の問題解決方法のパターン」

■実践編vol.13 創作コラム:人は「偶然」に憧れ、それを味わいたいと思っている

■実践編vol.14 「主人公の感情の変遷」こそがストーリー構成のカギを握る!

■実践編vol.15 『シン・ゴジラ』と『涼宮ハルヒ』の作り方は全く同じ!?  魅力的なキャラクターは、「登場する前」に立っている!

 

 

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