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2019年2月14日 (木)

■実践編vol.16 上手い会話、対話を書く方法「セリフを省略して繋げる!」

J0016

 

 

 

「会話、対話」をうまく書くには?
 物語におけるセリフの上手さとは、個々のセリフの良さもさることながら、そのセリフのやり取り、会話、対話の面白さにあるといえます。
 正直、キャラクター同士の会話が面白ければ、ストーリーがなくてもそれだけで作品として成立してしまいます。実際に、そのような効果を狙ったであろう作品も存在します。
 対話を上手く書ければ、物語をつくるうえで大きな武器になるでしょう。
 しかし、この会話、対話を面白くするのは、非常に大変です。
 まず、面白い会話をさせるには、これまでの記事や著書で述べてきたとおり、「面白いキャラクター」「面白い関係性を持つ人物の組み合わせ」が不可欠になります。
 しかし、上記の2つの要素だけでは、会話が面白くなるとは限りません。
 上手い会話を書くには、大切なテクニックがあります。
 それは「テンポの良い会話を書く」ということです。

 

 今回は、この「テンポの良い会話の書き方」について、一緒に学んでいきたいと思います。

 

    

上手い会話は「テンポ」が良い!
 上手い会話の条件とは、「テンポ」がいいことです。
 三谷幸喜さんや宮藤官九郎さんなど、人物の会話の上手さに定評のある書き手の会話を聞く、読むと、例外なくテンポの良いセリフ回しが書かれています。ポン、ポン、ポンと、簡潔で気の利いたセリフがリズミカルに飛び出し、そのセリフ、会話のやり取りを聞いているだけで、何だか楽しくなってきます。何気ない日常会話から、極限状況でのやり取りまで、作品の隅々に至るまで、このようなテンポの良い会話が書かれています。

 

 これらのことから、いい会話を書くには「テンポ」が重要だということがわかりましたが、ではこの「テンポ」とは、何なのでしょうか? 具体的にどうすれば、テンポの良い会話を書くことができるのでしょうか?

 

   

テンポとは「省略」である!
 セリフのテンポというと、「セリフをしゃべる早さ」のことであると勘違いされることがあります。
 確かに演劇や映画、TVドラマなどでは、セリフを読むスピードの緩急というのは、とても重要な要素です。
 しかし、早口でしゃべらせればテンポが良くなるのかというと、そうではありません。とくに、セリフを「読ませる」マンガや小説などの媒体では、そもそも登場人物のセリフのスピードを決めるのは読み手自身ですから、読み手が遅く読めば、当然セリフのスピードも遅くなっていきます。
 では、セリフのテンポとは、何でしょうか?
 それは、「セリフの省略具合」です。
 つまり、良いテンポの会話とは、「セリフがちょうどよく省略された会話」のことなのです。
 セリフというものは、省略することでテンポが良くなり、面白さや魅力がアップします。
 じつはこれは、映像作品の演出と全く同じ原理です。
 まずは、そのメカニズムを説明したいと思います。

 

 映像作品をつくるうえで必須のテクニック「段取り抜き」というものがあります。
 拙著『シーン書き込み式物語発想ノート』の中でも述べましたが、「段取り抜き」とは、ストーリーを進展させる際に、余計な段取り(行動や描写、説明)のシーン、カットを省いて(抜いて)、シーンやカットが「跳ぶ」ように繋げていくという方法です。
 たとえば、数人が山で遭難したというシーンがあったとして、そこで野営の準備をして焚き火をするという場面を描いていく場合、

 

 (1)まず、登場人物たちは野営ができるところまで歩いて行き、
 (2)そこで仲間内で相談した後に野営場所として決定し、
 (3)装備や荷物を置き、
 (4)燃やせそうな薪を集め、
 (5)ライターなどで火をおこし、
 (6)木をくべながらその火を大きくし、
 (7)火がある程度大きくなってきたところで、皆が火の回りに腰を下ろして暖まる。

 

……という段取りを経ていきます。
 しかし、このような段取りをすべて描写していては、時間がいくあっても足りないばかりか、テンポが悪くなり、お客さんが映像にかったるさを感じて観るのが苦痛になってしまいます。
 そこで、この想定される(1)~(6)までの一連の段取りを省略して、

 

 (まだ日がある時間帯で)
 「どうやら、迷ったみたいだな……」と、一言いわせた後、
   ↓
 (日が暮れて暗くなっている中で)、燃える焚き火に、皆がもうあたってるカット。

 

……というようにカット省略してを繋いでいくのです。
 迷ったというセリフのあとに、全員が焚き火にあたっていれば、どんなに鈍い視聴者でも、ああ、焚き火をたく準備をして、火をおこして焚いた後のシーンなんだなということがわかります。誰でも、想定できる段取りだからです。だからこそ、この段取りを省略することができるのです。
 この段取り抜きは、現代の視聴者であれば、かなりのシーン、カットを省略してもストーリーを破綻なく繋げて観てもらえます。また、分かり切った段取りが省略されることで映像のテンポが上がり、さらにシーンを「跳ぶ」一種の爽快感のような気持ちよさを味わうことができるのです。

 

 この段取り抜きとまったく同じことが、セリフにもいえるのです。
 つまり、分かり切ったセリフのやり取り、応答、返答などをことごとく省略し、セリフを「跳ばして繋げていく」のです。

 

 それでは、会話におけるセリフの省略の仕方の具体的な方法を、例を見ながら解説していきたいと思います。

 

      

セリフを省略する方法「応答させない、返答させない」
 セリフを省略するうえでもっとも大事なことは、相手の投げかけたセリフに対して「応答、返答させない」ということです。
 つまり、「応答、返答のセリフを省略」して、会話を繋げていくということです。
 日本のキャラクターメソッドの基礎を築いた、『子連れ狼』などで有名なマンガ原作者の小池一夫氏は、このことについて、「受けるセリフ」を排除し、「受けないセリフ」を書けと述べています。
 「受けない」とは、相手のセリフに返答するセリフを省略するということです。
 では、どのように省略していくのか、次の作例をもとに説明します。

 

●具体例)省略されていない会話

 

   (突然、夫婦がいる部屋の電気が消える)
 夫「あれっ」
 妻「あっ、消えた、わねえ……」
 夫「そうだね、停電かな」
 妻「たぶんね。周りの家も消えてるみたい、信号も消えてるわ」
 夫「そうなんだ、困ったね。ろうそくは、どこだっけ?」
 妻「ろうそくは、そこの引き出しの3段目よ。でも、ろうそくがあってもライターがないわ」
 夫「うそ……、それじゃ火がつかないじゃん」
 妻「そうよね……、どこかにマッチはないかしら」
 夫「マッチなんてないよ……。あ、そういえば、こないだ会社の先輩と食事に行ったときに、もらったのがあったんだった」
 妻「えっ、先輩と食事? 今どきマッチくれるお店なんて、珍しくない? ……まさか変なお店じゃないでしょうね」
 夫「ちがうよ、そんなわけないだろ。ていうか、今はそんなこといってる場合じゃないだろう」
 妻「いいえ、うそ、あやしいわ。じゃあ、私の目、まっすぐ見られる?」
 夫「だから、暗くて見えないってば……」

 

……夫婦が停電に見舞われ、灯りを探すという場面での会話ですが、一見ふつうに読めるかもしれませんが、何だかまどろっこしいようなセリフのやり取りになっています。その原因は、互いに相手のいったセリフにいちいち返答しているからです。
 そこで、この会話のやり取りから、応答、返答のセリフを省略してみましょう。
 次のように、省略できます。

 

 夫「あれっ」
 妻「あっ、消えた、わねえ……
 夫「そうだね、停電かな
 妻「たぶんね。周りの家も消えてるみたい、信号消えてる
 夫「そうなんだ、困ったね。ろうそくは、どこだっけ?
 妻「ろうそくは、そこの引き出しの3段目よ。でも、ろうそくがあってもライターがない
 夫「うそ……、それじゃ火がつかないじゃん
 妻「そうよね……、どこかにマッチはないかしら
 夫「マッチなんてないよ……。あ、そういえば、こないだ会社の先輩と食事に行ったときに、もらったのがあったんだった
 妻「えっ、先輩と食事? 今どきマッチくれるお店なんて、珍しくない? ……まさか変なお店じゃないでしょうね」
 夫「ちがうよ、そんなわけないだろ。ていうか、今はそんなこといってる場合じゃないだろう
 妻「いいえ、うそ、あやしいわ。じゃあ、私の目、まっすぐ見られる?」
 夫「だから、暗くて見えないってば……」

 

 この省略した部分を取っ払って、セリフを整理してつなげると、次のようになります。

 

 夫「あれっ」
 妻「あっ」
 夫「停電」
 妻「信号消えてる」
 夫「ろうそくは?」
 妻「ライターがないの」
 夫「マッチは」
 妻「……あると思う?」
 夫「そうだ、先輩と食事に行ったときに、もらったのが……」
 妻「……変なお店じゃないでしょうね」
 夫「そ、そんなこといって……、」
 妻「あやしい。私の目、まっすぐ見られる?」
 夫「だから、見えないってば……」

 

 直接、応答、返答させずに、会話が跳ぶようにして繋げただけで、だいぶ読めるものになってきます。

 

ポイントは、相手のセリフの投げかけに対して、「応答、返答」をすべて省略し、返答後のセリフのみを発していくという点です。
 しかし、相手のことを無視しているのではなく、応答、返答しない形で受け答えしているのです。
 セリフのテンポを奪っているのは、相手のいったセリフに対する返答、応答なのです。この返答、応答をことごとく省略して、「(応答の後の)セリフの途中」から受け答えとして、セリフを跳んで会話につなげていくのです。
 これが、セリフのテンポをアップさせて、上手いセリフを書くもっとも基本的でありながら、確実な方法なのです。

 

 ですから、あなたが書いた会話が何だか上手くない、まどろっこしくて弾まない、理屈っぽくてくどいと思ったら、とりあえず応答、返答のセリフを取り除いてみましょう。

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