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2016年2月16日 (火)

■実践編vol.14 「主人公の感情の変遷」こそがストーリー構成のカギを握る!

J0014

    

俺の作りたいものは型にはめたものじゃなくて、もっとアツいものなんだ!

 マンガや小説、映画やシナリオなど、ストーリーを扱う方は、そのほぼ全員が「構成」の大切さを認識していると思います。本講座でも、繰り返し「構成」の重要性を述べてきました。なぜ、ストーリーを作る上で構成が大事なのか、それは、ストーリーの構成をしっかりと形づくっていくことで、限られたページ数や尺の中で、読者を物語に引き込み、退屈させずに興味を持続させ、危機感をエスカレートさせていきながらグイグイ物語に没入させ、最終的に大きなカタルシスと満足感を味あわせて最後まで読んでもらうことができるからです。
 しかし、次のような反論が浮かんでくる方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。

「構成が大切なのはわかるんだけど、構成に当てはめて書くとなんだか主人公が人形みたいになっちゃう……」

「システマティックに物語を書きたいんじゃない、俺が書きたいのは、もっとアツいものなんだ! 主人公がガーッとなって、ドーンとなって、ガツーンてなるんだけど、ドワーッとなって、グーっとこらえて、ダーンってなるやつなんだよ!!」

 ……その気持、とってもわかります。
 じつは筆者もかつて同じことを感じていたからです。
 もっとアツいものが書きたい、でも、なんか構成を考えるとうまくいかない、こんな思いをすごく感じて、悩んでいました。
 そんな中で、ある一つのことに気づきました。それは、「自分が構成を考えている時に主人公の感情、気持ちを考えずに、ただ『構成の型のことだけ』を考えているのではないか」ということ、さらに詳しく述べるなら、どこかで「『主人公の感情の流れ』と『ストーリーの構成』を別個のものとして分けて考えていたのではないか」ということに気づいたのです。
 ストーリーは、主人公のものです。ストーリーのために主人公がいるのではなく、主人公を描くためにストーリーがあります。主人公の感じる思い、感情を無視して、主人公の気持ちよりもストーリーの展開を優先し、ひたすらストーリーとしての面白さのみを追求しようとすると、当然主人公のキャラクターから生気が失われていってしまいます。それが、作品を作っている時に感じる「なんか燃えない、主人公が人形みたい」の原因となっていました。
 ストーリーの構成は、主人公がストーリーの中で感じていく感情と密接に結びついていて、ストーリーの出来事と、そこから生まれる主人公の感情をもとにして次の展開、構成を考えていき、さらにそのできごとから感情の変化、推移を描いていくことが大事なのです。

物語とは「主人公を描くもの」です。

主人公を描くとは、「主人公の内面、感情、思いを描くこと」です。

 思いは行動に先立ちます。無理のない行動を描くには、無理のない主人公の感情、思いをシミュレートしていかなければなりません。主人公がストーリーの経過に応じて経験し、抱き、感じていく感情の推移に無理がなければ、自然と行動は定まっていきます。そうすれば、そこに新たな出来事や事件、障害を加わっても、その主人公の感情を逸脱することなく描いていくことができます。あくまで「主人公」を描いていくことができるのです。
 ストーリー構成で重要な「3つの流れ」の中でもとくに大切な「人物の心情の流れ」をまず考えることが、構成を考えるうえでのポイントになります。構成とは、「主人公の気持ちを最優先に考えて」作っていくものなのです。
 では、どうすれば主人公の感情を最優先にした構成をしていくことができるのでしょうか。それを、今回は学んでいきたいと思います。

 

「構成」は「主人公の変化(心の変化)」から考えよう!

 ストーリーや構成を考えていくうえでまずはじめに考えていくことは、「主人公の変化(心の変化)」です。
 この主人公の変化が、主人公の感情を描いて構成をしていくうえでの最も重要な「芯」となっていきます。なぜなら、ストーリーは、主人公が「何らかの良くない状態」から「良い状態に改善する」という変化を描いたものであり、その「主人公の心の変化」こそが主人公の感情、気持ちの中心的な要素になるからなのです。主人公の感情は、すべてこの「主人公の変化」に関連して発生し、変化の過程で経験していくものだからなのです。

ストーリーはすべて、主人公の変化に基づいて作っていきます。主人公の変化(心の変化)を描いたものがストーリーなのです。

 拙著や他の記事、とくに前々課でも繰り返し述べている通り、ストーリーの中で描かれる要素は2つしかありません。

 ①「問題の解決」と、②「欠落の回復」です。

 そして、主人公の変化となるのが、この②「欠落の回復」です。
 すべてのストーリーは、この主人公の欠落の回復を描いたものになります。主人公、または他の人物(ゲスト主演キャラなど)の内面、または人間関係、対人感情(該当キャラに対する感情)に何らかの欠落、不足、悪感情、破綻があり、それがストーリーの中で起きる出来事、経験(具体的には「問題の解決」)を経て回復、充足、改善、満たされていきます。キャラクターはストーリーでの出来事を通して、大切なことに気づいたり、固執していた考え方や価値観から解き放たれたりするなどの様々な成長をしていきます。その、主人公の心の変化、成長を追ったものがストーリーとなり、その変化のはじめから終わりまでに、主人公がどんなことを感じ、思っていくのか、その主人公の自然な感情の移り変わり、変遷、気持ちの起伏を追っていったのもがストーリーの構成になります。
 ですから、ストーリーや構成を考える上では、どんな状態の主人公が、どんな状態に変化していくか、まずその変化を考えていかなければなりません。
 この変化がなければ、物語は不完全なものとなり、読者もどう読んでいけばいいのかわからなくなります。もし、作っている途中でこの変化が主人公にないならば、物語の中を探してください。または主人公以外のキャラクターが変化する場合もあります。主人公以外のキャラが変化する場合は、その物語に関する限りは、そのキャラが主人公(ゲスト主演)となります。つまりは、その変化するキャラクターのための物語、エピソードとなりるのです。
 変化を考える上では、ストーリーの案を考えていく際に、「物語の冒頭、はじめ」と「物語の最後、ラスト」で、主人公(または変化するキャラ)が何らか変化(内面、心)があるかどうかに注目してください。はじめと終わりで主人公はどんな状態にあるかを見比べてみてください。変化がある場合は、ストーリーのはじめと終わりでちょうど正反対の状態になっています。心の変化は、物語のクライマックス、ちょうど大ピンチの状況で起こります。そこで、心(考え方や価値観など)が変わっていくキャラクターが必ずいるはずです。そのキャラクターが、真の意味でその物語の主人公になります。そのキャラクターを見つけてください。また、その変化を中心に物語を組み立ててください。
 変化については他の課でもすでに述べていますが、最も大事なポイントなので、一部重複を含みますが、さらに詳しく述べたいと思います。
 変化をするキャラクターは主人公である場合と、他のゲスト主演キャラクターである場合の2つのパターンがあります。
 主人公が変わる場合、まず何か事件、問題、課題があり、それを解決するためには「今までのやり方」では解決できなくなります。そこで、主人公は変わらなくてはいけなくなり、変わることによって「新しいやり方」を手にして、その新しいやり方によって問題は解決していきます。問題が、ヒロインや副主人公、特定の人物に関わる場合は、その人物が主人公が変わる「きっかけ」になっていきます。
 一方、他のキャラが変わる場合は、役割が逆になり、主人公は変わらず、主人公が他のキャラが変わるきっかけになっていきます。主人公の持つ考え方や価値観を他のキャラが受け入れる、または影響を受けることを通して他キャラが変わっていきます。また、問題の解決に関しては、だいたいは他のキャラではなく主人公が行っていきます。変化する他のキャラは、副主人公、ヒロイン、ゲスト主演キャラなど場合が多くあります。
 また、変化の種類には個人の内面の変化の他に、「対人関係、対人感情」が変化する場合もあります。悪感情、対立、反発していた二人の関係が改善、修復していく場合です。バディものなどのストーリーがこれにあたります。ただし、対人関係といっても、突き詰めると、キャラクターの内面がまず変化することによって対人感情が変化し、それによって関係性が改善していくという流れを考えると、やはり個人の内面の変化というものが、このパターンでも必須の要素になります。
 さて、変化をする場合、変化前のキャラクターには、何らかの弱点、欠点、迷い、未熟な部分、欠落がある形になります。その欠点が変化して改善していくからです。それでは、この変化前と変化後のキャラクターと、その作り方について考えてみたいと思います。
     
作者が、主人公や他キャラなどの変化するキャラクターに「なんとかしてやりたい、どうにかしてやりたい」と思うような要素を加えよう!

 変化前のキャラクターを作るコツは、作者がその変化するキャラクターに対して「なんとかしてやりたい、どうにかしてやりたい」と思うような要素を持たせてあげることです。そういうキャラクターを主人公、またはゲスト主演の形で登場させることです。たとえば、「過去の失敗で自信を失っている」だとか「一回も異性と付き合ったことがないまま大学生活が終わろうとしている」とか「小学生で逆上がりがどうしてもできない」とか、作者として、その主人公または他のキャラなどの変化するキャラクターを見たときに「このままじゃいけない、なんとかしてこいつを助けたい、どうにかしてやりたい」と作者が思うような要素をそのキャラが持っていると、「なんとかしてこのキャラを幸せにしてやろう、助けてやろう」という創作のモチベーションで出てきて、そこからストーリーが浮かんできます。こうすると、簡単に変化を主軸においたストーリーが作れます。ぶっちゃけ「このキャラをなんとかしてあげたい」という作者の気持ちがストーリーを生み出していくのです。
 ストーリーとは、この、何らかの「こいつこのままじゃいけない、なんとかしてやりたい」という状態の主人公、または他のキャラが「なんとかなる」状態になるまでの変化とその過程を、問題の解決に絡めて描いたものなのです。(今回、“ストーリー”の定義が多いですネ……)
 さて、その変化をするキャラクターを考えていく際に、主人公以外の他のキャラが変化する場合は、他のキャラに対しては欠点や弱点をわりと設定しやすいのではないかと思います。しかし、主人公が変化する場合、主人公にはある種ヒーロー的な側面があるので、弱点や欠点などを設定するのにためらったり抵抗を感じる方もおられるかもしれません。主人公は、ある意味作者の理想的な人物像を反映したものになりやすく、それゆえに欠点をもたせることに抵抗が生まれるのです。しかし、このことを肝に銘じておかなければなりません。それは「完璧な人間はいない」という点です。どんな立派な人間でも、不完全な部分を持っています。もちろん、主人公ですから欠点だらけにする必要はありませんし、読者の感情移入を阻害するような致命的な欠点、人の道に反するような価値観などを無理に設定する必要は全くありません。ただ、二面性ということを念頭に置き、主人公として誰もが憧れる要素をしっかりと待たせつつも、普段見えない部分で悩みや苦しみを抱えている、寂しい思いやつらい感情を感じてるような環境にあるというふうに、意外な一面、ギャップとして「変化する要素である弱点や欠点」を持たせていってみてください。
 変化前のキャラクターが持つ弱点や欠点の原因については、拙著からの転載になりますが、次のようなものが設定できます。

《主人公の持つ満たされない気持ちの原因》 

①目標、目的、志、願望などが達成できない。
 ②職業(学業)に関する問題、うまくいかないこと、悩み、迷いを抱えている。
 ③自分の境遇、生活環境、状況に不満がある。
 ④経済的、または情緒的に苦しい生活をしている(貧乏、借金、つらい思いなど)。
 ⑤片想い、失恋、不倫、離婚など、恋愛、結婚、夫婦関係において問題を抱えている。
 ⑥人間関係において問題、または嫌悪感を抱えている。
 ⑦過去に何らかの「失敗」をしてしまった。
 ⑧周りから嘲笑され、バカにされている。
 ⑨自身を失っている、自尊心を失っている。
 ⑩希望を失っている、自暴自棄になっている。
 ⑪その他、人生のあらゆる不公平、不条理。

こういった環境、状況がある種の原因となって変化前のキャラクターの内面に弱さや欠点、迷い、未熟さが生まれていきます。
 また、これらの何らかの要因によってキャラクターの心に「心のブレーキ」が生じてしまい、それが弱さや欠点として現れている場合もあります。
 その心のブレーキの資料として、名著『鏡の法則』などで有名な心理カウンセラーでプロコーチでもある野口嘉則氏の著書『幸せ成功力を日増しに高めるEQノート』に掲載されている、代表的な心のブレーキ「ビリーフ」と人間を駆り立てる心の声「ドライバー」の種類を引用させていただきます。

《人間が抱えてしまう心のブレーキの例》

□ 人に好かれねばならい(人に嫌われるべきではない)
□ 相手を不機嫌にするべきではない
□ 人に認められねばならない
□ みっともないところを人に見せるべきではない
□ 人に甘えるべきではない
□ 相手から拒否されるべきではない
□ 人に心を開くべきではない
□ 配偶者(家族・恋人)は私の考え方を理解するべきだ
□ わが子は、私の思いどおりに育つべきだ
□ 子どもは親に対して従順(よい子)であるべきだ
□ 相手を変えるには、批難や叱責をするのがよい
□ 相手を支配する方がうまくいく
□ 相手に勝たねばならない
□ 自分の間違いを認めるべきではない
□ 私はダメな人間だ
□ みんな、私のことを嫌っている

 

《人を無意識下で駆り立てる「ドライバー」と、そのドライバーに関連する心のブレーキの例》

●ドライバー「完全であれ」
□「いつも完全であらねばならない」
□「ミスや失敗をするべきではない」
□「欠点があってはならない」


●ドライバー「もつと努力しろ(一生懸命やれ)」
□「満足したり休んだりするべきではない」
□「いつも頑張っていなければならない」
□「楽しむべきではない」


●ドライバー「強くあれ」
□「いつも強くあらねばならない」
□「感情を表に出すべきではない」
□「弱いところを人に見せてはいけない」


●ドライバー「他人を喜ばせろ」
□「自分の気持ちを優先するべきではない」
□「相手を満足させねばならない」
□「相手をがっかりさせるべきではない」


●ドライバー「急げ」
□「何事も、少しでも早くやり遂げねばならない」
□「ムダな時間を過ごすべきではない」
□「効率の悪いことはするべきではない」

 

変化するキャラクターの持つ弱さや偏った価値観、古い考え方などは、こういった心のブレーキが原因になっていることがあります。これら心のブレーキは「無理がある偏った思い込み」です。これがあることで、人間の行動は様々な制約を受けていきます。例えば、キャラクターが「ミスや失敗をするべきではない」という価値観に支配されていれば、失敗を恐れるあまり、仕事や学生生活で新しいことにチャレンジできない、思い切った決断ができないという弱点、欠点を設定することができます。「感情を表に出すべきではない、弱いところを人に見せてはいけない」という思いに支配されていれば、つらさや苦しさ、楽しささえも人前で表すことができず、他者と共有することもできず、いつもポーカーフェイスを演じなければならないという苦しい状態が作れます。「相手をがっかりさせるべきではない」であれば、嫌なのに拒否できず「ノー」と言えなくて苦しい思いをしているキャラが作れます。そういったキャラの心がストーリーの中の出来事を経て大切なことを学ぶことにより変化し、「ミスを恐れずに様々なことにチャレンジしていけるようになった」、「人前で強がることをやめ、弱い部分もさらけ出し、また喜びの気持ちも表現でき、ありのままの自分で人と接することができるようになった」、「ノーと言えるようになった、ノーと言っても相手はそんなにがっかりしなかった、自分の気持を正直に伝えることができるようになった」というふうに行動も一緒に変わっていきます。この変化がストーリーになっていきます。また、この変化が物語のテーマになっていくのです。
 これらを参考にすれば、設定が難しい、抵抗がある主人公の弱点や欠点、悩み、迷いを設定しやすくなります。
 弱さ、考え方、価値観は、強く偏った思い込み、恐れ、トラウマ、無理していること、過去の失敗、悩み、迷いなどから生じていきます。これら内面の問題は、心理学的アプローチを経ることによって改善していくことができるように、キャラクターに関してはストーリーで起こった事件や問題を解決していく過程がその役割を果たし、その「問題の解決」によって大切なことに気づき、自分を縛っていた古い考えや価値観を捨てて、葛藤に決断をし、心が変化していきます。
 キャラクターがどんな変化を遂げるか、どんな状態からどんな状態に変わっていくのか、何に気づき、何を学び、どう変わっていくのか、成長していくのか、その変化の要素やキャラの変化前の状態を考えるときには、このような心理学的な知識も踏まえると、よりそのキャラクターを理解できるようになると思います。
 それともう一つ、主人公に弱点、変化する要素を設定するうえでのコツがあります。そのコツは、主人公の欠点や弱点をターゲット層の読者が「かわいそう」と思って同情してくれたり、理解、共感してくれるような、悩みや苦しみを共有できるようなものに設定していくと、読者が主人公の変化を応援してくれるようになります。じつは読者は、主人公の何に感情移入するかというと、この「弱点、弱い部分、悩み、苦しみ」に一番感情移入していきます。つまり、弱点や欠点でさえも、主人公を引き立てる魅力の一つとなっていくのです。
 主人公や変化するキャラクターは、キャラクターとして魅力的な部分を存分に持っている裏側で、人に言えないような悩みや辛さを抱えています。その両面を描くときに、またその自分の弱さ未熟さを乗り越えて、そのキャラが変わるところを読者が目の当りにする時に、読者の心は動かされ、大きな感動を覚えていくことでしょう。

※もし興味がある方は野口嘉則著『幸せ成功力を日増しに高めるEQノート』をお読みになることをおすすめします。心理学や自己実現に関する本ですが、その用途でも素晴らしい名著ですが、キャラクターやストーリーを作る上でも実にたくさんの示唆に富んだ情報、気づきを得ることができるかと思います。

 

「構成」は、「ストーリーのはじめから終わりまでの《主人公の変化》にともなう《主人公の感情の移り変わりの流れ》」で考えていこう

 さて、ストーリーの根本にキャラクターの心の変化があることがわかりました。主人公の感情、思い、気持ちは、その変化を経ていく過程で経験していくものにほかなりません。この変化の過程に伴う主人公の内面を描いていけば、キャラクターの感情を豊かに描写していくことができます。
 主人公や変化するキャラクターの感情の変化、その「欠落→回復」に至る過程で経験し感じていく感情の変遷は、具体的に次のようなものになっていきます。

 

《主人公の感情の流れの雛形パターン》

①まず主人公は「欠落、不足」の状態に関する何らかの苦しみ、悩み、虚無感など満たされない気持ちを感じている(変化前の状態の描写)、

②主人公は「今のままであること」を望む(主人公は変わる必要性など全く感じていない)が、(読者は「主人公がこのままじゃダメだ、変わらなければいけない」と感じていく)

③事件が起こり、「今のまま」では目の前にある問題を解決することができず、

④それでも「今のままで問題を解決しよう」と悩み、もがき、

⑤今のままでいるゆえに問題が解決できないことに気付かず、落胆し、思いが暗くなり、希望を失い、あきらめて、すべてを放り投げてしまいたいと思い、打ちのめされて、どん底まで行く。(事態もどんどん深刻化していく)

⑥どん底で初めて「変わらないことが問題を解決できない原因である」ことに思い至り、「変わらなければいけない」ことに気づく、少しずつ変わろうと思っていく。

⑦そんなときに生じる「きっかけとなる出来事」に心を動かされ、

⑧最も危機感が迫った土壇場で、変わろうとして、「自分の古い考え方、価値観、殻、安全地帯を手放し」、心が変化する。(この変化の心情の流れをどう描くかが腕の見せ所です。)

⑨その思いの変化によって主人公の「行動が変化」して、それによって問題が解決し、そのことによって主人公の欠落が埋められ回復し、新たな考え方や価値観を手にし、大切な教訓を学び、成長し、希望を抱いていきます。

 

これは基本的なパターンで、雛形です。
 ストーリーや作風、ジャンルによって多少調整するませんが、このような気持ちの流れが描ければ、無理のない、キャラクターのありのままの感情を出していくことができます。
 大事なのは、この変化の過程で折々に主人公が感じていく喜怒哀楽、感情の起伏、悩み、苦しみ、想い、行動の動機、焦り、後悔、落胆、悔しさ、不安、迷い、葛藤、勇気、決断などの感情を事前に書き出していくことです。そして、その感情が、ストーリーのはじめから終わりまで主人公のキャラ設定的に破綻なく移り変わっているか、決して作者が主人公に強制するのではなく、あくまで主人公が自発的に、自分のものとしてその感情を抱き、噛みしめ、味わい、そのキャラの意志が持った感情であるかに注意しながら、そのキャラになりきって、感情のジェットコースターを経験してみるのです。その際は、断片的にシーンの映像を思い浮かべ、実際に「セリフやモノローグ(心のなかで言っていること)」をイメージしていきます。漠然としたイメージではなく、その感情を表に出したり心の中で声にしているシーンのセリフをイメージします。ポイントは、その時々の情景を断片的に、順不同で思い浮かべていき、その短いシーンだけイメージする(ストーリーなどは考慮しなくていい)点です。
 そのシーンの映像のイメージ、セリフを構成の各セクションに当てはめ、主人公が経験する出来事や事件、苦難や障害とその克服などのストーリーをイメージしていきます。構成のセクションは、次のとおりです。

 

《ストーリーの構成》

(1)「つかみ」前日譚、読者を引き込む出来事

(2)「状況設定」主人公の日常、周囲の人々、生活、主要人物との出会い。主人公のはじめの状態(欠落不足した状態)の描写。

(3)「きっかけの事件、問題発生」

(4)「前半戦、《今のまま》の主人公が問題を解決しよう、求めているものを得よう、目的を達成しようと奮闘する問題解決のストーリー」

(5)「ミッドポイント」ストーリーの折り返し地点。転換点。(前半戦の結果、決着が着く。後半戦のスタートとなる出来事)ストーリーの前半と後半をつなぐ結節点。

(6)「後半戦、《主人公の心が変化》するストーリー」事態は深刻化し、制限時間が迫り、追いつめられていく主人公、問題解決を目指すもうまく行かず、または新たな問題が発生し、更に追いつめられる。望みがどんどん絶たれてどん底まで落ちていく

(7)「最終ステージへの突入の合図」クライマックスの入り口、最後の決戦、ついに結果が出る

(8)「クライマックス」最終決戦、最終試験に向けて準備を整える主人公、最大の障害、敵との対決、絶体絶命の大ピンチ、《主人公の心、内面が変化》し、古い殻を破り主人公が縛られていた古い価値観、考え方を手放す、心が変化したことにより可能になった手段によって起死回生の大逆転、一気に問題が解決

(9)「ラストシーン」大団円、周囲の状況の変化、主人公の変化、余韻

 

……これらのストーリー構成のセクションに、主人公が抱くそれぞれの感情を入れ込み、感情の流れを作り上げ、それを俯瞰していきます。要は、主人公のおおまかな「感情のストーリー構成」を作っていくのです。
 ストーリー上の出来事や展開などは、主人公の感情のストーリー構成が出来上がった後に考えてもいいですし、感情と構成を同時に考えていってもかまいません。それぞれやりやすい方法で進めてください。
 このように主人公の感情をもとにストーリーを展開させていけば、主人公が魂のない人形になることはなく、主人公の行動は機械的なものではなく強い意志によったものとなり、魂のこもったアツい物語の構成も無理なく作っていくことができます。
 ストーリーを進展、展開させていくのは、主人公の思い、感情です。
 起こった出来事や事件に対する主人公の「感情」が主人公の「行動」を生み出し、その「主人公の行動がストーリーを展開させる」のです。
 そうです、主人公がストーリーを生み出していくのです。

 

「構成」は、ストーリーのスタートからゴールまでの「道程表」である

 構成というと、どうしてもシステマティックに作る、型にはめて作る、キャラクターの自由な感情が描けないのではないかというイメージを持つ方がいるかもしれません。
 しかし、構成はどちらかというと「ストーリーを整えていく」ためにあります。
 いわば、構成とは「ストーリーという旅のスタートからゴールまでの道程」を表したものです。
 ストーリーはある意味「マラソン」と同じです。
 マラソンコースの道中、どんな道を通り、何が起こり、どのような距離をどのようなスピード(時間)で進んでいくかを表したものです。お客さんを引き込み、退屈させないような起伏に富んだストーリー上の出来事の長さや順番、種類を、お客さんがストーリーを楽しみやすくなるように改善し、整えていくために「構成」はあります。
 先に述べたとおり、ストーリーの構成では、詳しい構成を考える前に主人公の感情、思いの流れ、変遷を追っていくことが重要です。主人公の変化が決まり、大まかに事件、問題、ストーリーの案が浮かんだら、主人公の感じる感情を書き出し、まず感情の流れを組み立てていきます。そこからさらにストーリーの中で起きる出来事、構成を考えていくようにすると、主人公の気持ちが通った自然なストーリーと構成を作っていくことができます。

 

おまけ:歴史モノや偉人の伝記などを書くと、感情でストーリーを構成していくトレーニングになる

 構成の練習に最適なトレーニング法があるのでご紹介します。
 それは、「歴史モノや偉人などの伝記を自分の作風で書いてみる」というものです。
 といっても生まれてから死ぬまでをすべてを書くわけではなく(書ける人はそれでもいいですが)、「一つのエピソード」だけをしっかりと完結する形でプロットにしてみるのです。
 歴史モノや伝記の場合、ストーリー(出来事)はすでに決まっています。ということは、主人公の感情、気持ちに集中していくことができるのです。学校で学んだ歴史の登場人物の思い、その人物が感じたであろうことを描いていくのです。また、その感情を踏まえたうえで、どのようなペース配分でそのエピソードの物語を構成していくか、どの部分をクライマックスに持っていくか、どこから始まるか、ストーリーのはじめと終わりの主人公の変化はどうするかなどの構成を考えていきましょう。多少「脚色」をしてかまいません。いやむしろ、どんどん脚色していっていいと思います。自分なりの「偉人像」を描いていってみてください。
 ぜひ好きな偉人や武将がいたらその人物のエピソードを題材に取り上げ、その人物に自分がなったつもりで、短いストーリーを書いてみてください。得るものが多くあると思います。

 

参考:第8章 作品をつくろう!

■実践編vol.06 創作コラム:「独自性」があるということ

■実践編vol.07 「読者が主人公を好きになるシーン」からキャラクターを作るコツ

■実践編vol.08 「皮肉」のログラインから、シーンを発想していこう!

■実践編vol.09 「25の皮肉のパターン」と「皮肉のログラインPart2」

■実践編vol.10 ログラインは「主人公について書かれたもの」である!

■実践編vol.11 物語はどこから作る!? ①キャラクターの「職業と目的」が決まれば、ストーリーも設定も自動的に決まる!

■実践編vol.12 クライマックスの面白さを生み出す「22の問題解決方法のパターン」

■実践編vol.13 創作コラム:人は「偶然」に憧れ、それを味わいたいと思っている

■実践編vol.14 「主人公の感情の変遷」こそがストーリー構成のカギを握る!

■実践編vol.15 『シン・ゴジラ』と『涼宮ハルヒ』の作り方は全く同じ!?  魅力的なキャラクターは、「登場する前」に立っている!

 

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