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2016年9月 1日 (木)

■実践編vol.15 『シン・ゴジラ』と『涼宮ハルヒ』の作り方は全く同じだった!?  魅力的なキャラクターは「登場する前」に立っている!

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キャラクターを「立て」よう!

 これまでも繰り返し述べていますが、物語において最も大事な要素は、なんといってもキャラクターです。理由もこれまで何度か書いておりますが、お客さんはキャラクターにしか興味がなく、キャラクターに会うために作品を読んでいくからです。また、物語は、キャラクターがまず居て、そのキャラクターを起点にして設定を作ったり、キャラクターを動かすことによってストーリーを作っていくからです。キャラクターが行動し、その結果どうなるかを書いたものが「ストーリー」であり、キャラクターがどんな時代、世界に住み、どのような状況でどのような生活をしているのか、どのような信条や目標、願い、使命を持っているのか、なぜそれを持っているのかを考えていったものが「設定」になります。「こんな奴(キャラクター)」が「どんな状況」で「どんなことをしたら」面白いか、面白くなるかを考えていくことで、物語というものは作っていくのです。つまり、お客さんにとっても、作者にとっても、一番大事な「要」となるものがキャラクターなのです。
 だから、魅力的なキャラクターができれば、その作品は8割方成功したと言っても過言ではありません。
 さて、物語の中でキャラクターを魅力的に描いていく場合には、キャラクターを「立てる」ことが大きなポイントになります。
 キャラクターが「立つ」とは、「物語の中でそのキャラクターが目立ち、いきいきと輝き、その特徴、魅力、存在感が存分に描かれ、引き立つ」ことを言います。物語では、主人公のキャラクターを立てて、魅力的に描いていくことが最重要課題です。主人公を描くため、言葉を変えれば「人間を描くため」に物語はあります。ストーリーも、設定も、他のキャラクターもすべて、主人公のキャラクターを立てるためにあります。キャラクターをどこまで立てられるか、どこまで主人公の存在感を出せるかが、物語が面白くなるかつまらなくなるかの分水嶺になります。
 キャラクターを立てるには、ある種の「演出」が必要になります。そのキャラの特徴や魅力を引き出せるような展開を意図して用意しなければ、キャラクターは立たないのです。では、どのような方法でキャラクターを立てていけばいいのか、それをこの課で考えていきたいと思います。

   

ゴジラとハルヒは、全く同じ方法でキャラクターを立てている!?

(※文中で映画『シン・ゴジラ』のストーリーについて触れている部分があります。未見の方はご注意下さい。あの作品は、ぜひ前情報ゼロでご覧になることをオススメします!)

 先日公開され、大ヒット、そして大絶賛されている庵野秀明監督の傑作映画『シン・ゴジラ』をご覧になった方も多いかと思います。(まだの方はぜひ銀幕でご覧になることをオススメします。)『シン・ゴジラ』を含めて、歴代のゴジラシリーズの中心的なキャラクターといえば、なんといっても「怪獣ゴジラ」です。ゴジラという作品は、このゴジラのキャラクターをいかに引き立てていけるかで、面白さが決まるといえます。『シン・ゴジラ』も、VFX、カメラワーク、画面レイアウト、演出、ストーリー、設定などあらゆる作品要素を総動員してゴジラの迫力、巨大さ、恐ろしさ、存在感を出そうと計算されています。なぜなら、ゴジラが本当に実在するかのように引き立っていなければ、作品が成り立たないからです。
 さて、じつはこの『シン・ゴジラ』と全く同じ方法でキャラクターを立てている意外な作品があります。それは小説『涼宮ハルヒの憂鬱』です。『シン・ゴジラ』と『ハルヒ』は、全く同じ方法論で作られています。そして、その方法は、すべての物語で応用でき、また必要不可欠な、主人公キャラクターを立てるためのお手本ともいうべき方法論です。
 その方法とは「周囲の全ての登場人物が主人公に注目し、主人公のことを噂する(話す)」というものです。

    

全ての登場人物に、主人公についての「噂」をさせろ!

 キャラクター論の提唱者である漫画原作者の小池一夫氏が初めて体系立てて解説し、また昔からプロの間でも活用されてきたキャラクターを引き立てるための最も有効な手段が、この「他の登場人物全員が主人公について噂話をする」という方法です。
 これは、人間は自分以外の多くの人が注目している対象に興味が向くという「野次馬の心理」を利用してキャラクターを立てていく手法です。具体的には、主人公以外のすべてのキャラクターの興味、関心、注意が主人公に注がれ、その主人公について周囲の人物たちが「コメント」をすることで、野次馬の心理によって読者の興味と関心も自然と主人公に向かっていき、それによって読者の中で主人公キャラクターの存在感がどんどん引き立っていくというものです。キャラクターというものは、みんな(周囲のキャラクターたち)が注目することで立っていきます。先に上げた『シン・ゴジラ』も『涼宮ハルヒの憂鬱』も、じつに巧みにこの方法論を使ってキャラクターを立てています。その詳細を、それぞれ見ていきましょう。
『シン・ゴジラ』では、冒頭で東京湾に謎の水蒸気の噴出が確認され、それに対して内閣をはじめとするたくさんの関係各所が注目、分析し、論じ合われていきます。後に、その水蒸気の噴出が巨大な生物(ゴジラ)だということが判明すると、全ての登場人物がゴジラに注意を向け、全ての登場人物がゴジラについて語り、ゴジラ中心にストーリーが展開していきます。こうなると、当然お客さんの全ての興味もゴジラに集中していき、ゴジラの存在感はうなぎのぼりに上がっていきます。まさにキャラが立っていくわけです。
 また、『涼宮ハルヒの憂鬱』もゴジラと同じ構造でキャラクターが引き立っていきます。ゴジラのポジションに、ヒロインのハルヒが位置していきます。ハルヒは一見普通の女子高生ですが、じつは宇宙をまるごと創り変えたり、破壊したりする力を秘めています。その力をめぐって、宇宙の高次生命体から派遣された宇宙人、未来で発生した次元断層の原因と目されるハルヒの調査のために未来から来た未来人、ハルヒの秘めた力の影響で覚醒し、世界の安定のためハルヒを監視すべく超能力者がそれぞれ集結し、ハルヒの一挙手一投足に注意を向け、常にハルヒに注目していきます。当然、作中に出てくる会話も全てハルヒに関することです。また、後に起こる銀河全体を揺るがす危機も、ハルヒが原因で起こっていきます。さらに、性格的に変人として全校生の注目を一手に集めるハルヒに対して、周囲の全てのキャラクターがハルヒについて話して(噂して)いきます。この調子でストーリーも、ハルヒというキャラクターを中心に展開していきます。こうすることで、ハルヒは全登場人物の注目を受け、ハルヒのキャラクターが立っていくのです。
 かたや全国民から注目されるゴジラ、かたや全校生徒は愚か、宇宙の高次生命体たちや未来人たち、秘密機関に属する超能力者たちからも注目を集めるハルヒ、両者ともに周囲の全登場人物から一身に注目を受ける構図は同様です。だからこそ、キャラクターが立つのであり、それによって作品の面白さが高まっていくのです。キャラクターが立つことと、作品の面白さは、比例するのです。キャラクターの魅力、存在感は、物語の面白さにとって最も重要なものなのです。

    

魅力的なキャラクターは「登場する前」から立っている!

 周囲のキャラクターが主人公に対して注目し、噂をすることでキャラを立てるこの方法で重要なポイントは、キャラクターは「登場する前に立てる」という点です。じつは、魅力的な、立ったキャラクターというものは、登場する前からすでに立っています。つまり、キャラクターを立てるべき最も大切なタイミングは、「キャラクターが登場する前」なのです。
『シン・ゴジラ』では、それが如実に現れています。まだゴジラが登場する前、東京湾の水蒸気の噴出の原因が何なのについて判明する前から、登場人物の興味はその事件、すなわち水蒸気の噴出という出来事に集まっていきます。そして、生物が原因であるという疑いが生じて一層全ての登場人物の興味、注意、分析が集中していきます。こうすることで、その生物はいかなるものなのかという興味が観客に生じ、それがどんなやつなのか早く見たいという思いから、観客はキャラクターが登場する前から、もう見たくて見たくてしょうがない状態になっていきます。そうすれば、ゴジラが登場した時には、すでにお客さんの注目、興味がゴジラに向かって集中している状態、つまりゴジラのキャラクターが立っているという状況を作ることができます。キャラクターは周囲の人物を使って立てていくのです。
 主人公が登場する前から周囲の人物に噂をさせてキャラを立てるという方法は、ゴジラ以外でもあらゆるストーリーに応用できるテクニックであり、多くの作品で実践されている手法です。とくに、読み切りや第一話で初めて主人公が登場する場合などでは、必須のテクニックとなります。
 さてこのテクニック、じつは新しいものではありません。大昔の作品でもこの方法が使われています。その作品は、中国の古典『三国志』です。
『三国志』で最も有名でキャラが立っている登場人物といえば、天才軍師「諸葛亮孔明」です。このキャラは、物語の途中で劉備軍に加わるキャラクターなのですが、仲間になった途端に異様にキャラが立っています。読者の人気もとても高く、あっという間に人気ナンバーワンのキャラクターになってしまいます。たくさんの魅力的な英雄たちが登場する中で、なぜそのようなことが起こるのでしょうか。それは諸葛亮が登場する前に、キャラクターが立っているからなのです。
 劉備軍の天才的な軍師徐庶が、敵対する曹操から「徐庶の母親を人質にとった」という通告を受け、母親を救うために泣く泣く徐庶は曹操の配下になります。徐庶は劉備のもとを去る際に、自分より優れた軍師となるべき諸葛亮という人材がいることを告げていきます。そこから劉備たちは、なんとしてもその諸葛亮なる人物を軍師に迎え入れたいと行動を始めていきます。天才的な軍師徐庶が推薦し、劉備たちが諸葛亮を求めていくことで、読者の関心、興味も諸葛亮に集中していきます。そこからのストーリーも諸葛亮を中心に展開していきます。
 ここで有名な「三顧の礼」があります。劉備たちが諸葛亮の家へ行くも会うことができず、再度行くも会えず、都合三度も足を運んでいきます。これによって読者はじらされ、まだ見ぬ諸葛亮のキャラクターへの興味ははどんどん増えていきます。そして、三度目にやっと会えて、ついに天才とウワサされる諸葛亮を自軍に迎えることができますが、この時点でもう読者の中では諸葛亮に興味と関心とが集中し、注目の的になっている状態になります。だから、仲間になった途端に、キャラが立っている、人気ナンバーワンになるのです。
 昔の作品でも、今の作品でも主人公を立てる方法は一緒です。主人公が登場する前に、主人公に関するあらゆる噂、コメントを述べさせて読者の興味を感心を引き、どんなやつなのか早く主人公を見たいという読者の好奇心を最大限まで増やしていくことで、それから主人公を登場させることで、主人公キャラクターを初めから引き立てていくことができるのです。

    

周囲の登場人物が主人公に注目しやすいシチュエーションを準備しよう

 読み切りの物語、第一話などでキャラクターを立てていく場合には、「周囲の登場人物が主人公が注目しやすくなるシチェーション」を設定していくことで、効果的に噂を使って主人公キャラクターを立てていくことができます。その「周囲の登場人物が主人公が注目しやすくなるシチェーション」とは次のようなものです。

 ①主人公が来るのを待つ。
 ②主人公がいる場所に行く。

 一つひとつを具体例とともに詳しく見ていきましょう。
   
①「主人公が来るのを待つ」

周囲の人物たちが所属する場所に新しく主人公がやってくる、そのようなシチュエーションを描くとキャラクターを立てやすくなります。
 マンガ『らんま1/2』では、ヒロインの家にいいなずけとしての主人公早乙女乱馬がやってくるところから物語が始まります。ヒロインを含めた三姉妹たちは、やってくるいいなずけはどんな人物なのか、誰がその弾性と結婚するか、いつ来るのかと主人公について期待と不安をふくらませながら噂していきます。同時に、読者も来るべき主人公を早く見たいと興味をそそられ、キャラが立っていくのです。しかも『らんま1/2』では、やってきた主人公が多くの登場人物が想像した姿と全く異なる人物として現れます。男性が来るはずが、来たのは女性だったのです。しかも、その乱馬にはある驚くべき秘密があります。本人は男性だが、水をかぶると女性に変身してしまうというものです。噂をした後に、ギャップとして周囲の登場人物たちの予想を裏切るような、または上をいくような意外な主人公を登場させることで、主人公のキャラクターを引き立てていくことができます。
 ドラマ『空飛ぶ広報室』では、自衛隊を取材をするためにやって来る一癖も二癖もある女性ディレクターのヒロインについて噂することで、キャラクターを立てています。アニメ『Fate/stay night』では、ともに戦うサーヴァントと呼ばれる使い魔を召喚することで、使い魔のキャラクターを立てていっています。マンガ『BLACK JACK』では、手術不可能な瀕死の患者を治すことができるブラック・ジャックという天才外科医がいるという噂が語られ、読者の期待を膨らませてからブラック・ジャックが呼び出されてきます。
 そんな「主人公が来るのを待つ」シチュエーションは、具体的に次のようなものがあります。

 ・主人公が転校してくる。
 ・主人公が入部してくる。
 ・主人公が赴任してくる。
 ・主人公が引っ越してくる。
 ・主人公が入社してくる。
 ・主人公が転勤してくる。
 ・主人公が召喚されてくる。

  ……etc

 このように、主人公が何らかの場所に来る、それを周囲のキャラクターが噂をしながら待つというシチュエーションを設定することで、事前に噂をして登場前に主人公を立てていくことができます。

   

②「主人公がいる場所に行く」

 ①とは逆に、主人公がいる場所に周囲の人物が行くことで、まだ見ぬ主人公
を引き立てていくことができます。小説『天久鷹央の事件カルテ』では、語り手のキャラが、主人公の天才医師天久鷹央がいる新しい職場に配属されるところから物語が始まります。そして、鷹央と会う前に周囲の人物から鷹央についての様々な噂を聞くことになります。そこでキャラクターが立っていきます。また小説『神様のパズル』では、語り手キャラが不登校中の天才児穂瑞沙羅華のことを担当教授から説明(噂)され、その天才児を訪ねに行きます。小説『空飛ぶ馬』では、語り手の「私」が、大学の卒業生である落語家の話を教授から紹介され、しかもそれが大ファンの落語家であることを知った後で、大学の雑誌の対談企画のために会うことになります。
 何か新しい環境に移り、そこにいる人物についての噂を事前に聞いていくことで、キャラクターを立てていくことができるのです。
 そんな「主人公がいる場所に行く」シチュエーションは、次のようなものがあります。

 ・入学する。
 ・入部する。
 ・家庭教師として教えに行く。
 ・就職する。転職する。部署が変わる。転勤する。
 ・仕事で赴く。商談、取引にいく。
 ・何かを依頼する。

  ……etc 

 このように語り手の人物、副主人公が新しい環境に移るときに使うことができる方法です。そこへ移る前に、次の職場にはこんな奴がいる、あんな奴がいるという噂を聞くことによってキャラクターを立てていくことができるのです。

      

キャラクターが登場した後にも、キャラクターを立てていこう!

 キャラクターを描くときは、常に立てていくことを考えていきましょう。
 噂話でキャラクターを立てていく方法は、キャラクターが登場した後でもキャラクターを立てていくことができます。児童文学『そして5人がいなくなる』では、隣の洋館に怪しい男が引っ越してくるところから物語が始まっていきます。その洋館の表札には「名探偵」という肩書が書いてあり、主人公たち三つ子の姉妹は、その男の正体を暴くべく調査を始めていきます。その調査のシーンが噂話に当たり、調査をすればするほどその怪しい男のキャラクターが引き立っていきます。前述の『涼宮ハルヒの憂鬱』の主人公ハルヒも登場した後に同じ中学だったクラスメイトが中学時代の噂をしたり、語り手のキャラクターが彼女の行動を観察し、ツッコミを入れていくことによってキャラクターが立っていきます。
 主人公が登場する前に噂をして立てる場合は、その噂から浮かび上がった人物像の予想と実際に登場したキャラのギャップがある場合、または噂そのものが職業のイメージなどとのギャップになっている場合など、登場と同時にギャップを描く場合に有効です。
 主人公が登場した後に噂をして立てていく場合は、登場時に何らかのギャップが示され、そのギャップが謎となり、そのギャップの詳細やその人物に関する謎の解明をしていく場合に有効です。

   

『エヴァンゲリオン』に見る、キャラ立ての極意!!

 面白い作品、ヒットする作品は、必ずキャラクターが立っています。
 社会現象にもなったアニメ『エヴァンゲリオン』も周到に計算されて、主人公碇シンジのキャラクターを立てていっています。しかも、それだけではなく、『エヴァ』はものすごい方法で主人公キャラクターを引き立てていっているのです。
 映画 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』では、ロボットのパイロットとして選ばれた主人公碇シンジが、巨大ロボットを開発した特務機関ネルフ本部の全員から注目を浴びていきます。冒頭では、その主人公の到着を待つ、迎えに行くという形でキャラ立てが行われていきます。
 しかし、エヴァのスゴイところは、これだけで終わらないところです。
 巨大ロボットを操縦する主人公が正体不明の敵との最初の戦闘で敵にやられてしまい、ロボットのコクピット内の主人公の生死が不明な中でロボットが再び起動し、暴走して敵を倒す、という展開が描かれます。その際、コックピット内の主人公の応答が途絶え、生きているのか死んでいるのかわからない状態のまま、でもロボットは覚醒し、圧倒的な力で敵を倒していきます。ネルフ本部の皆はもちろん、視聴者も主人公シンジが死んじゃったのかどうか、主人公が今ロボットの中でどうなっているのか全くわからないことで非常に関心が集中していき、それによって主人公のキャラクターが著しく引き立っていきます。
 主人公の生死を隠し、ロボットのコクピットの中でどうなっているのかを一切視聴者に明かさないで敵と戦わせる、この恐ろしいまでに計算されたキャラ立て手法は、ホント脱帽です。スゴイの一言!  こんなことされたら、観ている人間は、否が応でも主人公に注目せざるを得ません。

   

噂で立てる方法を使えば、一言もしゃべらないキャラクターも立てられる!

 これまで述べてきたように、主人公以外の周囲の他のキャラクターのセリフが、主人公のキャラクターを立てていきます。そして、この方法を使うと、一言もしゃべらないキャラクターでさえ引き立てていくことができるのです。国民的RPGである『ドラゴンクエスト』シリーズでは、主人公キャラクターはプレイヤー自身、プレイヤーの分身であるというコンセプトから、自分からは一切セリフを言いません。しかし、『ドラクエ』をプレイした方ならわかるかと思うのですが、なぜか自分が操作する主人公のキャラクターが驚くほど立っていき、存在感がどんどん増していくのです。これはなぜかというと、ゲーム中で城や街の中の人々と話すと、多くの人が主人公についてのセリフを言ってくるからです。一例を示すとたとえば、

「○○王子。たくましくなられて…。じいはうれしゅうございますぞ。」
「やや すごい! その力がいつかきっと役に立ちましょう!」
「ひーっ 人間だわ! さらわれてしまうわ!」
「砂漠を旅してきたの? 鼻の頭の皮がむけかかっていますわよ。」
「ああ たくましい人たち!」
「これはポカパマズさん。いらっしゃい! え? 違う? でも似てるなあ……。」
「あたし 聞いちゃった。あなた田舎者なんですってね。うふふ。」
「 わしは心の広い王様じゃ。田舎者とてそなたを馬鹿にせぬぞ。」

……といったような感じで、町の人が主人公についていいこと悪いこと問わず様々なことを言ってくるのです。それを読んだプレイヤーは、自分が操作している主人公キャラクターが立つに従ってどんどん感情移入していくのです。
『ドラゴンクエスト』の生みの親であるゲームクリエイターの堀井雄二氏は、キャラクター論の提唱者小池一夫氏のもとで学び、そのキャラクター中心の創作法を活かして大ヒットゲームを制作しました。小池一夫氏の著書『キャラクターはこう創る』の中のインタビューで堀井雄二氏はこう語っています。
「主人公は、あくまでもプレーヤーの分身で、プレーヤーが思ったように動かせ、プレーヤーの意に反することをしたり、言ったりすることがない。そしてプレーヤーが、その自分の分身を思い通りに動かすことにより、その世界がドンドン変化してゆく。コンピュータのインタラクティブ(双方向)性だからこそできる芸当なのだが、『プレーヤーの行動=世界の変化』という関係のなかでキャラクターを立ててゆくわけである。」
『ドラクエ』では、プレイヤーの行動によって街の人の話す言葉も変わっていったり、世界が様々に変化していきます。それらによって、一言も喋らずとも、キャラクターを立てていくことが可能なのです。

   

主人公について、周囲の人物に「人物評」をさせてみよう!

 主人公のキャラクターがうまく掴めない時は、周りの登場人物(敵、脇役、その他大勢も含めて様々な立場の登場人物)から見た主人公の人物像、人柄を語らせてみると、思いの外、主人公のキャラクター性を掴んでいくのに役に立ちます。他のキャラクターを通して主人公を捉えようとする」ことで、作者の中で主人公が「立って」いき、主人公という一人の実在する人間が現れていくからです。
 主人公キャラクターを設定するときは、主人公が周囲の人物からどう思われているのか、どう捉えられているのかと考えていきましょう。

      
    

参考:第8章 作品をつくろう!

■実践編vol.06 創作コラム:「独自性」があるということ

■実践編vol.07 「読者が主人公を好きになるシーン」からキャラクターを作るコツ

■実践編vol.08 「皮肉」のログラインから、シーンを発想していこう!

■実践編vol.09 「25の皮肉のパターン」と「皮肉のログラインPart2」

■実践編vol.10 ログラインは「主人公について書かれたもの」である!

■実践編vol.11 物語はどこから作る!? ①キャラクターの「職業と目的」が決まれば、ストーリーも設定も自動的に決まる!

■実践編vol.12 クライマックスの面白さを生み出す「22の問題解決方法のパターン」

■実践編vol.13 創作コラム:人は「偶然」に憧れ、それを味わいたいと思っている

■実践編vol.14 「主人公の感情の変遷」こそがストーリー構成のカギを握る!

■実践編vol.15 『シン・ゴジラ』と『涼宮ハルヒ』の作り方は全く同じ!?  魅力的なキャラクターは、「登場する前」に立っている!

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